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(BL小説)風のゆくえには~R18・初体験にはまだ早い

2015年09月04日 18時12分33秒 | BL小説・風のゆくえには~ R18・読切


*長編『将来』4-24-3の慶視点になります。

--

 



 高校2年生のクリスマスイブ前日。
 一年以上に及ぶ片想いが実を結び、晴れて浩介と恋人(!)になったおれ。

 それから2ヶ月以上経つけれど、今までとそんなに変わっていない気がする……。

 大きく変わったことといえば、時々キスをするようになったこと。でもそのキスも、触れるだけの軽いキスばかり。唇よりも頬とか額とか頭のてっぺんとかの割合が高い。外国だったら普通に挨拶でするくらいのノリの、軽いキス。人目を忍んでコソッと。その度にきゅんとなる。

 それ以外は今までと同じように、一緒に登下校できるときはして、校内ではいつも一緒に行動して、休日は遊びに行って……今までと変わらない。

 でも、健全な高校生カップルなんてそんなもんか? とも思う。
 まわりをみていても、手を繋いで帰ったりするカップルはいるけれど(ちょっと羨ましい)、それ以上のことをしているとはとても思えない。
 今のままで充分すぎるほど幸せだし、だからまあ、これでいいのかな……と思っていたんだけど……


「聞いたか? 東野のやつ、こないだのバレンタインで彼女と……」
「マジで?! あれだろ? S女子大付属の……」

 クラスの男子14人でカラオケに来ているのだが、突然、暴露大会がはじまった。話題になっている東野自身はデートだそうで来ていない。

「バレンタインで、あたしをプレゼント! みたいな?」
「そうそう。今日、うち誰もいないから……、って誘われたらしいぞ」
「誘われてえー誰か誘ってくれー」

 お調子者の溝部がマイクを使って叫び、みんなでゲラゲラ笑っている中……

「ふーん……」
 おれの隣に座っている浩介がボソッと独り言のようにつぶやいた。

「いいな」
「………………え?」

 え? 今、「いいな」って言った?

「浩…………」
 浩介を見上げ、聞こうとしたところ、

「渋谷ー! お前はどうなんだ! どうせバレンタイン山のようにもらったんだろー!」
 溝部がマイクで話しかけてきた。

「うるせー。もらってねえよ」
「三年の先輩からも、他の学校の子からももらってたじゃねーかー!」
「…………」

 何で知ってるんだ。でも、最後までちゃんと見てろっての。

「あれは受け取ってねえよ。全部返した」
「はああ?!」

 正直に答えると、浩介をのぞく12人に一斉につめよられた。

「なんなんだよお前はっ」
「なんだその余裕はー?!」

 ゆさゆさと揺すぶられる。その横で「はいはいはい」と浩介がみんなの手を剥がしてまわる。

「僻まない僻まない。慶はそんなのもらう必要ないの」
「うるせー桜井。お前だって、バスケ部の女子からもらってただろっ」
「あれは義理だよー」

 へらへらと笑う浩介。そうだ、こいつバスケ部の女子からもらってたな……。

「義理でもいい! チョコならなんでもいい!!」
「彼女ほしー」
「やりてー」

 マイクを次々回して叫んでいく野郎ども。
 楽しそうに笑っている浩介。

 結局その後も「いいな」について追及することはできなかった。
 いいなって……いいなってことだよな……。


***


 翌朝、起きる寸前に夢をみた。
 浩介の腕の中にいるおれ。お互い何も着ていない。浩介の肌に直接触れているという感覚が気持ちいい。

「慶……大好き」
 耳元でささやかれる。大きくなったおれのものを浩介が優しく掴んでくれる。

 ああ……そんなことされたら、おれ………っ。


「!!!!!!」
 声にならない叫び声をあげて、飛び起きた。懐かしい感覚……

「…………マジか」
 夢精してしまった……。中学生かっつの。

 それもこれも、昨日浩介が「いいな」なんて変なことを言うからだ!!



