ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

ビッグな話題

2011-02-16 14:50:41 | Weblog
使用頻度の高い調味料・・・砂糖。用途・・・カフェオレ、ロイヤルミルクティ、パンケーキ、煮物、天つゆ、その他もろもろ。

砂糖が切れたらどうしたらいい?

1.買いに行く。
2.買いに行く。
3.買いに行く。

一番近いスーパーまで往復一時間半かかるとしたらどうする?

1.あきらめる。
2.我慢する。
3.三日間、考える。


キャンプ五日目にして砂糖が切れた。荷物の容量&重量の都合上、調味料は最小限しか持って来ていない。いつだって最初になくなるのは砂糖だ。「あとでスーパーに買いに行こう」と思ったのだが、スーパーへは徒歩で往復一時間半。砂糖の他にあれもこれも必要ならば、行かないわけにもいかないが、砂糖のためだけに一時間半はちょっと考えてしまうだろ?得意のママチャリを借りて行くって方法もあるが、キャンプ場は小高い丘の上にある。行きはよいよい帰りはこわい。帰り道は強烈な坂道をチャリを押すことになる。それがかなりのハードワーク。徒歩とチャリ・・・徒歩だなってくらいチャリはきつい。
そんなことを考えているうちに夜になる。明日でいいやという気持ちになる。黒糖を代用したりしてみるが、黒糖の個性の強さったらない。まず間違いなく黒糖が勝つ。勝ち過ぎる。黒糖の味しかしなくなる。そしてまた一日が過ぎていく。
今日こそはと思うのだが、別についでがある訳でもなく、砂糖に対する情熱が煮えたぎるってこともなく、また一日がゆるやかに過ぎて行く。その間も、「あっ、砂糖ないんだった」と思うことは何度かある。三食自炊してると、砂糖って・・・意外に必要なんだよ。ねぇ、主婦のみなさん、ねぇ?

砂糖無しで過ごした三日間が仇となる日がやって来る。遂についでを見つけて出かけたスーパーマーケット。買い忘れないようにまずは砂糖を探す。
「砂糖、砂糖、砂糖はどこだ。あった。ほぇ!!!」
特売だと1キロ100円ほどで買えるはずの砂糖が、300円。・・・砂糖ってのは、オープンプライスだったのか。
実は、イリオモテの物価は高いのである。キャベツ一個350円。野菜は特に高いらしい。レギュラーガソリン1リットル160円。カッパえびせん150円。離島価格ってやつだ。
キャンプもあと三日で終わりって時に1キロの砂糖は必要ない。必要ない量の砂糖に300円・・・高いよ。迷った挙げ句、250グラム200円のスティックシュガーを購入。もう・・・得なんだか損なんだかわかんないことに。まぁ、残り三日間、甘いカフェオレが飲めると思えば、痛くない痛くない。

一番近くのスーパーまで、徒歩で一時間半。これを、不便だと想うか?想わないか?これが主題なのである。例えば、スローライフにおいて・・・完全なるスローな環境において、「便利さ」のプライオリティ・・・優先順位はどこらへんに位置するのか?
文明の発展は「便利さ」の追求から始まり、その追求が終わることは決してない。僕らの生活は、社会は、世界はどんどん便利になっていく。人がその便利さから享受するものは何か?便利になることで失うものは何か?「便利」と「不便」の境界線をどこに引いているのか?引くべきなのか?僕らの生活は、現代の社会は、世界は、そのバランスを失ってはいないのか?僕らは一体・・・何を求めているのか?
「砂糖」一つで随分とビッグな話になってしまいそうだ。

西表島、星が降り注ぐ夜・・・ブルーベリーの香りのする紅茶をストレートですすりながら、僕は富良野で過ごした超ウルトラスーパースローな日々を思い出さずにはいられないのであった。


優先順位

2011-02-16 05:14:10 | Weblog
イリオモテと言えばヤマネコ。そう、イリオモテヤマネコ。
誰かがこう言っていた。イリオモテヤマネコに出逢える確率は、砂漠に落とした針を見つけるのと同じくらい低い・・・ ・・・ ・・・そんなにか?
実際、ヤマネコを追っているカメラマン、十年山に入り続け、五回しか遭遇していないという。でも、年に数匹、交通事故で死んでいる。現存する個体数は百匹ほどだとか。

