なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

めまいのMRI

2020年06月20日 | Weblog

 木曜日に、隣町の診療所からめまいで脳梗塞疑いの81歳男性が紹介されてきた。

 当院の神経内科医は身内の不幸で休んでいた。ちょうど大学病院脳神経内科から週1回外来応援に来ている日だったが、地域医療連携室で相談すると、基幹病院に紹介してもらうようにと言われたそうだ。

 診療所と患者さんは当院でいいと希望していたので、地域医療連携室から内科で診てほしいと依頼された。ある程度問診・診察はするが、診断はMRIに任せるだけということになる。

 

 患者さんは家族の車で来院して、普通に歩いて診察室に入っていた。歩くと少し揺れるが、それは腰と膝の問題だった。その日の午前6時ごろ起床した時に回転性めまいを感じた。1時間くらい動くと回転性めまいが生じて、静止すると治まるという症状を繰り返していた。

 頭痛・嘔気はなく、耳鳴・難聴もなかった(ふだんから若干難聴)。紹介状には回内・回外運動に問題があるとあったが、指鼻試験も含めて、年齢を考慮すると正常域のようだ。

 診療所を受診した時には浮遊感くらいになっていて、当院受診時にはほとんど治まっていた。明らかな眼振はない。頭位変換性めまい(BPPV)でいいようだし、入院するほどでもない。

 紹介だし、年齢的に脳梗塞(あるとすれば小脳脳幹部)も否定できない。MRI検査が昼近くの枠が空いていたので、行うことにした。

 頭部MRIで異常がなければ、めまいの薬を処方して帰宅にするつもりだった。拡散強調画像で見ると、左小脳に小さな(ラクナ)高信号域が出ていた。ADCでは低信号になっている。ただし部位が辺縁なので、本当に病変があるのか迷った。あるとしても今回の症状とは関係ないと思うが。MRAで左椎骨動脈が全体に細い(動脈硬化ではない)。

 脳神経内科医外来に来ている先生に相談すると、これはアーチファクトで梗塞ではないと言われた。運動失調の有無を診察して確認しますということで、お任せすることにした。

 あとでカルテを確認すると、脳梗塞はないとして普通にめまいの薬が処方されていた。紹介してきた診療所への返事も書いてくれていた。

 この患者さんは慢性心房細動で循環器科のクリニックからプラザキサが処方されている。それに抗血小板薬を追加するのもどうかと思うので、経過観察でいいのかもしれない。

  

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腸腰筋膿瘍

2020年06月19日 | Weblog

 膀胱癌で回腸導管造設術を受けた70歳男性のその後。尿路感染症・菌血症で血液培養2セットからStreptococcus dysgalactiaeが検出された。菌に合わせて抗菌薬をビクシリン(ABPC)に変更して、解熱して炎症反応も軽減してきていた。

 入院時から腰痛がひどく、化膿性脊椎炎疑いで腰椎MRI検査を行った。L3/4に炎症像らしい像を認めて、化膿性脊椎炎(椎体炎)が疑われた。

 その後、軽快していた炎症反応が急に増悪した。アセトアミノフェンとNSAIDsを使用しているためか、発熱はなかった。腰痛の程度や全身状態は変わりなかった。

 大学病院から整形外科の外来に来ている先生(整形外科常勤医が不在になってから週2回来ている)に相談した。造影CTで確認することになり、水曜日に行った。

 結果は右腸腰筋に膿瘍があり、L3/4椎間板炎から連続していた。手技的に難しそうだが、ドレナージを要する。大学病院で治療してもらえることになり、転院搬送した。

 腸腰筋膿瘍は以前に1例あったかもしれないが、当院としては珍しい。軽快していた炎症反応が途中で増悪(その後また軽快傾向へ)したのは脊椎での局所的な何かがあったのだろうか。

 

 

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脳幹梗塞

2020年06月18日 | Weblog

 月曜日の午後に隣町の診療所の若い先生から、58歳女性が紹介されてきた。その日の午前4時ごろから浮動性のめまいがあり、歩行できるがふらついていた。指鼻試験で測定障害を認めて、小脳性運動失調の疑い(小脳梗塞の疑い)とされた。意識は清明で麻痺はない。

 当院内科の若い先生に地域医療連携室から連絡が来て、対応を相談された。簡単に所見をとって、すぐに頭部MRI検査を行うことにした。

 ただし問題があった。この患者さんは健診の頭部MRI(脳ドック)の時に、閉所恐怖症があり、MRI室に入ると耐えられずに検査中止になっていた。それでもMRIの拡散強調画像だけでも撮らないと判断でできない。