 と、いうことで。

「今度の日曜、おれんち誰もいないから遊びに来い」

と、誘ってみた。カラオケにいった翌週の日曜日、ちょうど親は法事で夜まで帰ってこないし、妹の南は朝から友達のうちに遊びにいくと言っていたのだ。このタイミングでこんなチャンスが回ってこようとは、神様がおれ達に次のステップに進めと言っているのに違いない。

「う、うん………」
 肯きながらも真っ赤になった浩介。昨日の今日のこの誘いだ。言わなくても意味は分かるだろう。

 そういうわけで、この日曜日が来るまでの一週間はお互い妙に意識してしまって、「喧嘩でもしてるの?」と南に聞かれるくらいギクシャクしてしまった。

 そして、日曜の話題は故意に避け、なんとか迎えた運命の日曜日。


「お邪魔します……」
 緊張した様子でうちにきた浩介。家の中が妙にシーンとしている……。

 おれの部屋に通したはいいけれど、会話の糸口がつかめず、さらにシーン……としてしまう……。

「あの」
「慶」

 同時に口を開いてしまい、あわてて閉じる。

「なんだよ?」
「慶こそ」
「…………」
「…………」

 再びシーン………となる。

 顔を見合わせ、ぷっと吹き出してしまった。

「あーダメだなー」
「なんかおれ、緊張して手に汗かいてきたよ」
「マジか」

 思わず、何も考えず、その手を握ってしまい、

「!」

 再び飛び離れたおれ達……。

 だめだこりゃ。

「………困ったなあ」
「困るなよ」
「困るよ」
「…………」

 再び訪れる沈黙………

「お前さ……」
「うん」

 とりあえず、ローテーブルを挟んで斜め横、の位置から、真隣に移動させる。ベッドを背もたれにして二人で並んで座る。
 浩介が、そっと手を差し出してきた。絡めて繋ぐ。ホントだ。浩介、汗かいてる。……っておれもか。

「お前……男同士ってどうやるか……知ってる?」
「………あ、うん。一応……。それで……」

 浩介が繋いでいない方の手でカバンの中を探り、紙袋に入った何かを出してきた。

「何?」
「あの……普通にすると痛いでしょ? それで滑りをよくする、みたいな……薬?」
「…………」

 南だな、と思う。どうせ南が、例の変な本を一緒に作ってる友達と用意して、浩介に渡したに違いない。南と浩介って結構仲が良い……というか、南が浩介を利用しているというかなんというか……。
 まあ、いい。この際そんなことは後回しだ。

「じゃあ……やってみるか」
「うん……」

 そういいつつも、また止まってしまったおれ達。何を、どうすればいいんだ?

「とりあえず……服脱ぐか?」
「あ、うん」

 今までも海に一緒にいったり、写真部の合宿で一緒に銭湯に入ったりして、お互いの裸は見たことあるのに、自分の部屋という日常空間のせいか、これからはじまる初めてのことのせいか、上半身を晒すことですら恥ずかしくて仕方がない。……あ、そうか。

「明るいのもいけないんだな。カーテン閉めるな」

 シャツのボタンを半分開けたところで気が付いた。真昼間からカーテン閉めるのもいかがなものかとも思うけれど、部屋を少しでも暗くするためにはしょうがない。ザーッと閉めて、少し薄暗くなったところで、

