3月まで当院に在籍した内科の若い先生は、内科専門医研修中だった。当院で経験した症例の指導医は当方になる。
4月から体制が変わって忘れていたが、先週思い出して内科学会のJ-Oslerを開いた。12症例が評価待ちとなっていて、とりあえず全部評価を入れた。
その中に急性心筋梗塞で後壁梗塞の症例があった。後壁梗塞は珍しい。どんな経過だったのか、またどんな心電図変化だったか興味があったので確認した。
受診したのは、昨年10月11日だった。患者さんは75歳男性で、受診3日前から上背部痛を感じていた。その日の午前3時から胸痛もあった。救急要請ではなく、普通に内科新患を受診して、内科の若い先生が診た。
高血圧症・糖尿病・心房細動で近医に通院している。DOAC(エリキュース)を内服していた。
普段140程度の血圧が、受診時は100になっていて、おそらく発症後に低下していたのだろう。酸素飽和度の低下はなかった。
心電図でⅢ・aVFでST上昇があり、普通は下壁梗塞と判断されるが、V1-5でSTが著明に低下(最大8mm)して異様な雰囲気を出している。V1ではないが、V2からはR波増高ともとれる?。
「即循環器内科へ」という心電図変化なので、急性心筋梗塞として地域の基幹病院循環器内科へ搬送していた。胸部誘導のST低下は下壁梗塞の鏡面像と解釈していたようだ。
循環器内科からの診療情報提供書によれば、回旋枝の閉塞による後壁梗塞と記載されていた。「心電図をプリントして、裏返して見ると前壁のST上昇の形(=後壁梗塞)になります」と親切に?指摘していた。プリントしてやってみると、確かにそうだった。