 患者さんは山間の町からタクシーで当院に来るので、40分くらいはかかる。もし小脳梗塞があれば、大きさによっては脳外科のある病院への転院搬送を要する可能性もあるが、まだ時間的に余裕はあった。

 来院してさっそく頭部MRIを開始した。ちょうど拡散強調画像を撮り始める時に放射線室に行ったが、患者さんは下肢を動かしていた。何とか拡散強調画像を撮り終えて、FLAIR画像を撮り始めると、動きが激しくなり画像が乱れた。そこまでで検査を断念した。

 拡散強調画像では脳幹(橋)の左右に高信号域を認めて(ADCでは低信号)、脳幹梗塞と診断された。当院の神経内科医に連絡して、神経内科で入院となった。

 この患者さんは、高血圧症・脂質異常症(高コレステロール血症)・喫煙のリスクファクターを持っている。大脳にも陳旧性のラクナ梗塞があった。

 小脳徴候は小脳障害だけでなく、大脳や脳幹への求心路や、小脳からの遠心路が障害されても出現する。紹介した若い先生の小脳性運動失調疑いの判断は見事なものだなあ、と感心した。

 

 

 

 

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じん肺、肺癌

2020年06月17日 | Weblog

 火曜日の早朝に82歳男性が呼吸が苦しいと訴えて、救急外来を受診した。月曜日の当直だった循環器科医が診察して、胸部X線・CTで陰影増強を認めた。

 この患者さんは3月にがんセンターから当院の呼吸器科外来に紹介されていた。担当は診療応援に来ている(バイト)外部の病院の先生だった。

 診断はじん肺と肺癌だった。右肺肺尖部に結節影を認めて肺癌と思われるが、精査・治療の対象ではないので経過観察にしたとある。病状進行時は緩和ケアで対応してほしいということだった。(入院になれば、当院は呼吸器科の常勤医がいないので、内科に依頼される)3か月後の外来フォローとなり、今月末に予約が入っていた。

 CTでは両側肺野の蜂巣肺の部分に浸潤影ともとれる陰影になっていて、蜂巣肺ではない部位にも淡いすりガラス様陰影が出ていた。その日たまたま最初に見た呼吸器科医が来ていたので、そのままコンサルトされた。

 肺うっ血が加わっている陰影とされて、循環器科入院となっていた。画像だけ見て、単純に間質性肺炎の急性増悪の患者さんがきているなあ、くらいに思っていたが違った。うっ血という判断はどうかな、というのもあるが、

 じん肺は、画像としては間質性肺炎の像になるので、職業歴を加味しないと診断できない。この患者さんは石材店勤務という職業歴があった。

 

 

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反応性関節炎

2020年06月16日 | Weblog

 高血圧症・緊張型頭痛で通院している66歳男性は、毎回仕事と家事の疲労と日常生活での愚痴をこぼして帰る方だった。しかし2週間前の外来受診日はいつもとは違った。1週間前から両肩・手・手指関節痛がひどく、蹲踞からの立ち上がりもひどいと訴えた。

 また始まったと思う、という。忘れていたが、多発性関節炎が続いた既往があった。10年前に、全身の関節痛で大学病院のリウマチ膠原病を扱う内科に通院していた。9年前の春に、大学病院からの処方がなくなったということで、大学病院受診までにのプレドニン15mg/日を処方した。

 

 その年の秋に大学病院から診療情報提供書をもらってきた。診断は反応性関節炎とあった。何らかの感染症(泌尿生殖器?)によるはずだが、そこは確定していないらしい。処方はプレドニン10㎎/日になっていた。患者さんの解釈は、「大学病院でも診断がつかなかった」だった。

 通院が大変なので、地元のそちらでプレドニンを漸減中止して下さいという内容だった。春にプレドニン15mg/日で受診した時はCRP 6.2・血沈64/104mmだったが、紹介時はCRP 0.2になっていた。

 プレドニン10mg/日を継続して、炎症反応陰性化を確認しつつ、その後1mgずつ漸減して、次の年の12月に中止していた。患者さん自身は心気症傾向があり、漸減しようとすると不安がるので、予定したよりも長くなっていた。

 