「!」
「……慶」

 後ろから、ぎゅうっと抱きしめられた。ポツポツ……とシャツのボタンの続きが開けられていく。

「慶……大好き」
「………っ」

 夢と同じささやき。でも夢よりももっと甘くて愛おしい響き。

「こう……っ」
 振り返ると同時に、唇を重ねられた。いつもみたいな軽いキスじゃなくて、重ねて、吸い込まれて……

「んんん」
 キスを続けながらお互いの服を脱がしていく。同時にズボンを下着ごと引き下ろした段階で、

「あ」
「あ」

 顔を見合わせて笑ってしまった。
 ぴょんっと跳ね上がってるお互いのもの。こんにちは、とでもいいたげにそそりたっている。

「もう、この状態?」
「しょうがねえなあ……って、浩……っ」

 優しく掴まれて、震えてしまう。これも夢と一緒だ。
 でも、夢と違うのは、まだ終わらないってこと……

「浩介……」
「んっ」

 浩介のものを握ると、浩介がビクビクっと震えた。熱い……こんなに熱いんだ。

「慶……」
「ん……」

 立ったまま、お互いのものを扱き続ける。
 ああ……気持ちいい……。人にされるのってこんなに気持ちいいのか。いや……浩介だから気持ちいいんだな。
 浩介のものがおれの手の中でさらに固くなっていくことも、今までしたことのない、舌を絡めるキスも、さらにまた興奮状態を誘う。

「このままじゃ……いっちまう……」
「ん……」
「どう……する? このまま、いくか……?」
「あ……そうか」

 ふうっと大きくため息をついて、浩介が手をとめた。

「あまりにも気持ち良くて忘れてた」
「あーうん。別にこのままでもいいんだけどな」

 無理に痛そうなことをすることもあるまい。とは思う。でも……

「でも、おれ、慶と一つになってみたい」
「………」

 考えを読まれたかのようなセリフに、目を見開く。浩介の真剣な顔。

「じゃあ……するか」
「うん」

 紙袋から容器を出してみる。んーと?これを塗ればいいんだな?
 ぬるぬるとしたものを手に取り、浩介のものに塗ってみる。

「あ……っちょ……っあんまり触らないでっいっちゃうよっ」
 浩介の腰が引けてる。相当気持ちいいらしい。確かにこのぬるぬるは気持ちよさそうだな……。

「じゃ、入れてみろ」
「え!?おれが先!?」

 ぎょっとした浩介を置いて、ベッドに寝っころがる。そして両手を差し出した。

「ほら、こいよ」
「慶………」

 浩介がごくりと唾を飲んだのが分かった。

「じゃあ………」

 両太股をぐっと押され、足を押し広げさせられる。すべて露になる。かなり恥ずかしい体勢………。

「慶……色っぽい……」
「…………っ」

 見下ろしてくる浩介の目………ドキドキする。

「じゃ………入れるね」
「ん」

 覚悟を決めて、浩介のものを待つ。穴の入り口に温かいものがあてがわれ、びくりとなる。これが中に………………

「!!」

 うっと声を上げそうになるのをあわてておさえる。い………痛いっ。まだ先が少し入っただけなのに……っ。

「……慶」
「…………あ」

 すぐにすっと痛みがなくなった……。浩介が心配そうにこちらを見下ろしている。

「大丈夫?」
「大丈夫……ってなにやめてんだよ」
「だって……」

 しまったな……。正直に痛そうな顔をしてしまった。
 平気な顔を取り繕って、浩介をあごで促す。

「もう一回やれ」
「でも」
「いいから。さっさとしろよ。時間ねえんだから」
「え」

 自分で言ってから、あ、と気がつく。そうだ。なんとなく気もそぞろになっているのは、家族が急に帰ってくるんじゃないかという心配もあるからかもしれない。

「時間ないの?」
「あー、ないっつーか、急に親とかの予定が変更になったりしたらって思ったりして……」
「そっか……」

 浩介は頷くと、ローテーブルに置いておいたジェルに手を伸ばした。

「浩介? …………っ」
 おもむろにジェルを塗られ、ぶるっと震えてしまう。予想以上に気持ちいい……っ。

「時間ないなら、余計に。今度は慶がしてみてよ」
「んー……」

 考えてしまう。
 もしかしたら、これから時間をかけてゆっくりやれば、痛くなくできるかもしれない。でも時間に制限がある中で、そこまでできるだろうか……。そもそも…………