そんな西表島、やはりヤマネコで大ブレイクした訳で、ヤマネコを大切にしない訳はない。プライオリティはヤマネコにある。逆に、ヤマネコにしか無い。ヤマネコがいなくなってしまっては、ヤマネコTシャツが売れなくなってしまう。ヤマネコの被り物も、ヤマネコストラップも、ヤマネコマグカップでさえも、ちょっと胡散臭いものになってしまう。
道路標識には、学童注意だとか、おじぃとおばぁに注意とか、そう言ったものは無い。多分無い。あってもちょっとしか無い。ほぼ全てがヤマネコ関連のものだ。

道路に大きく「ネコ注意」の文字を見た時、おぉぉ、イリオモテだぜ。。。と感慨に耽ることは間違いないのだ。

優先順位はヤマネコにある。素敵な島だぜ、イリオモテ。

ヤシガニツアーズ

2011-02-16 04:00:02 | Weblog
タウン誌「八重山ナビ」にはこんな風に書いてある。
ヤシガニ・・・オオヤドカリの一種。絶滅危惧種。「食すると美味しい」。

食すると美味しい。絶滅危惧種なのに、食すると美味しい・・・だって。

そんなわけで、僕のライフワーク、ヤシガニ捕獲大作戦、ヤシガニツアーズ*食すると美味しい*の話。

ヤシガニツアーズ捕獲大作戦については、この二年間、密かに温めてきた一大行事。
猛毒を持つヤシガニ。毒の有り無しを見分ける方法も学んできた。ヤシガニが棲息する場所も、前回チェック済みだ。もう後は食するだけ。食して美味しい!と叫ぶだけ。

そんなわけで、行って来ましたヤシガニツアーズ2011冬IN イリオモテ。
「待ってろよ、ヤシガニちゃん!」

タコで苦い経験をした直後、またもや二年前の記憶を頼りに行く。

時間は真夜中過ぎ。
記憶では、団地らしき建物の駐車場から森を抜けて海岸に出る。運が良ければ海岸でに出る前、その森の木の上にヤシガニを見つけられる。

団地にはなんなくたどり着いた。駐車場を抜ける。真夜中過ぎ。辺りは真っ暗過ぎるほど真っ暗だ。ヘッドランプの明かりを頼りに行く。強力なパワーを持つヘッドランプ・・・しかし、ここでその力の限界を思い知ることになる。
僕のヘッドランプは二種類の明かりをを切り替えることが出来る。一点集中型と分散型。一点集中の方は50m先まで照らせる。分散型は45度くらいの角度を照らすことができる。どちらも優秀なはずだ。だが、しかし、真っ暗過ぎる闇の中では、その二つの機能が共に役に立たない。
もちろん、ヘッドランプ批判ではない。今回の用途に問題がある。

カエルの鳴き声しか聞こえない真っ暗な駐車場・・・の向こう側。泥と水たまり。その向こうに草むら。草むらの向こうに海。
草むらのどこかに海へ抜ける道があるはず。一生懸命に照らす。ピンポイントライトでは照らす範囲が狭過ぎてよく分からない。分散型では遠くを明るくは照らせない。道無き道を行くのは嫌だ。必ず道はあるはずだ。スーパー泥水たまりをじゃぶじゃぶと行くのも嫌だ。

タコ同様、場所も見つけられずに終わるのか?海にも出られずに終わるのか?と悪い予感。ヤシガニツアーズの危機である。

ん?ちょっと待てよ・・・と記憶を辿る。
この駐車場を団地沿いに歩いたような気が・・・。

そう、探す場所を間違えていた。何しろ二年だ。
泥の水たまりを避けながら、駐車場を横切って歩いていくと・・・有りました。暗闇に薄っすらと入り口のような草むらの裂け目。

森に入ります。キョロキョロと上も下も見回しながら進んでいきます。・・・かなり・・・怖いです。何が出て来てもおかしくないってな雰囲気が漂っています。でも、そんなものには負けません。だって、ヤシガニ探検隊。でも、かなり恐いです。真っ暗な闇の中を、ライトで照らしていること事態が恐いことなのです。だってここは、亜熱帯の湿った森。一人きり。
森の道にはヤシガニもカニも見つけられず、探検隊(一人)は海岸に出る。記憶を辿ると、海岸線を左に歩いて行くと岩場があるはず。そこにはかなりの確率でヤシガニが棲息しているはず。森沿いに海岸を歩いて行く。当たり前のことだけど、海岸も真っ暗です。実は、真っ暗な森よりも、真っ暗な海岸の方が恐いんです。なんか得体の知れないモノが海から飛び出して来るような・・・そんな気配。油断していると、森からも・・・何か・・・ゾクゾクしてくる。