 今回、何らかの感染症が先行したようでもない。患者さん自身も前回よりは関節痛が軽度だという。検査ではCRP2.7と軽度の上昇にとどまっていた。

 今回はプレドニンを何mgにするかで、患者さんとやり取りをした。このくらいでどうか、それでは少なすぎる、そんなに多くはいらない、・・・・ということで、前回の半分のプレドニン20㎎/日で開始することにした。

 2~3日内服して症状は軽快したという。2週間内服して、CRP0.0になっていた。もっと少なくてもよかったか。2週間おきに5㎎ずつ漸減して、その後の漸減は相談して決めることにした。

 リウマチ性多発筋痛症・RS3PEも考えたが、明らかな手指関節炎があり、違うのだろう。HbA1c6.4%の方なので、プレドニン投与で糖尿病が心配になる。

 なんだかステロイドを適当に安易に使用しているようで、あまり気持ちがよくない治療になる。これといった基準に従っての治療ではないので、経過をみながらやってみるしかない。

 

 

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膝関節炎~偽痛風でいいのでは

2020年06月15日 | Weblog

 4月下旬に90歳女性が、県内有数の総合病院救急科から当院外科に転院していた。その1か月前に救急搬入されたとあるが、なぜ当地域の病院ではなく、遠方に行ったのかわからない。当院を含めて受け入れできなかったのかもしれない。

 発熱・敗血症性ショックと診断されて、血液培養で口腔内常在菌が検出されていた。口腔内衛生状態不良とも記載されていた。口腔外科で6本の抜歯を行ったが、それでも口腔内衛生状態は不良とある。

 経過中にABPC/SBTによる薬疹の発症があり、CTRX+CLDMに変更したとある。また右膝関節の偽痛風の発症もあり、関節穿刺とアセトアミノフェン、湿布で軽快治癒したとある。

 腎機能障害(eGFR 30)があるのでNSAIDを避けたのだった。アセトアミノフェンで関節炎は治まらないので、関節穿刺と湿布がく効いたのだろう。関節炎を繰り返すことがあるので、この記載を参考としていただければ幸いですとある。

 

 自宅退院を目指す、リハビリ目的の転院だった。当院転院時の検査では炎症反応は陰性だった。1か月くらいのリハビリで自宅にもどれればという予定だったはずだ。

 ところが、転院1週間くらいで発熱と膝関節痛が発症した。炎症反応も上昇した(CRP 20前後~30弱)。アセトアミノフェンが開始されたが、関節痛がひどくトラマールも使用していた。

 きちんと血液培養2セットと尿培養が提出されて、抗菌薬も開始された。培養で有意な菌は検出されず、抗菌薬を使用しても、発熱と、炎症反応の上昇は変わりなかった。

 5月初めに整形外科の診療応援できている先生(膝関節の専門医)に相談していた。両側膝関節の化膿性関節炎として手術(戦場とドレナージ)が行われた。

 しかし、その後も発熱・炎症反応の上昇は変わらず、抗菌薬はとっかえひっかえになっていった。メロペネム、ゾシン、レボフロキサシン、ミノマイシン、そしてバンコマイシンが使用されていた。

 膝関節液の培養も陰性だったが、整形外科医からは陽性率が低いのでそうでしょう、と言われたそうだ(確かに陽性率は低いが)。バンコマイシンを使用していたことから、AST会議の話題になった。上げてきたのは薬剤師さんで、仕事柄バンコマイシンの血中濃度の話をしたが、聞いていないようですが、とも言っていた。膝が痛くて泣いています、ということだった。

 患者さんはしだいに弱っていって、食事摂取ができず、高カロリー輸液が行われていた。経過をまずカルテベースで確認して、患者さんを診に行った。案外ちゃんと話はできる。左膝関節の症状は軽快していたが、右膝関節の熱感・腫脹は続いている。

 

 これまでの経過から、これは偽痛風でいいのはと思われた。これほど長期に症状が出続けるかという疑問はあったが。

 主治医の外科医に、偽痛痛の治療を追加しませんか、と話してみた。腎機能障害があるのでNSAIDsは使用しがたく、治療はプレドニンになるので感染症だと裏目に出ますが、とも伝えた。

 ここまで来ている(悪化)ので、もう何でもやると言われた。偽痛風のプレドニン投与量の基準はないが、15mg/日から開始してもらった。

 プレドニン投与開始から2~3日で解熱して、炎症反応も改善してきた(CRP 4)。昼だけ出していた食事(嚥下調整食3)をそれまで数口程度だったが、ほとんど摂食できるようになった。

 クロストリディウム感染症の発症や(メトロニダゾールを内服可能)、カテーテル関連血流感染と思われる発熱があり(カテーテルは抜去)、まだ不安定な要素はあるが、何とかなりそうだ。

 膝関節は変形性膝関節症の所見があり、右膝関節内に石灰化がある。

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椎間関節炎?

