エアーズロックへと向かう途中、偽エアーズロックなるものがある。
「あっ!エアーズロックだ!」と思う。荒野の中にどでかい小山みたいなのがそびえている。あれはエアーズロックに違いない。あれがエアーズロックに違いない。
でも、なんか、ちょっと、思っていたエアーズロックと形が違うなぁ。
「ふーん、実際に見ると違うもんだなぁ」と思いながらガイドブックを見ると、「それは偽エアーズロックです。おまえは必ず騙されるが、それは違う、偽物だ。トーシローめ。」と書いてある、
ガーン・・・騙されたぁ。
「すげぇなぁ、このガイドブック」とか、ブツブツ言いながら尚進む。
真夏のアリススプリングスである。真夏のエアーズロックである。
何がすごいって、ハエがすごい。ハエがすごいという言葉では足りない。地球上のハエの半分くらいはここにいるんじゃないか?ってくらいすごい。
前を歩く人のTシャツ、白いTシャツが黒いTシャツに見える。もしくは、白いTシャツなのにプリントが入っているように見える。全部ハエ。死ぬ。
そして、暑さのせいか知らないが、ここのハエは動きが遅い。背中に止まっている大量のハエを手のひらで叩こうものなら、きっと、全部潰せる。遅い。手のひらの形にハエが潰れる。そんなのは嫌だから、そんなのは嫌だしキリがないから、誰もそんなことはしない。
みんなアレを被る。アレってのは、アレだ。帽子をかぶって、さらにネットになってるやつを被る。
僕も被った。被りたくはなかったが、遅いハエが顔に止まって、目とか耳とか鼻とか、穴という穴に入ろうとしてくる。気持ち悪さマックスなのである。だから被った。帽子を被らないでネットだけ被ったら、パンストを被った人みたいになった。仕方がないから帽子も買った。
ネットを被れば、顔にハエは止まらない。楽々楽勝である。だがしかし、顔に被せたネットには止まる。無数に止まる。直に止まられるよりは一億倍マシだが、全てがハエ越しの風景。あぁ、これがアウトバック。これこそがアウトバック。
初めてエアーズロックを目撃した時のことが忘れられない。今でも鮮明に覚えている。
もしかしたら、僕が持つ価値観の基準は、その瞬間に生まれたのかもしれない・・・とさえ思える。
つまり、僕の「世界」はその時に始まったといっても過言ではない。
という話に、なかなかたどり着かない。
つづく。
写真は、我が家のカエデちゃん。黄色から赤に変わりつつある。葉っぱの先が赤くなってきているよ。