火曜日に高血圧症・糖尿病で通院している86歳男性が、左胸痛で受診した。3年前退職した内科の若い先生が診ていて、その後に当方の外来に通院していた。
前の先生の時に物忘れがひどいという妻の訴えで、頭部MRIが施行されていた。画像上はアルツハイマー型に特徴的な所見はなく、陳旧性ラクナ梗塞と虚血性変化が目立つという読影レポートだった。サアミオンが処方されている。
昨年妻から、夜間せん妄で家族が困っているという話が出た。そのころロゼレムの認知症の夜間せん妄に効果があるという話題があった。抗精神薬処方の前にロゼレムを処方してみたところ、ある程度改善して、妻はそれで続けてほしいと言っていた。受診のたびにせん妄の有無を訊くが、妻から追加処方の希望は出なかった。外出を嫌がるので、病院に連れてくるのも一苦労だそうだ。
胸痛は数週間前からあったが、病院に行くかと訊いても嫌がっていた。その日は自分から病院に行くと言ったので、結構痛いのではないかという。心電図は異常なかったが、胸部X線で左肺は腫瘤影があって、びっくりした。昨年の胸部X線にはない。現役の喫煙者で、扁平上皮癌だろうか。
胸部CTを見ると、まさしく腫瘤だった。発熱もなく、肺癌で間違いない。まずアセトアミノフェンを処方して、精査・治療の適応はないと思うが、がんセンターなど専門病院受診の希望があるかどうか、家族で話し合ってくださいと伝えた。
金曜日は妻と息子さんが来院した。痛みは軽減しているそうだ。専門病院受診は希望しなかった。アセトアミノフェンの定期内服と疼痛時の追加分を、次回予約日まで処方した。