「なんか、そういうの……違うんだよなあ」
「え?」

 起き上がり、浩介の頬にキスをする。

「慶?」
 ビックリした表情の浩介の鼻の頭にもおでこにもキスをする。最後に唇をぺろりと舐める。

「慶」
 浩介がクスクス笑いながら、同じように頬に鼻におでこにキスを返してくれる。そして唇を重ねながらぎゅうっと抱きしめてくれる。素肌の触れ合いがとてつもなく気持ちいい。そのままベッドに横になる。

「うん……こういうのだよな」
「何? 何の話?」

 言いながらも、浩介が耳や首にもキスをしてくれる。

「なんつーか……想像してた初体験?っていうのか? 痛いとか時間がねえとかそういうんじゃなくて、こんな風に……、あ」

 言っているそばから優しく掴まれた。ジェルのぬるぬるが残っているので余計に気持ちがいい。寝そべったまま、おでこをコツンと合わせる。

「こんな風に?」
「ん」

 おれも浩介のものに手を伸ばす。先走りをくるくると伸ばし先に広げると、浩介が小さくうめいた。

「慶……」
 切なげな瞳でおれをまっすぐに見る浩介……。

「慶、大好き」
「ん」
「大好きだよ」
「ん」

 再び唇を合わせる。合わせながらも、手は扱き続ける。
 亀頭をくるっくるっと回しながら扱いてくれる浩介。たぶんいつもこうやってやってるんだろうな、と思うと、なんだか余計にゾクゾクする。
 おれもいつも自分がしていて一番気持ちのいいことを浩介にしてみる。浩介が「んんんっ」と声をあげた。

「慶……いっちゃいそう……」
「ん……おれも……」

 喋る余裕もない。空いているほうの手で、枕に引いていたタオルケットを取って、扱いている下に置く。

「この上、出し……」
「んん」

 舌を絡ませ口づける……一段と固く大きくなる浩介。次の瞬間、

「ん……、あっ」
 声と共に浩介のものが吐き出された。

 浩介のいった瞬間の顔、見れた。……すげえ、かわいい……。

 そんな感動に浸る前に、浩介の手が容赦ない速さで扱いてくる。

「……浩っ」
 速すぎだろ……っ。追い立てられるように快感が体の中で膨れ上がってくる。

「んんんっ」
 そのまま、あっという間に頂点に連れていかれてしまった。タオルの上に乳白色のものが仲良く並んでいる……。

「あー……」
 タオルを上によけて、ぐてっと浩介の肩に額を押しつけると、

「慶……かわいい」
 ぎゅうううっと抱きしめられた。何も着ていない素肌同士の触れ合いが心地いい……。

「んー……これだよな」
 さっきから思っていたことを口にしてみる。

「なんつーか……セックスってのはこんな風にふわふわ気持ちいいもんだと思ってたんだよなあ」
「ふわふわ?」
「うん……。まあ、もしかしたら、ちゃんとやったらもっととんでもなく気持ちいいのかもしんねえけど」
「うん……」

 再びおでこを合わせる。

 ずっと片思いしてた浩介が好きだといってくれる。抱きしめられる。抱きしめる。キスする。キスされる。それで今はもう充分。だから……

「ちょっと……まだ早いのかもしんねえな、とか思ってな」
「うん………」
「でも、いつかは……」
「うん」

 それがいつになるのかは分からないけれど……


「じゃあ……着替えるか」
「あ、待って」
「ん?」

 もう一度、ぎゅううっと抱きしめられる。さわさわと背中や腹のあたりをなでられる。

「浩介?」
「今のうちに堪能させて。覚えておかないと」
「なんで?」
「覚えておいて、今晩からのオカズに」
「……………」

 真面目にいってんだか、冗談でいってんだか分からない……。

「まあ、でも、ずっとやらないってわけじゃ……」
「でももう受験生になるしね。するのは受験が終わってからだね」
「あー……そうだな」

 そうだった。もう受験生になるんだった…。
 浩介が再びおでこをこつんとさせて言う。

「受験終わったら、どこか泊まりで旅行に行こうよ」
「おお、いいな」
「そしたらそこでちゃんと最後までしよ?」
「…………ん」

 そうだな。おれたち、初体験にはまだ早かった。

「それまでは健全な交際を」
「健全ってなんだよ?」
「キスまではOK」
「ん」

 触れるだけのキス。それだけでも充分気持ちいい。

「受験が終わるまでは妄想にとどめておくね」
「妄想って……」
「慶とあんなことやこんなことして……って」
「あんなことやこんなこと?」
「あんなことやこんなこと」