すぐに岩場が出て来ると思っていたのに、いくら歩いても砂浜と森。不安がよぎる。あれ?おかしいな・・・記憶違いか?恐怖も手伝って、かなりの早足で歩いているのに、いくら進んでも砂浜が続く。先は、暗過ぎて見えない。でも、後戻りは出来ない。不安を抱えながら歩く事しばし。やっと現れた岩礁。・・・記憶は正しかった。
早速、ヤシガニがいそうな岩の窪みを物色。いない。岩場をピョンピョン飛び回って探す。いない。前回ヤシガニを発見した場所は、ことごとく不発。もう探す場所は無くなってしまった。不気味な静けさが漂う岩礁。・・・「さぁ、帰ろう!」
来た道をテクテクと戻る探検隊(一人)。海岸線を延々と歩き、森を抜け、泥水ゾーンをかいくぐり、人里へと戻る。ヤシガニツアーズ、呆気ない幕切れ。ヤシガニは待っていてはくれなかった。

たぶん、もう、誰かに食われちゃったんだなぁ。食すると美味しいんだもんな。そりゃぁ、食うよな。

ヤシガニ探検隊(一人)の心には、ヤシガニを見つけられなかった悔しさよりも、真夜中の森と海があんなに恐いものだとは・・・という想いの方が強かった。
「次こそは必ず」。そう強く胸に誓って、帰ったのであった。

2.12(土)大宮ストリート

2011-02-13 06:51:10 | Weblog
一週間空けただけなのに、ずいぶんと久しぶりのストリートに感じたのは、僕は沖縄で昼寝をしていたせいなんだろうか?うん、そうに違いない。僕の歯が驚く程白く見えるのは、僕の顔が黒いせいなのだろうか?うん、まったくその通りだ。スタジオのおじさんは、「それはハワイ焼けですか?」と言っていた。うける。
それにしても、今年一番の寒さだったのは間違いない。指先が痺れた。聴いている方が辛いってのは間違いないだろう。演奏していない時の方が遥かに寒いと、僕らが感じるのだから。来てくれた人、どうもありがとう。寒い中聴いてくれた人、どうもありがとう。
大丈夫、もうすぐ春が来るよ。

帰り道、道路が凍っていた。雨の後の夜中の冷え込み、道路はカチコチ。マコが電話をくれた。「道路が凍っているから気をつけて」。
川島の落合橋。車8台が絡む玉突き事故を目撃。一台は横転。一台は完全に横向き。後ろと前がボコボコの車。氷点下の寒さの中で現場検証する警察官と運転者たち。8台となると人数もすごい。関係者だけで、野次馬が集まっているような人だかりだった。恐い恐い。事故も恐いが寒さも恐い。

それにしても・・・寒過ぎるだろ?

1.サマンサのアイデンティティ
2.愛の唄
3.Under The Flag Of Jack
4.三日月の夜
5.ヨゾラヲコエテ
6.message

7.素敵な一日
8.星空のペンギン
9.星の軌跡
10.ペテルギウスの憂鬱
11.真夜中のプリンセス
12.愛よりも愛な恋の唄
13.Snow Song~雪みたいな君に捧げるラブソング~
14.Little Love Story~キルヒホッフの法則~
15.恋人
16.太陽の季節
17.百花繚乱
18.ワンツー ビーチ

19.queen of rumble fish

グッドモーニング、ブルースカイブルー

2011-02-12 13:47:39 | Weblog
夢の世界を抜け出して現実の世界へ。
いや、現実の世界を抜け出して夢の世界へ。

夢か現実かはいいとして・・・ここは、随分と寒い。

空に届くほどの伸びをして、大きく息を吸い込んだら・・・さぁ、約束の時間だ。

グッドモーニング、ブルースカイブルー。

ギターを抱えた唄歌い。雪の街へ現れる。だ。

ただいま。帰って来たよ。君が待つ場所へ。


トーシローの限界。

2011-02-11 16:28:00 | Weblog
見覚えのあるジャングルの入口。険しい道が待っている。ここまでの道程を考えると・・・ちょっと怖くなる。大丈夫なのか?道に迷ったら最後、夜になって・・・進めなくなって、戻れなくなって・・・カッパえびせんだけで明日まで・・・。

