学園市場のお兄さんが言う。
「次にこっちの方へ来るときは、ここの敷地にテントを張っていいですよ。水もあるし、トイレも使っていいし。ぜひ、ぜひ!」
あははは。ありがたいことだ。
でもきっと、本当にテントを張ったら、お兄さんではないお店の人に通報されて、パトカーが三台くらいやって来たりするんだろうなぁ。
お兄さんは、ひょんなことから農業実験学校の先生になったという。
先生になる前は野菜などの小売りの仕事を20年ばかりやっていたとか。
最近の僕は農業の話も少しは出来るので、農業話で盛り上がった。
スーパーで売っている虫食いのない綺麗な野菜を食べ続けた場合に起こり得る悲劇の話、とかね。
農家は自分の家で食べる用の野菜と、スーパーに出荷する野菜を別々に作っている話、とかね。
原因不明の病に倒れた知り合いの奥さんが、すべての食べ物をオーガニックや無添加食品に変えたら、医者も匙を投げた病気が治った話、とかね。
アレルギーやうつ病や何やら、現代病と呼ばれる病の遠因は、安全宣言のもとに使われる化学肥料と農薬なのではないかという話、とかね。
お兄さんは、僕のバイクを眺めながら、「乗りたいなぁ」とつぶやいていた。
もしかしたら、また逢えるかもしれないな。
その時、お兄さんはバイクに乗っているだろうか?
乗っていても乗っていなくても構いはしないが、乗っていたら、嬉しいなぁ。
「さよなら、また来ます!」
と告げて僕は走り出す。
バイクっていいなぁと、僕は想う。
今日だけで、たくさんの人に声をかけられた。
道の駅で、ガソリンスタンドで、ジェラート屋で、学園市場で。
人と出逢うために生きている。
旅ってきっと、そんなもんだ。
人生ってきっと、そんなもんだ。