 真面目に言ってるんだか、冗談で言ってるんだか……。真面目にいってる気がする……。

「お前……実はムッツリだな」
「バレちゃった?」

 浩介がクスクス笑いながら、再び唇を合わせてくる。

 いつか、その日がくるまで、ゆっくりゆっくり愛を育てよう。



--------------------


長々と書いてしまいました。
最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございます!
初めてだから手探りすぎて、なかなか進まない二人……。

「神様がおれ達に次のステップに進めと言っているのに違いない」

なんて、現在の慶だったら言わなそうなセリフ。
でも、高校生の慶はそういうことよく言ってました。
片想い期間長かったしね……。まだ片想いの時の遠慮みたいなのが残ってますね。

------------

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(BL小説)風のゆくえには~ R18・初めてのF

2015年09月01日 17時25分14秒 | BL小説・風のゆくえには~ R18・読切

注:直接的性表現を含みます。


---

「今日はおれが口でする」
「………はい?」

 おれの19歳の誕生日の夜、ホテルに着くなり、慶に真面目な顔で宣言され、頭の中が?でいっぱいになった。

「何の話?」
「何の話って、ラブホテルでやること以外になんかすることあんのかよ?」
「………えーと」

 口でする? 口で………口で?

「えええ?!」
 驚きのあまり飛びのいてしまう。

「口でって、え、慶……」
「なんでそんな驚いてんだよ。お前だって何回かしてくれたことあるじゃねえかよ」
「いや………そうだけど………」

 何を突然……

「せっかく誕生日だしな。なんかおれにできることねえかなって思ってさ」
「慶………」

 う、嬉しい……けど、恐れ多いというかなんというか……。ホテルにくるのももう6回目なんだけど、全然慣れない。

 あらためて、慶の顔を見つめる。
 黒目がちな瞳。スッと通った鼻梁。透き通るような白皙……誰もが振り返る完璧に整った顔。この、小さめの形の良い口に、おれのものが???

「いやいやいやいや……無理でしょう」
「なんでだよっ」
「あ」

 しまった。慶がキッと怒った目を向けてきた。
 慶は負けず嫌いなのだ。無理とか出来ないとかそういう言葉をいうと、余計にムキになる傾向が……。

「あ、違う違う。無理っていうのは、そういう意味じゃなくて……」

 慌てて訂正したけれど遅かった。
 ムッとした顔をしたまま、慶がおれのベルトに手をかけてくる。

「無理かどうかはやってから言え」
「だから、そういう意味じゃ……っ」

 ザッとズボンを下着ごと下ろされ、おもむろに掴まれた。慶の細い指。頭に血がのぼってくる。

「慶……っ」
「立ったままだとやりにくいな。そこ座れ」
「……っ」

 扱かれたまま、ベッドに座らさせられる。ズボンを脱がされ、足を広げさせられると、おれの足の間に慶がちょこんと小さく正座で座りこんだ。

(か……かわいいっ)

 って言葉は、どうにか飲み込んだ。たぶん、今、それ言ったら怒られる…。でも、思わずにいられない。正座して見上げてくる慶。手に持っているのが醜悪なおれのものだというアンバランスさに余計にそそられる……。ほどよい強さで扱かれ続け、あっという間に本勃ち状態になってしまった。

 慶がにーっと笑った。

「もう、出てきてる」
「………んっ」

 先っぽを赤い舌でなめられ、全身にぞくぞくぞくっと震えがくる。
 こちらを上目遣いでみてくる慶……。こんなきれいな人がおれのために……?
 おれなんかのために、おれのものを、こんなきれいな唇が………
 ………どうしよう。

