前田晃・・・総合格闘技黎明期に活躍したプロレスラーのマエダアキラではない。プロレスラーの方は日明と書いてアキラ。
前田晃は、前田真三の息子。親子共に写真家。
前田真三、晃親子の写真を展示したギャラリー「拓真館」が美瑛にある。
なぜか今まで素通りしていたのだが、今回は行ってみることにした。なぜなら、ダッチ佐藤オススメのソフトクリーム屋が、拓真館の斜め前にあったから。
やはりね、当たり前のことなんだけどね、すごい人の写真ってのはすごい。時に凄まじい。
拓真館の展示方式は、二対一組。テーマに沿って、親子の写真を一枚ずつ並べて展示してある。左側に父親真三の写真。右側に息子晃の写真。そして、その下に息子晃による丁寧な解説が書かれている。
息子晃は、子供の頃から真三に連れられ、写真撮影のお供をしていた。大人になってからは助手として、父親の撮影に同行していた。つまり、父親の写真の多くを知っている息子なのである。
真三は、息子に写真の手解きをすることは一切無かったそうだ。おれの背中を見て何かを学べ、ってやつだ。
写真はいい。当たり前のことだが、いい。素晴らしい。ため息が出るほどいい。何気ない風景も、有り難い風景も、とにかくスペシャルで良い。
写真はいいのだが、この拓真館の素晴らしさは、前に述べたように、親子の写真が並べてあるところがいいのだ。そこに晃の解説が書いてあるところがいいのだ。
親子は親子であり、友人であり、写真家としては師匠と弟子であり、そしてライバルである。その二人の作品が同じテーマで並べてあるのだ。
この二人の関係が素晴らしい。父親の選んだ風景を、撮った写真を、なぞりながらも自分の視点と感性で撮る息子。そこには尊敬があり、嫉妬があり、感服があり、挑戦がある。
なんだか、とても仲が良い写真が二枚ずつ・・・なのである。
「塔のある丘」という写真がある。真三の作品だ。
真三は塔のある丘の風景を数多く撮りながら、「いつかこんな風景を撮りたい」と息子晃に話していたという。その話を聞きながら、息子晃は「親父、そんなのは絶対に無理だよ」と答えていたという。
ある日、真三は、雪の上に被る雲、雲からひょっこりと顔を出した塔の写真を撮って来る。現像が仕上がった写真を息子晃に見せながら、親父は何も言わず「ニヤリ」と笑った。
息子が絶対に無理だと言った写真を、親父が撮ってきた。という話。
そんな素敵な親子写真家のギャラリー拓真館が美瑛にある。
行って良かったなぁ。