昨年末、2010年に出版された長嶋一茂さんの闘病記「乗るのが怖い」を読みました。これまで私はパニック障害の闘病記は読んだことがありませんでした。パニック障害は部分的には共通する部分もありますが、やはり症状は千差万別で、その人なりの付き合い方を見つけるしかないと思うからです。しかし、最近の一茂さんの活躍ぶりを見ているうちに読んでみようという気持ちになりました。
第一章では、一茂さんの1996年から2010年までの闘病史が記されています。一茂さんの場合、かなり目眩が強く出たそうです。飛行機や新幹線での苦闘もリアルに描かれています。ドアの閉まる瞬間が駄目なのは痛いほどわかります。辛い時は掌にボールペンを突き刺してしのいだそうです。私の場合は親指をめり込ませていました。
一茂さんは母親の死をきっかけにうつ病が酷くなり、薬が合わなかったらしく、強い自殺願望に悩まされます。そのことが薬に頼らず治していく方向に彼を向かわせました。
第二章以降は、どうすればパニック障害を改善できるかを自らの体験を通して語っています。「孤独と飢えを見方につける」「自分を偽善者だと思え」「読書のすすめ」「ネガティブシンキング」「無駄なものは捨てていく」など。私が最も印象に残ったのは、「自分は若い頃、ろくでもない人間だった。もし、この病気にならなければ、人生の機微などわからないまま死んでいた」という文面です。
全体の印象は一茂さんが同じ病気で苦しんでいる人たちに気分を楽にしてあげたいという熱意が強く伝わってくる内容でした。10年以上前の本ですが、不変的なことが記されているので、古さは感じません。パニック障害ではなくても、生きるのが辛いと感じている方には読む価値があるのかもしれません。