2020年06月14日 | Weblog

 昨日記載した70歳男性は、入院後に腰痛が続いていた。主治医の若い先生が、入院時からアセトアミノフェン(カロナール内服、アセリオ点滴静注)を行っていた。腰痛がひどくて、トラマールの追加、一時はソセゴン注も使用していた。あまり好ましくはない。

 おそらく脱水症のため、入院時の血清クレアチニン1.33mg/dl(eGFR 42)でNSAIDは避けていた。入院後には点滴が入って、血清クレアチニン0.85mg/dl~0.68mg/dlと回復してきた。

 化膿性脊椎炎の検索として、MRI検査を行った。明らかな化膿性脊椎炎の所見はなさそうだ。腰椎後側に高信号域があり、これは以前経験した椎間関節炎(偽痛風)の可能性がある。

 抗菌薬使用で微熱になっていたが、腎機能に回復を確認してNSAID(セレコックス)を開始するとはっきり解熱した。腰痛もかなり改善して、来週始めからはリハビリを開始できそうだ。セレコックスを継続して経過をみることにした。

 当院は整形外科医の常勤医が不在となり、大学病院から週2回の外来応援(バイト)だけになった。もっとも炎症の鑑別に関しては、あまり整形外科医は関心がなく、相談しがたいようだ。

 

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回腸導管造設術の尿路感染

2020年06月13日 | Weblog

 先週の金曜日に、がんセンターから70歳男性が発熱で紹介されてきた。4年前に膀胱癌で、膀胱全摘・回腸導管造設術を行って、その後は放射線化学療法をしていた。再発なく現在に至るとあった。

 前日突然38℃の発熱があり、がんセンターを受診した。呼吸器症状なし(味覚異常なしとあったのは今どき)、腹部症状なしで、インフルエンザ迅速検査陰性・炎症反応ごく軽度・尿所見正常・胸部X線で肺炎なし、と記載されていた。

 当院受診時は、白血球8600・CRP27.0となっていた(時間経過の問題)。尿は混濁して、細菌(3+)だが、腸管とは分離されているとはいえ回腸導管なので、評価しがたい。

 外来で診察した内科の若い先生は尿路感染症として治療を開始した。抗菌薬を相談されたが、まずはセフトリアキソンで開始することにした。CTで両側腎臓は水腎症もなく、尿路閉塞はないようだ。

 土曜日に日直で病院に来た時も、高熱は続いていた。血圧低下はなく、抗菌薬の効果は3日みないとわからないと思った。土曜日は病院にそのまま泊まって、日曜日に朝に確認した。まだ高熱は続いている。アセトアミノフェンで少し解熱した後に、悪寒がきて高熱になる。

 細菌検査室から、受診時に提出した血液培養2セットからグラム陽性球菌が検出された、と報告が来ていた。すぐ出たので菌数が多いのだろう。

 セフトリアキソンは連鎖球菌・MSSAなら効くが、MRSA・腸球菌には効かない。菌名と感受性が判明するまで、バンコマイシンも併用とした。

 月曜には解熱傾向にみえたが、抗菌薬投与後の日数の問題(3日間使用)なのか、まだわからなかった。火曜日に血液培養2セットからStreptococcus dysgalactiaeが検出された。感受性は問題なくあるので、日数の問題だっただろうか。抗菌薬はビクシリン(ABPC)に変更した。

 非常勤の泌尿器科医にCTをみてもらったが、問題ありません(尿路閉塞などのトラブルなし)ということだった。回腸導管造設術の像は初めて見た。尿道は結紮されているので、盲端になっているそうだ。

 その後は解熱して、熱に関しては安定した。ただ、発熱と同時期に腰痛が発症していて、高熱もひどいが腰痛もひどかった。すると感染巣がどこかという問題が出てくる。無症候性細菌尿+化膿性脊椎炎も考えられた。(続く)

 

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下部胆管癌の血糖コントロール

2020年06月12日 | Weblog

 先週末に外科の先生(女性医師)に、下部胆管癌の88歳女性の糖尿病治療を依頼された。5月28日から急性胆管炎で入院していた。朝は血糖が60~80mg/dlだが、昼は200~300mg/dl台、夕は300~400mg/dl台になる。

