佐藤天彦名人に羽生竜王が挑戦している第76期名人戦は第3局を制した羽生竜王の2勝1敗となりました。将棋に限らず、スポーツを含めた勝負を見てきて感じるのは流れの重要性。そして今期の名人戦、どちらに流れがあるかといえば、羽生さんと思われます。だから2勝1敗という数字以上に佐藤名人が追い込まれた形と僕は見ています。
決して羽生さんに比べて佐藤さんが弱いという訳ではありません。2年前は佐藤さんが羽生さんを4勝1敗で下し、名人位を獲得しました。実力的にはほぼ互角でしょう。しかし、2年前とは将棋界をめぐる環境はがらりと変わりました。藤井聡太という天才少年の出現により、斜陽産業だった将棋の世界に強い光が射したのです。
もう一つはここ半年ほどは、羽生さんが良い流れを引き寄せている気がします。昨年末の渡辺竜王との竜王戦。一心不乱に永世竜王を目指す羽生さんと、1年前の竜王戦でのゴタゴタで、すっかり悪者扱いされ、それを引きずる渡辺さん。「羽生を震えさせた男」として名をあげ、竜王戦を9連覇した大棋士も精彩を欠き、羽生さんが竜王位を奪還。永世竜王となりました。そして囲碁の井山さんとともに国民栄誉賞を受賞しました。
それから今期のA級順位戦。すでに4敗を喫し、自力での挑戦を逃したものの最終局で3敗の2人が敗れ、6人のプレーオフとなり羽生さんが挑戦者となりました。現在タイトル99期、100期目が名人戦というのも、よくできた流れですが、やはり運も実力のうち。羽生さんは転がり込んできたチャンスを確実にものにしたのです。
そこで思うことが一つあります。谷川浩司九段の「中学生棋士」という本で知ったのですが、谷川さんや羽生さんの時代は、プロ養成機関である奨励会の三段リーグが中断されていていたそうです。加藤一二三九段の時代はそもそも三段リーグがまだなく、三段リーグを通過して中学生棋士になったのは渡辺さんと藤井六段の2人だけです。谷川さんは孤高の天才ですから、三段リーグは早く抜けられたとは思いますが、羽生さんはどうだったかわかりません。ご存知のように羽生さんと同世代には森内九段、佐藤康光九段、そして亡くなった村山聖さんなど、のちに羽生世代といわれる大きな塊がありました。四段になれるのは2人だけですから、羽生さんがすぐに抜けられたかは何とも言えません。あの藤井君でも13勝5敗。5回も負けるわけですから、いかにメンタル的な要素が大きいかが分かります。そう考えると、26歳の年齢制限で退会になった人の中に、未来の名人が含まれていても何ら不思議ではありません。
瀬川五段が道を開いたのですが、奨励会を退会した人も特例でプロへの道は狭いながらも出来ました。勿論、将棋連盟にもプロの人数が増えすぎたら困るなど事情はあるでしょう。勝負の世界は厳しいのが当たり前ですし、運、不運もあります。しかし、退会者の中に未来の羽生、谷川、そして藤井聡太が含まれているとしたら将棋界にとって大きな損失です。再考の余地はあると思います。
決して羽生さんに比べて佐藤さんが弱いという訳ではありません。2年前は佐藤さんが羽生さんを4勝1敗で下し、名人位を獲得しました。実力的にはほぼ互角でしょう。しかし、2年前とは将棋界をめぐる環境はがらりと変わりました。藤井聡太という天才少年の出現により、斜陽産業だった将棋の世界に強い光が射したのです。
もう一つはここ半年ほどは、羽生さんが良い流れを引き寄せている気がします。昨年末の渡辺竜王との竜王戦。一心不乱に永世竜王を目指す羽生さんと、1年前の竜王戦でのゴタゴタで、すっかり悪者扱いされ、それを引きずる渡辺さん。「羽生を震えさせた男」として名をあげ、竜王戦を9連覇した大棋士も精彩を欠き、羽生さんが竜王位を奪還。永世竜王となりました。そして囲碁の井山さんとともに国民栄誉賞を受賞しました。
それから今期のA級順位戦。すでに4敗を喫し、自力での挑戦を逃したものの最終局で3敗の2人が敗れ、6人のプレーオフとなり羽生さんが挑戦者となりました。現在タイトル99期、100期目が名人戦というのも、よくできた流れですが、やはり運も実力のうち。羽生さんは転がり込んできたチャンスを確実にものにしたのです。
そこで思うことが一つあります。谷川浩司九段の「中学生棋士」という本で知ったのですが、谷川さんや羽生さんの時代は、プロ養成機関である奨励会の三段リーグが中断されていていたそうです。加藤一二三九段の時代はそもそも三段リーグがまだなく、三段リーグを通過して中学生棋士になったのは渡辺さんと藤井六段の2人だけです。谷川さんは孤高の天才ですから、三段リーグは早く抜けられたとは思いますが、羽生さんはどうだったかわかりません。ご存知のように羽生さんと同世代には森内九段、佐藤康光九段、そして亡くなった村山聖さんなど、のちに羽生世代といわれる大きな塊がありました。四段になれるのは2人だけですから、羽生さんがすぐに抜けられたかは何とも言えません。あの藤井君でも13勝5敗。5回も負けるわけですから、いかにメンタル的な要素が大きいかが分かります。そう考えると、26歳の年齢制限で退会になった人の中に、未来の名人が含まれていても何ら不思議ではありません。
瀬川五段が道を開いたのですが、奨励会を退会した人も特例でプロへの道は狭いながらも出来ました。勿論、将棋連盟にもプロの人数が増えすぎたら困るなど事情はあるでしょう。勝負の世界は厳しいのが当たり前ですし、運、不運もあります。しかし、退会者の中に未来の羽生、谷川、そして藤井聡太が含まれているとしたら将棋界にとって大きな損失です。再考の余地はあると思います。