実際はそんなことにはならなかった。なりようがなかった。

草原を抜けて、僕が見たものは・・・
マングローブの林より、湿原と化した草原をより・・・ひどい状態のジャングル地帯。ジャングルの奥深くまで、水が覆っていたのだ。沼だ。これは沼だ。

折れかかった心を折るのは簡単だ。だって・・・もうすでに折れかかっているんだもん。

沼地と化したジャングルを、素足に近いビーチサンダルで奥深くまで進むほどバカじゃない。そして僕はアウトトレッカーではない。

クルリと踵を返した僕は、悩むこともなく、来た道を引き返した。

湿原を行き、底無し沼地帯を慎重に渡り、マングローブの林を踏んづけ作戦で乗り切り、魂のオアシス「干潟」へと戻ったのである。

呆気ない幕切れだった。

また、忘れモノを残してしまったな。

ピナイサーラは・・・近くて遠い。

次は何だ?

2011-02-11 13:47:42 | Weblog
困難を乗り切って、自分の背よりも高い草むらを掻き分けて、やっとのことで草原へと出た。

この草原は次に待つジャングルへのブリッジ。なんてことはない。テクテク歩くだけだ。・・・のはずだった。

泥沼といい、この草原といい・・・これは昨日降った雨のせいなのだろうか?それとも冬というこの季節のせいなのだろうか?

草原は、完全に湿原になっていた。

予定だと、ここで島ぞうりを脱ぎ、防水シューズに履き替えるはず。だが、それも叶わない。足首よりも深い水が、草原中を満たしているのだ。
島ぞうりで草むらは危ない。チクチクの葉は大量に茂っているし、虫だっているし、ハブだっているかもしれない。でも、足首よりも水があったら、防水シューズの意味がない。

てことで、島ぞうりのまま草原を進む。
幸いだったのは、ヘドロを引きずったままの右足を、草原を満たす水でキレイに出来たことである。キレイには出来ていない。ただ、ヘドロを落とせただけなんだけど。落とせないままで行くよりは百億倍マシだ。

草原改め湿原をズボズボと進む。若干心は折れ気味。それでも探検隊カッコ一人カッコトジは進む。
水が深い場所がある。どこが深いのか、草が邪魔して視認できない。一度片足を地球に吸い取られそうになっているのだから、それはビビりながら進む。

草原までもが、行く手を阻もうとするとは・・・これは計算外だ。

でも、もうすぐジャングルの入り口が見えるはずだ。

グッドモーニング、イリオモテ

2011-02-11 10:35:52 | Weblog
今僕はどこにいる?
南の果てにほど近い小さな島にいる。

今僕は何をしてる?
ハンモックに寝転んで空を見てる。

僕はどうしてこんな風に生きてるんだろう?

僕はどうしてこんな風になってしまったんだろう?

例えば僕は・・・僕が幸せでなくてもいいと想う。

夢を実感して生きることを、僕は旅の中で知った。
困難に打ち克つとか、逆境を跳ね除けるとか・・・そういった類いのものではなくて・・・
「今を夢」と想える素直さと潔さこそが、旅が僕に教えてくれた一番大切なことだ。

そして僕は今も・・・こんな風に生きてる。

永遠の宝物になるような・・・そんな時間を・・・
永遠に忘れ去ることのできない・・・そんな瞬間を・・・

ただただ胸に・・・刻み込みながらいきたい。

グッドモーニング、イリオモテ。

わがままで贅沢な願いなのかもしれない。
でもこれは・・・僕のたった一つの・・・ささやかな願いなんだ。

絶対に呼ぶなよ

2011-02-10 22:08:04 | Weblog
まずは聞きたい。底無し沼は存在するか?
もう一つ聞きたい。底無し沼が存在したとして、現実、その底無し沼にはまる確率はどれくらいあるか?