 消化器科外来で処方されていた経口血糖降下薬は、DPP4阻害薬(ジャヌビア50mg)・SGLT2阻害薬(スーグラ50㎎)・SU薬(アマリール1mg)・ピオグリタゾン15mgだった。それにヒューマリンRのスケール対応だった。

 朝の血糖が低めで、ヒューマリンRは入らないので、昼の血糖から上がり始める。昼のインスリンでも下がりきらずに夕はさらに高血糖という経過だった。

 

 土曜日の日直の時に、これまでの経過を確認した。もともと内科医院に糖尿病で通院していた。処方はグラクティブ50㎎とグルベス3錠(グルファスト10mg+ベイスン0.2mg)でHbA1c8.5~9.5%だった。

 昨年の11月に閉塞性黄疸で当院の消化器科に紹介されたが、膵頭部癌疑いで地域の基幹病院消化器内科にさらに紹介となった。下部胆管癌と診断されて、胆管ステントが留置された。黄疸は軽快して、年齢的に治療としてはそこまでになるので当院に戻された。

 今年の4月になって、十二指腸下降脚の閉塞で嘔吐するようになった。当院外科で胃空腸吻合術が施行されて、食事摂取が可能となった。

 閉塞性黄疸時にHbA1c12.0%まで上昇して、減黄後は9.2%まで戻っていたが、十二指腸閉塞時には13.4%まで上昇していた。経口血糖降下薬の追加(SU薬とSGLT2阻害薬)で、5月初めに11.1%、5月末には8.7%と急激に低下した。

 

 空腹時血糖が70mg/dlで昼夕はかなりの高血糖になるパターンだった。胃空腸吻合術で食物が一気に腸管に流れ込んで血糖はoxyhyperglycemiaの形になるが、夜間~早朝はずっと(無自覚性?)低血糖になっていたはずだ。 

 ちょうど一時的に食事を中止して、経口血糖降下薬も全部中止になり、回復後に食事と内服が再開されるところだった。夜間~早朝に低血糖になっているので、そのまま内服薬を中止にして、インスリン治療で経過をみることにした。

 超速効型インスリンを毎食直後に3単位として、朝はそのまま同量、昼夕のインスリン量を血糖をみて1単位きざみで上げることにした。3単位のままでも、朝の血糖は同じで(これは薬の影響のない自然の血糖になる)、昼夕が200mg/dlちょっとになり、さらに100mg/dl台になった。

 そろそろ抗菌薬(ゾシンPIPC/TAZ)を中止するところだが、腹水が貯留していて、いったん退院できるかどうかはわからない。

 

 

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化膿性脊椎炎

2020年06月11日 | Weblog

 先週の金曜日に、隣町の診療所から化膿性脊椎炎疑いの90歳女性が紹介されてきた。ふだんは高血圧症・心房細動などで通院していた。定期受診の日だったが、数日前からの腰痛を訴えていた。

 下部胸椎の自発痛・叩打痛を認めて、37.1℃の微熱があった(発熱としては微妙ですがと紹介状にあった)。軽介助で歩行可能だそうだが、腰痛がひどくてADLは低下していた。打撲の既往はないが、認知症があり、本人も家族もわからないこともある。NSAIDで経過をみてしまうような症状ではあった。

 内科の若い先生が外来で診て、血液検査では白血球14800・CRP4.5と炎症反応の上昇を認めた。骨条件を含めた胸腹部CTをおこなっていて、肺炎像はなかった。尿所見は、沈査で白血球50-99/HPF・細菌(+)だったが、尿路感染症は除外診断であり、無症候性細菌尿かもしれない。

 ここで相談されたが、化膿性脊椎炎疑いだとMRIをみないとわからない。MRI検査が空いていたので、すぐに行うことができた。第11胸椎の椎体にT1強調画像で低信号、T2強調画像脂肪抑制画像で高信号を認めた。化膿性脊椎炎と判断される。

 血液培養2セットを提出して、セファゾリン(CEZ)1g3回で治療を開始した。入院後は解熱して(もともと微熱程度だが)、炎症反応も白血球8000・CRP1.6と軽減した。血液培養の結果はまだ出ていないが、菌は出ないかもしれない。

 紹介してきたのは自治医大卒後5年目の若い先生だった。病歴と診察だけで化膿性脊椎炎疑いとして紹介してきたわけで、見事な判断。恐れ入りました。

 

 

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