なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

ウェルニッケ脳症?

2018年12月12日 | Weblog

 地域の基幹病院から54歳女性が月曜日に転院してきた。先月初めに近くの診療所から、肝機能障害で消化器内科に、下肢の脱力で脳神経内科に紹介される予定だったが、その前に意識障害で救急搬入されていた。

 消化器内科に入院して、肝機能障害はアルコール性肝障害と判断された。アルコール多飲が続いていて、食事摂取も不規則というか偏食があった。脳神経内科で経過からウェルニッケ脳症と診断された。ビタミンB1補充で意識障害は軽快したが、下肢脱力・運動失調が続いた。記銘力障害・見当識障害・作話があり、コルサコフ症候群相当だった。

 さらに発熱が続いて、左胸水貯留があった。呼吸器内科で精査して、塗抹陰性・結核菌PCRは陰性だったが、胸水のADA上昇から結核性胸膜炎と診断された。INH・RFP・EBの3剤が開始された。肺外結核で排菌はしていないので、大部屋管理だった。

 先週入院主治医の消化器内科ではなく、胸膜炎を診た呼吸器内科医から電話がきて、転院を依頼された。アルコール性肝障害が改善して、ウェルニッケ脳症はビタミンB1補充で経過をみるだけなので、あとは結核性胸膜炎で呼吸器内科の問題になる。退院して外来通院できれば抗結核薬継続だが、運動失調で歩行できないので退院のめどがつかない。リハビリを入れると長期の入院になるので、当院紹介としたのだった。

 2か月ちょっと当院で入院治療したとして、その後はどうなりますがと訊いた。「あっ」と言われたが、「確認してまた依頼します」、となった。年齢的に介護保険の適応になるかどうかわからないし、施設入所というのも考えにくい。夫と娘の3人家族だが、日中はひとりになる。入院期間は限定的で、その後は症状があまり改善しない場合でも自宅退院になることを家族に伝えました、ということで診療情報提供書が送られてきた。特に断る理由もないので引き受けた。

 転身してくると、確かに偏食で好き嫌いが激しい。できる範囲で食事の工夫してもらうことにした。会話自体はスムーズだが、「夫は大学教授」とか「よさこい祭りがあるので」とか、適当なことをしゃべりつづける。転院前から体幹抑制されていて、当院でも継続して経過をみることにした。試しに長谷川式をしてみると、8点だった。

 送られてきた頭部MRIを見ると。ウェルニッケ脳症の変化はなかった。問い合わせて、放射線科の読影レポートを取り寄せると、やはり「ウェルニッケ脳症の所見は認めません」とあった。診療情報提供書にある入院時のビタミンB1の値も正常域だった。

 どうも臨床診断らしいが、発症状況や症状は確かに合っている。今度夫が来院した時に、発症前の様子を詳しく訊いてみることにした。リハビリの指示が入らないので、PTさんは苦労している。

 現実的に自宅退院は難しそうで、療養型病床や場合によっては精神科病院にお願いするしかないかもしれない。

 

 

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