マングローブの林の終わりを告げるのは、少し開けた泥地帯。・・・やっと終わった悪臭地帯。ホッと一安心。
草原の入り口はどこだっけ?と記憶を辿る。パッと見ただけでは分からない。・・・そういえば、草むらを掻き分けて上ったような記憶が・・・。あそこだ!間違いない。

僕はその草原の入り口はだと思える場所を目指して進み始める。
例の巻貝はそれほどいなく、踏んづけ作戦が実践できない。
ビーチサンダルをペチャッペチャッと言わせながら、歩く。またもやくっついて歩きにくい。

例えば、ちょっと先の未来を知っている者や、そこに何が待ち構えているのかを知っている人が居たならば、僕が一歩ずつ歩みを進めてその場所に近づいて行くのを見て、ほくそ笑んだに違いない。

僕は確実に、真っ直ぐに、その場所に近づいていったのだから。

底無し沼は存在するか?・・・もうお分かりだろう。底無し沼は存在する。

僕がこの記事を書くに当たって、「ビーチサンダル」という文字を書きすぎなくらいに書いているのには訳がある。このビーチサンダルが重要なキーワードなのだ。ビーチサンダルからシューズに履き替えなかった事。これが、僕の命を救ったと言っても・・・決して過言ではない。

この続きは、いつか、僕の心が落ち着いた時に書く事にしよう。ここまで読んでくれてありがとう。
シングの「続く」と「今度ね」は、あったためしがないとご存知のみなさん、また今度ね!

と、ちょっと意地悪を言いたくなってしまうほど、ショッキングな出来事。だったかな?

じゃぁ、続きね。

右足を泥に着くと、右足が泥にくっつく。くっついた右足を泥から剥がそうと、左足に体重をかけて右足を引っ張る。逆もしかり。そうやって一歩ずつ進んで行く。すぐそばに見えているはずの草原の入り口が、やたらと遠くに感じる。それでも、早くこの地帯を抜けたい僕は出来る限りの急ぎ足で先へ進む。

くっついた左足を剥がそうと、右足に力をいれた瞬間。身体が沈んだ。「ウソだろぉ!!!」と叫ぶ時間も無かった。沈んでると気づいてからも、更にヌメヌメと沈んでいく。「恐怖で凍りつく」とは、こういう時に使う表現なんだろうな。
沈んでいく右足を止めようと、左足に力を入れようとする。が、しかし、力を入れ過ぎたら左足も沈む。この泥沼に両足がはまったら、自力で抜け出すのは不可能なように思える。バランスだ。奇跡のバランスが必要だ。恐怖に負けてバランスを崩せば、奴らの思うままだ。奴らって誰だ?
左足が沈まないくらいの力で、右足の沈降を止める。・・・止まった。今、まさに奇跡のバランス。焦ってはいけない。ゆっくりとねかなければならない。・・・抜けない。ビーチサンダルが引っかかって抜けない。力を入れ過ぎれば左足も沈んでしまう。でもビーチサンダルが引っかかって抜けない。

ここで選択肢が現れる。人生はいつだって、選択の連続だ。
ビーチサンダルを棄てて、右足を抜くか。ビーチサンダルもろとも、右足を抜くか。
奇跡のバランス状態で固まっている体。・・・僕の頭は考える。普通だったら、ビーチサンダルを棄てるよな・・・でも、これはただのビーチサンダルじゃない!島草履だ~!前回の沖縄旅の時、石垣島で買ったんだぁ~~!!!棄てる訳にはいかないんだぁ!!!なんのこっちゃ。

そんなこんなで、ビーチサンダルを救うことに決めた僕は、左足の足場を比較的沈まなそうな場所にずらした。そして、左足への力が底全体にかかるように努めた。爪先や踵に比重がかかると沈む。ビーチサンダルの特色・・・底が平。そして浮力。ビーチサンダルを救う為に、ビーチサンダルの特色が力を発揮する。これは愛の話だ。
僕とビーチサンダルの片っぽが協力して、もう片っぽのビーチサンダルを救い出す。あふれる愛が無ければ成せる業ではない。・・・ような気がする。

左足のビーチサンダルの力を頑なに信じて、命を投げ出すような気持ちで右足を引っ張りあげる。決して離さないよ・・・と右足の親指と人差し指で鼻緒を締め付けながら引っ張る。実際、本気以上の力をで引っ張った。

そして・・・見事に、左足が沈むことなく、僕の右足と右足が履いているビーチサンダルを救出。思わず、無線でヘリを呼びたくなったよ。涙の救出劇だ。

実際は、涙の救出劇ではなく、ヘドロの救出劇。
右足のビーチサンダルが連れてきたのは泥沼の底に堆積しているヘドロ。もちろん、僕の右足の膝までびっしりヘドロまみれ。こんなことってある?滝を見に来ただけなのに、なんでヘドロまみれになるんだよ。なんで西表島に来てヘドロまみれになるんだよ。聞いてないよぉぉぉ。

