なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

おまじない処方

2021年11月03日 | Weblog

 10月20日夜間に88歳男性が救急搬入された。家族の介助で入浴していたが、意識が低下したという。救急隊到着時は意識レベルJCS10だったと報告があった。

 搬入時は呼びかけると開眼して、20秒以上しばらく開眼している。定義上は一桁のレベルになる。発熱もなく、バイタルサインには異常がなかった。心房細動があるが、心拍数は正常域だった。

 意識低下して2時間で搬入されていた。頭部CTではラクナ梗塞が散在していた。心房細動による脳塞栓ではないのだろう。胸腹部CTでも肺炎などの異常はなかった。血液検査でもこれといった異常はない。

 翌日の午前中に頭部MRIを行ったが、新規の脳梗塞はなかった。寝たり起きたりの状態で、起きている時は短く発語もあった。点滴をしながら嚥下訓練・理学療法を入れたが、覚醒が悪いとリハビリにならなかった。

 甲状腺機能・副腎皮質機能やビタミン検査を行ったが、明瞭な異常はない。点滴の1本はアミノ酸製剤のパレプラス500mlで、それなりにビタミンが含まれている。

 もともと認知症はあるのだろうが、それが進行したと考えるしかないか、と思われた。入院1週間後に発熱があり、翌日の血液検査で炎症反応の上昇があった。誤嚥性肺炎を疑って、胸部CTを行ったが、浸潤影はなかった。翌日からは解熱している。

 抗菌薬は投与しないで、そのまま経過をみた。発熱はなく、血液検査再検で炎症反応は軽快していた。おそらく誤嚥の気管支炎はあったのだろう。

 経口摂取が進まない時は、家族と相談して対応を決めるしかない。次週(今週の月曜日)に家族を呼ぶことにした。先週の金曜日に回診すると、いつもはぼんやりしているが、ぱっちりと開眼していた。呼びかけに対する反応もいい。

 覚醒が一番いい昼だけ嚥下調整食3を出していたが、その日は完食した。週末になるので、そのまま昼だけにしていたが、摂取がいいので、3食事に上げた。

 家族が来た時には、食べられない時の処置ではなく、今後の介護の場の話になった。在宅介護は困難だというので、施設待ちの方針となる。

 

 気道感染症の発症と軽快という問題もあるのだろうが、点滴のアミノ酸とビタミンが効いたような気もする(根拠はない)。点滴はやめたが、経口のビタミン剤(ノイロビタン)を継続することにした。

 最近、活気のない高齢者(80歳代後半から90歳代)にノイロビタンを処方している。エビデンスも根拠もない、おまじない処方ではあるが。効けば(効いた気がすれば)何でもいいと思っている。

 

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