zoom『世界』を読む会・1月例会の報告
1月28日(金)、zoomの『世界』を読む会、1月例会を行いました。新しい方がお2人加わって、7名の会でした。
■ 第一テーマ・飯田哲也「複合危機とエネルギーの未来」
・飯田哲也の斎藤幸平批判に惹かれて読んだり考えたりしたが、そうすると、飯田哲也には資本主義に対する批判的見方が欠けていて資本主義に包摂されてしまっていると思うようになった。
・資本主義への批判がないことから、モビリティへの批判的な視点もない。
・自分は、「グリーン成長と脱成長との間のギャップを埋める」と言っているようだが、そうなっていない。〔p.201〕
・このお陰で『「人新世」の資本論」』を読み返すことになったのだが、読みが深まる程にその内容に納得している。
・COP26で確認された、二〇五〇年に温室効果ガスをゼロにする目標の実現のためには、エコモダニズムには出来ない技術を持ち出していて現実性がない。一方「脱成長」も飯田氏の言うように政治的・経済的な現実性はない。飯田氏は、GN(グリーンニューディール)が解だという主張ではないか。すでにある技術で解決できるということで賛成だ。
・日本政府は原発も進めたいし、エコモダニズムの立場を言っているようだ。
・太陽光エネルギー礼拝のようになっているが、再生エネルギーは太陽光だけではない。再生エネルギーという大きな括りで考えるべき事だ。
・電気自動車と言っているが、電気製品であって、日本の自動車が全部電気になったら、原発10基分くらい必要ということだと電力政策はどうなるのか。
・経済成長の中に科学技術の発展が含まれているとすると、人類史を見ても経済成長を否定するのは無理ではないか。科学技術とその思想の発展は止められない。生活の質(quality of life)を下げるということは難しい。野放図な経済成長は良くないが、脱成長は、いい悪いでなく、無理だろうと思う。
・飯田氏が言っている「太陽エネルギー文明」というのは、地球に照射する太陽エネルギーの総量は相当なもので、それを何%か使えれば人類が使う位は簡単だという論文がいつかあったが、そのことだと思う。
(小野塚知二 「人類は原料革命から卒業できるのか?」2020年7月号 「現在、人類が一年間に消費しているエネルギー総量は約一三一PWh(一三・一京Wh)である。
地球が太陽から一年間に照射されているエネルギーの総量は一五二万PWh(一五二〇〇〇京Wh)である。
地球に吸収される太陽のエネルギーのわずか〇・〇一二パーセント(八二〇〇分の一)を人類のさまざまな活動に必要な仕方に変換できるなら、現在消費している一三一PWhをまかなうことは可能なのである。」〔p.111~112〕)これかな?
■・米山リサ×板垣竜太「共振する日米の歴史修正主義」
・「慰安婦有責論」「コリアン有責論」「機会主義的エリート論」「トランスナショナルな腹話術」「反アファーマティブ・アクション」「忘却の共犯関係」などの用語の解説をしながら、「日米で共振している歴史修正主義」ということを、郡山さんから解説。
・新自由主義と歴史修正主義のつながりの説明がよく分からない。どのように交差しているのか。
・朴裕河『和解のために』に感動したが、ここでの批判的な評価の内容がつかめない。従軍慰安婦問題での日本の中での運動家の中の対立があるが、この論文はそこに分断を持ち込む内容ではないか。
・ラムザイヤー論文への批判が強く、五月号でも批判していて、終わったことと思っていたが、そう簡単に片付けられない問題だったのだなと分かった。日本で百田などという者に対する読者層があることをどうしたらいいんだろう。ファクトチェックを乗り越えてしまう確信犯的な読者層の存在を。
・ゲーム理論のような自分を「客観的」だと思っている研究者は、だいたい自国のやっていることをおおむね「正しい」「穏健妥当」だとし、問題を問う人を「偏向」と考える、〔p.254〕というところから、日本国民の中に広くある認識との共通性を感じた。
・26日の東京新聞の投書に「成人式に党チラシ不要」と言う題で「常識をわきまえて行動して下さい」と書いている。「常識」と言う言葉の先には、「非国民」という言葉が待っている。政党のチラシを「政治的」と思っているが、式の演壇の日の丸やそれにうやうやしく礼をすることは「政治的」だと思わないで、自分は「客観的」な「常識家」だと。思っていることと同じだと感じた。
・ゲーム理論で扱う人間は、歴史性や支配関係や個性を無視した純粋に同質な者のように考えて行動を予見する。
・ラムザイヤー論文は産経新聞が大々的に取り上げて、そこから韓国で話題になった。最近の「週刊新潮」にラムザイヤーの反論が載っている。(ラムザイヤーのことは世間は知っているのか、に答えて)
・慰安婦を巡る攻防の主戦場が、アメリカを舞台にするようになっていることから、日本の歴史修正主義者がアメリカでどうにかして欲しい思うなかで、こうなった。(「第二次安倍政権期になって、いわゆる「パブリック・ディプロマシー(広報文化外交)」が強化」され、アメリカのマグロウヒル社の教科書の「慰安婦」記述に日本政府が外交ルートを通じて修正を求めた)下の〔p.221〕
・ラムザイヤー論文への批判の声は、アジアを中心に世界中の学者、学会から巻き起こった。(日本学術会議問題で、圧倒的な学術団体から声明が挙がったように。)
・米山さんが難しく言っていることを、板垣さんが分かりやすく言い直しているようなところが何度かあった。
・アジア女性基金の元慰安婦への理事長の手紙(1996年)はとても感動的な文章だ。保守中道までを含んだ広い組織だったが、その「道義的責任に基づく償い事業」と言った「道義的」がけしからん、「法的」でなければと批判する「挺対協」などの立場があったが、朴裕河はアジア女性基金を評価する立場。『帝国の慰安婦』で元慰安婦から告訴されている。どう解決へ向かうのか、この対談では分からない。
◎ ZOOMの『世界』を読む会、2月例会 の予定
●日 時 2月25日(金) 午後7時~9時半
※ 月末の金曜が定例です。
○共通テーマ
・「再審制度の改革はなぜ必要なのか」 鴨志田祐美
・「頭とこころでつまずく」 中村真人
・「世界最大の分散型記念碑」【1月号】
○参加ご希望の方は連絡下さい。案内を差し上げます。
● 連絡先 須山
suyaman50@gmail.com