そして、更に問題なのは、その悪臭を放つ真っ黒なヘドロを洗う水がない。・・・こ、こ、このまま滝へ?ヘドロをぶら下げて滝へ?前代未聞のヘドロ探検隊?・・・うそだろ?小中学生だったら、アダ名にされちまうぞ。おい、ヘドロって呼ばれるんだぞ。ヘドロ、ジュース買って来い!とか言われちゃうぞ。・・・よかった・・・小中学生じゃなくて。

近くのちっちゃな水溜まりで、ちょっと洗ってみる。ヘドロを落としてみる。そしてすぐに断念。だって・・・あっという間に水がヘドロになって、ヘドロ水でヘドロを落とす・・・ヘドロでヘドロを落としている自分の姿が・・・シュール過ぎるんですもの。

ヘドロを落とすことに捉われ過ぎて、また底無し沼にはまるのはまっぴらごめんなので、次も助かる保証が無さすぎるので、ヘドロマンはヘドロを滴らせたまま、草原へ向かうのであった。

あぁぁ、ヘドロに埋まって死ななくて良かったよ。マヂで。

ヘドロマンって・・・呼ぶなよ。絶対。

島ぞうりマンなら・・・呼んでもいいよ。

ヤドカリが借りる前の貝

2011-02-10 18:21:12 | Weblog
ヒナイ川をジャブジャブと渡って、マングローブの林の入り口へとたどり着いた。小さな水路になっている。ここで靴に履き替えようと思っていたのだが、まだかなり水が残っている。ビーチサンダルのまま行くことにした。

地面は粘土層のような土。ネチャネチャとサンダルの底にくっついて来る。歩き辛いことこの上ない。ビーチサンダルの平らな底と、粘土層が密着してしまう。一歩を引き剥がすのに、相当な力を要する。この土にはビーチサンダルは合わない。
それでも、靴に履き替えなかったのは、水がだいぶ多かったのと、この場所を抜けたら草原に出るからだ。履き替えるタイミングは草原に出た所の方がいい。

それはそうと、ここは貝だらけだ。長細い巻貝。おびただしい量の巻貝が地面を埋め尽くしている。実際、はっきり言って、ぶっちゃけ・・・気持ち悪い。
粘土層の上をノロノロと筋を残して進んでいる。小さいモノから大きいモノまで・・・とにかく、そこら中巻貝だらけ。もう一度言っちゃう。気持ち悪い。

巻貝を避けて歩くのが大変。多すぎる。ビーチサンダルは依然として土にはくっついて置いて行かれる。取りに戻る。もうチータである。水前寺清子である。三歩歩いて二歩下がるのである。

先に進んでいくと、泥のヌチャヌチャ度が増してきた。水が澱んでいるせいだろう。ちょっとした悪臭が漂っている。この巻貝のせいじゃないのか?と、気持ち悪さも手伝って、憎さ百倍になってくる。

ビーチサンダルの踵は、歩く度に汚水をはね上げて、それが自分にかかって来るし、なかなか前には進めないし、気持ち悪い貝がニョロニョロと動き回ってるし、悪臭だし・・・若干辟易としてきた。

ここで、貝踏んづけ作戦発令。大きな巻貝の上を歩けば、ビーチサンダルの底とネチャネチャ土の間が密閉されない。発見。・・・まぁ、普通に歩いても、貝は踏んづけちゃうんだけどね。だってそこら中なんだもん。
気持ち悪いからって、踏んづけて殺していいってわけじゃない。うん、貝は死なない。だって下が粘土層で柔らかいから。そして、貝の殻は金槌を使わないと割れないくらい硬い。

大きな貝を選んでピョンピョンと歩く。少しペースが上がる。
早く、この工業地帯の汚水に侵された東京湾の海岸線のような劣悪環境地帯を抜け出したい。

ヒナイ川

2011-02-10 17:30:59 | Weblog
ヒナイ川。この川はちょっと深い。そして幅広い。
帰りが遅くなって水嵩が増えた時、この川を渡れるかが心配の種。

とりあえず今は膝くらいの深さ。

川の向こう岸には、マングローブの林の入り口。