優位という感覚に間違いはなかった。指し手が進むごとに、私の優勢が明るみになっていく。私は大福を完食し、コーヒーも飲み干した。麻衣さんはロールケーキには手をつけることなく、盤上を見つめ続けている。「さおりちゃん、ロールケーキ、食べてもいいよ」。遠い記憶の中で、麻衣さんの優しい声が聞こえたような気がした。
もはや、誰の目から見ても私の優勢は明らかだった。普段、投了が早いことで知られる麻衣さんが、こうした局面まで指すのは珍しかった。いや、私の知る限りでは、負けがはっきりしたにもかかわらず、投げようとしない彼女は記憶にない。私は少し不安になった。まだどこかに逆転の筋があるのだろうか。しかし、何度見返しても勝負は決している。麻衣さんは持ち時間を使いきった。私の駒たちが麻衣さんの玉の周りを躍動しながら取り囲む。記録係の声が響く。50秒、1,2,3,4、5,6,7。「負けました」麻衣さんが駒台に手を置き、頭を下げた。ついに私は山崎麻衣から女流名王の座を奪った。しばらく二人で、盤上を眺めていた。幸せな時間だった。
もはや、誰の目から見ても私の優勢は明らかだった。普段、投了が早いことで知られる麻衣さんが、こうした局面まで指すのは珍しかった。いや、私の知る限りでは、負けがはっきりしたにもかかわらず、投げようとしない彼女は記憶にない。私は少し不安になった。まだどこかに逆転の筋があるのだろうか。しかし、何度見返しても勝負は決している。麻衣さんは持ち時間を使いきった。私の駒たちが麻衣さんの玉の周りを躍動しながら取り囲む。記録係の声が響く。50秒、1,2,3,4、5,6,7。「負けました」麻衣さんが駒台に手を置き、頭を下げた。ついに私は山崎麻衣から女流名王の座を奪った。しばらく二人で、盤上を眺めていた。幸せな時間だった。
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