金曜日に病棟で指示を出していると、看護室の前に、車椅子に乗せられて肝不全用アミノ酸製剤のアミノレバン(ジェネリックのヒカリレバン)500mlを点滴している男性がいた。
たいていは認知症の高齢者(80歳~90歳代)がこの場所に連れて来られる。髭面の、当院の入院患者さんとしては若い人だった。65歳なのでぎりぎり高齢者だったが、もう少し若く見えた。
3日の休日は消化器科医は日直で、動けなくなって救急搬入されていた。アルコール性肝硬変で、日本酒を5合/日以上飲んでいるらしい。
ジアゼパムの内服が処方されているが、そろそろアルコール離脱症状が出るころではある。虫が動いているのが見えるのだった
原発事故の影響がある地域に居住していて、当地に避難してきているそうだ。ふだんは内科医院に通院していて、そこは今どき珍しい有床診療所で入院ができる。少し前にそちらに入院していた。
消化器科医が地域医療連携室を通じて問い合わせていた。ご迷惑をおかけします、禁酒のためのアルコール依存症専門病院への入院は勧めたが、拒否されました、と記載された返事がきていた。
入院時の検査で、血小板が2.9万と低下していた。肝機能はAST 199・ALT 51・ALP 122・γ-GTP 637・総ビリルビン6.9と、アルコール性に合致する異常を呈している。
血清アンモニアは74(<75)でさほどではなかったが、肝性脳症の指標は血清アンモニアしかないが(他に適切なマーカーがない)、必ずしも高値になるわけではない。アミノレバン投与は妥当だと思う。
腹部CTで肝臓表面に細かな凹凸があり、脾腫を認める。入院後に上部消化管内視鏡検査で食道静脈瘤を軽度に認めた。すぐに出血する心配はない。
消化器科にはアルコール性肝硬変の患者さんが何人か通院しているはずだが、大抵は現在は禁酒した方になる。(当方も外来でひとりだけ診ている)たぶんこの患者さんは退院後も禁酒はしないのだろうから、現役の大量飲酒家になる。これは案外珍しい。