なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

血便の原因

2021年11月02日 | Weblog

 先週木曜日に基幹病院から転院してきた大腸憩室出血の96歳男性は、介護タクシーの中で嘔吐した。その日の夜に高熱・発汗があり、翌金曜日に胸部CTで見ると、両側肺野に新鮮な?浸潤影が散在していた。

 誤嚥性肺炎として抗菌薬(ABPC/SBT)をその夜間から開始して、翌日には解熱していた。もともと3万前後の白血球数(白血球増加症)は5万になり、CRPも上昇していた。

 約1週間くらいの肺炎の治療をする予定だった。ところが、日曜日の夜から血便が出現して、5回以上の排出があった。また大腸憩室出血が再燃したものと判断された。

 肺炎の治療後を見るはずの、月曜の血液検査は貧血の進行を確認する検査になった(炎症反応は軽減)。入院時のHb9g/dlが7g/dlに低下していた。濃厚赤血球を輸血することにした(4単位を予定)。

 この患者さんは末梢静脈が細くて、点滴が難しい。今の点滴が漏れたら点滴継続が無理かも、と病棟看護師さんにいわれたので、右内頚静脈からCVカテーテルを挿入した。

 末梢静脈のラインは2日間の輸血に使用することにした。絶食がある程度長くなりそうなので、薄めの高カロリー輸液を開始した。

 抗菌薬はスルバシリン(ABPC/SBT)で、ABPCは出血性腸炎の副作用がある。下痢状の血便ではないので、憩室出血でいいようにも思われるが、可能性も否定できないので、5日投与で中止することにした。

 こういう時に限ってCVカテーテルの血流感染が起きたりするので、できれば1か月くらい感染を起こさないでもらいたい。

 上行結腸に多発性に憩室があり、下行結腸の方にも憩室はあるが、上行結腸の憩室出血なのだろう。基幹病院での内視鏡検査では上行結腸の憩室出血とあった。

 内視鏡的治療(止血術)が困難になったため、憩室出血が続く時は保存的に治療して看取りも含めて診てください、という紹介なのでこれで頑張るしかない。

 年齢的に若めの高齢者で、内視鏡的止血が困難な憩室出血の場合は、憩室のある結腸を外科切除となるはずだ。さすがに96歳は適応なしとされたのだろう。

 

 

 

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