昨日は当地域の基幹病院との消化器症例検討会だった。当院で診断できず、紹介先の他院で診断された自己免疫性膵炎の2例を、まったく考慮できなかったという反省をこめてちょこっと出した。向こうの病院からは研修医の先生が、lymphocytic colitisの症例を発表した。大腸専門の先生の指導だった。
microscopic colitis(MC)は、慢性の水様下痢(非血性)が1カ月以上続き、大腸粘膜は肉眼的に正常か軽度の異常所見を呈する。病理組織学的には慢性炎症性細胞浸潤(形質細胞、リンパ球)があり、上皮間リンパ球数の増加がある。大腸被蓋上皮下に膠原線維束(collagen band)があるのがcollagenous colitis(CC)で、ないのがlymphocytic colitis(LC)になる。
内視鏡所見は発赤、血管網増生、血管透見不良、微細顆粒状変化、縦走潰瘍がある。組織学的診断のために、上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸から生検する必要がある。原因になる薬剤としては、NSAID・H2ブロッカー・PPI(特にランソプラゾール)・抗うつ薬(SSRI)・アスピリン・チクロピジン・アカルボースなどがある。治療は薬剤性が疑われれば、薬剤を中止する。処方としては、欧米のブデソニドが使用できないため、プレドニンになる。
どのくらいの症例を経験しているか伺うと(指導医が回答)、collagenous colitisが10例で、lymphocytic colitisが2例ということだった。当院でもcollagenous colitisが疑われて、原因として疑われる薬剤を中止したことが数回ある。生検まで行ったのはあまりないはずだ。診断されていないだけで、案外ある疾患なのかもしれない。