「慶」
「あ?」

 まさに、咥えようとしてくれているところを呼び止めると、慶が首を傾げた。

「なんだ?」
「やっぱり……やめようよ」
「なんで」
「……っ」

 亀頭にキスをされ、一瞬息ができなくなった。ああ、どうしよう……。

「慶、だから……」
「ほら見ろ、こんな先走り出てきてる。気持ちいいんだろ?」
「そうだけど、でも……」

 抑えがきかなくなる。こんなことをしてもらったら、また、おれの中の黒い黒い感情が噴出されてしまう。

 慶を、めちゃくちゃにしたい、という黒い欲求が……。

 ………なんてことは言えない。絶対に知られたくない。

「まあ、いいから、やらせろ」
「………っ」

 おれの内心ほったらかしで、慶がおもむろにおれのものを咥えこんだ。

「け……慶っ」

 その映像だけでも、もうどうにかなってしまいそうなのに、慶の唇が亀頭だけを吸い込んで、舌で出てくる穴を強く舐めてくるので、もう……

 慶の中に入れると時とはまた違う、快感。器用に動いている舌がいやらしい………

「慶……なんかやらしい……っ」
「ああ?」

 口から離して、ちょっと笑った慶。かわいすぎる……

「お前こないだ同じことしてたぞ」
「え……んんんっ」

 裏の筋のあたりをツーッと舐められる。その刺激も気持ち良いんだけど、慶の鼻の頭にトンっトンっと亀頭がぶつかることで、余計に感じでしまう……っ。

「慶……っ」
「ん」

 小さな口いっぱいにおれのものが含まれる……。歯を微妙に立てられながら、出したり入れたりされ……。
 慶、うますぎだろ。初めてとは思えない……っ。

「なんで……っ」

 思わず一瞬よぎった嫌な気持ちを吐き出してしまう。

「まさか、初めてじゃないの? こんな……っ」
「アホか」

 ぷっと吹き出した慶。

「初めてに決まってんだろ。いつ誰とやんだよ」
「だって、うますぎる……っ」
「ばーか」

 再び咥えてくれる慶。舌が艶めかしく動いている。

「慶……慶」
「ん」

 上目遣いの目が笑ってる。ああ、慶………愛おしい慶。

 それなのに、おれは頭がおかしい。

 慶、わからないでしょう? おれが今、何を考えてるのか。

「慶……」

 その綺麗な顔が苦痛でゆがむくらいに、喉の奥までつっこみたい。
 その柔らかい髪を掴んで、咥えたままの唇をおれのものの付け根まで押しつけたい。
 思いきりその可愛い口を突き続け、そして泣きそうな慶の顔に……

「浩介?」
「!」

 慶の涼やかな声に我に返る。

「変な顔してる。どうかしたのか?」
「………」

 動悸が激しくなりすぎて倒れそうだ。
 絶対に、こんな心の中、読まれたくない。

「浩介?」
「うん……」

 すうっと頭の中が冷めてくる。ごまかさないと……

「どうしたって、こんなことしてもらって、どうにもならないわけないでしょ。気持ち良すぎだよ。どっかで練習したのかって疑いたくなるくらい」
「なんだそれ」

 くすくすと慶が笑う。
 その笑顔を見ながら、一度引いた感情がよみがってくる。

 今日は予備校の目の前まで迎えにいったのだが、そこで慶が同じ予備校の奴らと一緒にいるところを目撃してしまったのだ。……慶、楽しそうだった。同じ医学部を目指す仲間たち。仲も良くなるのだろう……。

 高校ではずっと一緒にいたし、慶の友達とも知り合いではあったから、どんな奴だか分かっていて安心だった。でも、これからはそういうわけにはいかない。分かっていても、嫉妬の心は沸騰し続けている……。

