ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

将王 15手目「決意」

2016-01-08 22:21:03 | 小説
10年ほど前から、コンピュータ将棋とプロ棋士との戦いは始まった。最初の頃は女流棋士でも勝てていたのだが、次第に歯が立たなくなり、プロの卵である育成クラブの精鋭、若手棋士、段位の高いベテラン棋士をも撃破していく。

そして、ここ3,4年は現役のタイトルホルダーを破るなど「コンピュータソフトはプロ棋士より強い」という説が、にわかに説得力を持ってきたのだ。そしてコンピュータソフトの中でも最強と名高いのがヘボンである。

勿論、小倉は指していない。「もし負けたらどうする」。これが小倉の偽らざる心中であり、プロ棋士の間でも、その思いは共有されていた。しかし、もはや世間の注目は小倉対ヘボンに集約されつつあった。小倉は背中に刃を突きつけられた思いだった。

「自分は絶対にコンピュータソフトとは指さない」。小倉の決意は年を追うごとに固まっていた。しかし、そうした態度にファンや関係者から不満の声が上がりだし、当初は「小倉はヘボンと指すべきではない」と考えていた棋士たちも徐々に「もはや指さざるを得ないのでは」との見方が強まっていた。

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