内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が、ここ1週間で内分泌の患者さんを続けて担当した。甲状腺と副甲状腺(カルシウム)と副腎の3症例。
甲状腺はバセドウ病。58歳の女性が全身倦怠感・食欲不振で受診した。先月から甲状腺専門のクリニックでバセドウ病の治療が開始された。持参した検査結果を見ると、抗TSH抗体陽性で診断は間違いない。処方は、メチマゾール(メルカゾール)30mg分3、ヨウ化カリウム丸(50mg)1錠分1・インデラル30mg分3だった。
発熱はなかったが、まずメルカゾールによる顆粒球減少症を考えた。白血球数2800と低値だが、好中球数1268で減少症ではなかった。CRP0.0と全く陰性。肝機能障害が軽度にあった。皮疹はない。肝心の甲状腺ホルモンはTSHが感度以下でFT4が正常をやや上回る程度で、治療前から比べれば改善していた。
とにかくだるさがひどく、入院を強く希望されて入院となった。まず、メルカゾールをどうするかという問題になる。当院の甲状腺外来担当の外科医に相談してもらうと、メルカゾール中止・ヨウ化カリウム丸継続で経過をみるようにというアドバイスだった。
抗甲状腺薬以外の原因はあるかと相談されたが、よくわからない。通常の検査以外に倦怠感を説明できるかどうかわからないが、ビタミンなど外注検査を追加してみてはと言ったが、あまり根拠はなかった(結果は異常なし)。
翌日、白血球数3700・好中球数1000になった。顆粒球減少症になる途中ではということで、G-CSFを1回だけ投与したところ、白血球数・好中球数は上昇した。それと同時に倦怠感が改善して、食欲が良好となってしまった。結局、抗甲状腺薬の副作用だったようだ。
メルカゾール中止・ヨウ化カリウム丸継続で退院になった。クリニックの先生に経過を記載した診療情報提供書を提出している。後はどうするのだろうか。まあクリニックの近くに甲状腺の内科外科の専門医のいる総合病院があるので、回してしまうのかもしれないが。
日本医事新報社jmedの甲状腺の本によれば、メルカゾールは効果・副作用の面で、15mg/日分1で開始する。これに無機ヨード(ヨウ化カリウム丸)を併用すると、より正常化が速い。減量はメルカゾールを先に減量して、正常が保たれたらゆっくりヨードを減量する。プロピルチオウラシル(チウラジール)は副作用の頻度が高く、特殊な症例で専門医が使用する、とある。