 おれの黒々とした感情など、全然知るはずもない慶。
 いきなり、嬉しそうにおれの腿をパチパチとたたいてきた。

「そうかそうか。そんなに上手いか。だから無理じゃなかっただろ」
「……慶」

 ぷっと今度はこちらが吹き出してしまった。

 得意そうな慶。かわいい。

「………」
 やっぱり慶だ。さっきまでの黒い感情が浄化されていく。やっぱりおれを救ってくれるのは慶だけだ。

 慶はヒヒヒと変な笑い方をすると、萎えかけたおれのものをぐいっとつかんだ。

「んじゃ、続きをしてやろう」
「んん……っ」

 再び咥えられ、のけぞってしまう。慶、やっぱり上手すぎる。きっとこの人は何をやらせても器用にこなすんだろうな。

「慶、慶」
「んあ?」

 咥えたままこちらを見上げる慶。ああ、かわいすぎる……

「これも気持ちいいんだけど……」
「んん?」
「でも、普通にもやりたいっ」
「……そうか」

 ふむ、と慶は肯くと、

「じゃあ……」
「!!!」

 うわわわわっとバタバタ手を動かしてしまった。慶がどうやったのか、たくさんの唾液でおれのものを包んだのだ。
 何だこれ……っ。また更に気持ち良すぎるっ。

「んじゃ、これで」
 おれのものから離した形の良い口から糸が引いている……。色っぽい……。

「ほら、やるぞ?」
 姿の色っぽさとは真逆に、健康的な口調で言うと、慶はぽいぽいぽいっとあっという間に着ているものを脱ぎすてた。そして、身軽にベットの上に飛び乗り、コロンと横になる。惜しげもなく晒されるギリシャ彫刻のように整った体……。

「早くこいよ?」
「う……うん」

 おれも着ていたシャツを脱いでから、遠慮なく、その白い脚を押し開く。

「慶……」
「ん……」

 ゆっくりと押し入れる……。ああ……一つになっていく。
 誰も、こんなことできない。おれだけに許された冒涜。

「どっちが、いい?」

 おれに貫かれ、膝を胸のところまで上げられた、あられもない姿の慶が聞いてくる。

「さっきとどっちが気持ちいい?」
「どっちも」

 間髪入れず答える。

「気持ち良さの種類が違う。でも……」
「あ……っ」

 大きくなりかけた慶のものを優しく掴むと、慶が敏感に反応して声をあげた。そう。この声……。

「慶の声、聞きたかった……」
「んんん……っ、あ……っ」

 突き上げ、腰を振りはじめると、慶の声が喘ぎ声に変わった。切ない表情もたまらない……。

「慶、慶……」
「ん……あ……浩介……っ」

 慶の指が膝立ちしたおれの腿のあたりに食い込んでくる。この痛さも好き。しばらく痣になるんだけど、愛された証拠のようで見る度に嬉しくなる。

 慶がぎゅうっと締め付けてくるたび、快楽の波が押し寄せてくる。そもそも、さっきまでのフェラで限界がきていた。もう、もたない。

「慶、ごめん、もう……無理っ」
「ん……っ」

 慌てて引き抜くと、慶の細い指がぎゅっとおれを握りしめ、確実に頂点に連れていってくれる。

「あ……っ」
 頭が真っ白になる。吐き出されたおれの全てが慶の手の中にある。ふわりと優しく笑ってくれる慶……。

「慶………」
 脱力しそうになるところを何とか持ち直し、すぐさま慶に手を伸ばす。
 左手の中指と人差し指を、おれが今まで入れていたところに差し入れ掻き回す。そして右手でものを強めに扱くと、慶が身をよじった。

「あ……っ 浩……」
 快楽と苦痛の入り交じった慶の顔……。
 たまらなくなって、慶のものにしゃぶりつく。慶の味。

「わ、ばか」
 慶が慌てたようにおれを引き剥がそうと頭を押してきたが、構わず続ける。左手を出来る限り奥まで突くと、慶がビクビクっとなって両手を投げ出した。シーツを掴み、涙目でおれのことを見下ろしてくる。

