蟻塚を蹴り倒した仲間がいて、少し嬉しかったりする。荒野の中の狂気は、きっと誰にでもある。
コンクリートジャングルの中の狂気も誰にでもある。人間砂漠の中の狂気も・・・ね。
生のサソリを見たことがある。生のというのは野生のという意味だが、野生のサソリとはあまり言わない。つまり、普通に普通の生活の中でサソリを見たということ。生活の中に、サソリ・・・いる?スコーピオン、いる?
ノーザンテリトリーで野宿をしていた時のことである。
普段は野宿はしない。二日にいっぺんくらいしかしない。普段は、キャラバンパークというキャンプ場みたいなところにテントを張って泊まる。300円くらいで泊まれる。シャワーも付いてる。
不思議なもので、長く旅をしていると、その300円が惜しくなってくる。たった300円なのに。
その夜は道端で野宿をした。ふと足元を見ると、サソリがいたのである。驚いた。初めて見た、サソリ。
このサソリが、だいぶ弱っていた。僕が見つけた時点でだいぶ弱っていた。弱っているサソリなど怖くない。全然。
そのサソリがアリンコに襲われているのである。サソリ対アリンコ。時を忘れて、対決の行方を見守るのである。
サソリ一匹対、アリンコ1億匹。アリンコの絶対優勢である。
たぶん、僕が思うに、サソリ一匹対人間だったら、もしかしたらサソリにも分がある。なぜなら、サソリの尻尾には毒針が付いている。シャシャーっと動いて毒針でプスっと刺せば、人間はコロリンと死ぬのだろう、きっと。サソリの勝ちである。
だがしかし、今回の相手はアリンコなのである。無理だ、無理だよ、サソリくん、アリンコは刺せないよ。標的が小さすぎる。そして1億匹。
アリンコの勝ちである。
つまり、僕が見た初めての生サソリは、結構弱かった。アリンコに負けた。
ちなみに、オーストラリアには人食いアリンコってのがいて、身体の三分の二を食べられた姿で見つかった人がいるらしい。とか、言ってる人がいたよ。ホントかどうかは、僕は知らない。
サソリや人食いアリンコに侵入されないように、テントのジッパーを念入りに締めて、眠りにつくのである。
つづく。
写真は、畑でキャンプファイアー。いや、ただ廃材を燃やしているだけ。