(たまんないな……)

 かわいくて、愛おしくて、たまらない。慶のものがおれの口と右手の中で最大限にまで膨れあがってくる。慶が喘ぎ声の合い間に文句をいっている。

「浩……っバカお前っもうイクって」
「ん」
「このままだと口ん中……っ」
「ん」

 今まで口でしたことはあるけれど、口でいかせたことはない。
 破裂寸前の慶が身を引こうとするのを、容赦なく肘でおさえつける。

「浩……っ」
 右手で扱きながら、先の方は口でくわえ続ける。そして左手を掻き回しながら差し入れする。慶は言葉にならない喘ぎ声をあげ、身をのけぞらせると、

「……あああっ、わーっバカバカバカっ」
 最後は、盛大に文句を言いながら、勢いよく吐き出した。

「……っ」
 喉に直接、慶の精液が当たり、えずきそうになったところをゴクリと飲み込む。

「あ……っ」
 ビクビクっと慶が震える。勢いが無くなろうとしている慶のものを丁寧に舐めつくす。苦い……

 しつこく舐め続けて、ようやく口を離したところで、 
 
「お前ー」
 パタン、と両手を投げ出し、天井を見上げた慶……

「んんん?」
 その横に寝そべり、慶の頭の下に腕を入れ、抱き寄せると、慶がきゅきゅきゅっとおれの胸に額を押しつけた。

「何飲んでんだよーAVじゃあるまいし、恥ずかしいだろー」

 慶、本当に恥ずかしいらしく、顔が赤くなっている。
 あまりにもかわいいので、からかいたくなってしまい、真面目な顔をして慶に言ってみる。

「誕生日プレゼントかな? と思って」

 いうと、慶が首をかしげた。

「は? 何が?」
「だから、慶のが」
「は?」
「ごちそうさまでした! みたいな?」
「…………」
「…………」

 しばらくの沈黙のあと……

「あほかっ」
「痛っ」

 おもいっきり頭突きされた……。

「慶ー痛いよー」
「あほなこと言うからだっ」

 ぎゅううううっと腰に腕を回され、きつくきつく締め付けられる。
 ああ……幸せだ。

「あ、そうだ。髪の毛洗ってやる」
「え?」

 突然の申し出にキョトンと聞きかえすと、慶は腰に手を回したままこちらを見上げ、にやっと笑った。

「さっき、お前の頭にお前の出たもんベットリつけちまったからな」
「え?!」

 そ、そういえば……。記憶を甦らせ、うわっと思う。あの時、おれを剥がそうとして慶がおれの頭を押して……

「か、確認したくない……」
「だから洗ってやるって。ほら行くぞ?」

 慶がグイッとおれを引っ張りあげて、楽しそうに笑ってくれる。幸せすぎて苦しい。

「……ありがとうね、慶」
「何が?」
「初めて口でしてもらっちゃった」
「…………」

 慶、ぶわーっと真っ赤になった。

「うるせえっ。そういうことイチイチいうなっ恥ずかしいっ行くぞっ」
 
 慶はいつでも引っ張りあげてくれる。
 黒い闇に沈み込んだおれを明るい光で強引に引きずり出してくれる。
 慶がいてくれれば、おれは大丈夫……。

 大好きな慶の手をぎゅっと握りしめ、心の中で呪文のように繰り返す。

 慶がいてくれれば大丈夫。

 

----------------


以上でした。
このような拙い小説を最後までお読みくださりありがとうございました。

本当は、病んでる浩介が慶の顔にぶちまけてしまった話を書こうと思っていたのですが、その前に、初めて慶がフェラしたときの話を書こうかな~と思いまして。
時系列的には、「R18・本格開発&受攻決定」のあとのお話になります。

しかし……元々慶がフェラした話を書こうと思ったのに、最終的には浩介が飲み干してるってのはどういうことでしょう^^;

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