夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

雲まよふ夕べに秋をこめながら

2009年08月16日 21時47分27秒 |  気になる詩、言葉


雲まよふ夕べに秋をこめながら      
    風もほに出でぬ荻のうえかな
         前大僧正慈円
         新古今集 278 

雲が乱れ行く夕べ 秋を感じさせながらも
風はまだ穂も出していない萩の上を吹いている

源氏物語の野分の
風騒ぎ村雲まがふ夕べにも忘るる間なく忘られぬ君
の元詩ですね。

この前の日記でも書きましたけど、日中は真夏の一日なのに、夕暮れになるとこちら、いすみ市では風が涼しく、秋の感じを寄せてきます。
夕暮れの色もそこはかとなく、もう秋。
皆さんは秋には何を感じられるでしょうか。

実りの喜び?
夏の終わりの悲しみ?
来るべき冬の予兆?
それともロマンティックな夜?

           

いとかかるころは遊びなどもすさまじく   源氏物語 常夏

2009年08月16日 20時55分00秒 |  岬な日々


スポットの天気予報を見る限り、いすみ市の夏はそんなに悪くない。
あの東京のアスファルトとコンクリートに固められた地面から昇る暑さを思えばなんてことはない、、、、はずなのですけど。
でも、暑いものは暑い。
真っ青な空、照りつける太陽、、、、青春ドラマの主人公のようなエネルギーたっぷりでそれを跳ね返せる時期はとっくの昔に終わってしまって、ほんと、死に死に。

知人が京都に行かれるのだそうな。
この暑いときに、京都。
ほんとうにご苦労様なことです。

いとかかるころは遊びなどもすさまじく さすがに暮らしがたきこそ苦しけれ
             源氏物語 常夏

こんなときは遊ぶきにもなれないくらい。生きていけないよ~

大宮人はやせ我慢の大家。その典型の光源氏さんがこう嘆いておられましたよ。


京都の夜はどうなのでしょうか、あの地形からするとそんなに涼しくなるはずはないと思いますけど、、、、

いすみ市は日がかげると、すっと風が涼しくなります。
お盆を過ぎると、夕焼けもなんとなく秋を感じさせて、、、
昨夜は、それを注意して、窓を閉めたのに、今日は風邪っぽかったくらいです。


ところで、水無月のところで書きましたけど、昔から京都には氷室があって夏でも氷が食べられた。
陰暦の水無月ですから、太陽暦に直せば、ちょうど今頃。
もちろん超のつくセレブたちだけの贅沢ですけどね。

この常夏の冒頭にも、
「大御酒参り 氷水召して 水飯などとりどりにさうどきつつ食ふ」とありますね。氷水を飲まれたのですね。

私も冷蔵庫で冷やしたジャスミンティを飲もう、、、

三日夜餅(みかよの餅)

2009年08月16日 14時29分02秒 |  食べるために生きる
ところで、先ほどお菓子の水無月を書いていまして、そうだこれも書いとかなきゃって思い出しました。

先年、師匠から三日夜の餅のことを調べてって言われたのです。
金がないって騒がれていましたので、吉原にでも身売りするのかなって思っておりましたけど、遊郭にはこの風習はだいぶ後まで残っていたようですね。
一見さんはどんなにお金を積んでも、太夫には合えなかったんです。

そのときにはたいした返事はできなかったので、引っかかっていました。



ということで、三日夜餅のこと:

昔、日本は通い婚でした。
男性は何人かの通う相手を持っていて、そこを訪ねていたのですね。
もちろん、これはと思う相手は、正妻として自宅に住まわせた。たいがい北にその部屋があって、今、大河ドラマでも言われている「北の政所」って呼ばれていたのです。
ところで、その相手を決めるのに、申し込みをして、相手がOKよ、って返事をしてから、三日は相手のもとに通わなければならなかったんです。そしてめでたく三日目が過ぎると、三日夜餅を夫婦で食べた。そのお返しとして新婦側は披露宴を開いたのですね。餅は固くなるから、固めの儀式という意味合いがあったのでしょうか? でも、すぐにカビが生えるなんてことは言っこなしですよ。
あくまで、めでたし、めでたしなんですから。

ところでついでにそのめでたしまでのプロセスをご紹介しますと、
まず、あの子がいいな~って相手を探し出します。
これもなかなか大変な仕事。
深窓の麗人なんてのは、はしたないからって、なかなか人前には現れないのです。
みんな必死で、データを集め、一目相手を見ようと努力をするのです。

やっと、相手を見つけると、まず和歌を贈ります。
「夜這い」って言葉は本当は「呼ばひ」なのですね。詩で相手に好きだよ~って呼びかけること。
でも、最初は猫と同じ。オスが寄ってきても、まずは嫌ったそぶりで邪険にふるのが決まりごと。
だから和歌の発生したころの、和歌の主目的はこの懸想文(妻問い詩)と、それに対する相手からの返り詩(本気なの? って聞く問い詩や、もっとストレートに嫌よって答える拒り詩)が大きな意味を持っていたのです。
そしてこの応答がだんだんと実を結びだすと、相手の家に行って、御簾を隔ててお話をしたり、、、、、いいぞ、いいぞ、、、、でも、たいがいは直接お話できるのではなくって、間に召使などが入って、話(これまた詩ですねん)を取り次ぐのですね。あぁ、昔に生まれなくってよかった。今はもっとシンプルですもんね~

そして、これが成功すれば、、、
お姫様の寝所へと招かれる、、、、
この辺までは、親は知って知らぬ顔をしているのです。
それが三回続くと、親も認めた仲、というより、世間に認められた夫婦となるのです。
そして、三日夜の餅と披露宴と続くのですね。



この暑いのに、読むだけでも大変ですよね。
ご苦労様でした。


ところで、三日夜の餅。
かなりマイナーですけど、この餅が残っているところがあるそうです。






水無月  氷室

2009年08月16日 14時15分03秒 |  食べるために生きる



暑いですよね。
今日は昨日よりももっと空の青さが目にしみる。
本当に夏の暑さになりました。

こんなときには冷たいものでも欲しい、氷点てなんてなんて優雅なって思ってふと思いつきました。
ちょっと前に、知人が江戸では将軍に献上する氷があって、だから江戸千家では氷点てが生まれたって書かれていました。
江戸千家に関しては無知蒙昧な私が何も言うことはありませんけど、夏の氷は平安の昔からあったのですよね。
京都の公家衆の間では、氷室を持つことがあって、北山には今でも氷室の後があるそうです。
ですから、一握りの人かもしれませんけど、夏に氷を食べることはありえたこと。
何も江戸の将軍家だけの特権ではなかったのですね。

この氷を模した物が京都のお菓子の水無月。
この御菓子の説明はこちらにあります。
旧暦の水無月が今の8月ごろにあたりますので、この御菓子がだされました。

残念ながら手元に水無月がありませんので、今日の写真はなし。

ピョンピョン、 ピョコピョコ、 バサバサ    老人と伝書鳩

2009年08月16日 11時34分12秒 |  岬な日々


田んぼのあぜを一人の老人が杖を突きながら歩いています。
いつも見慣れた風景。

でも、ときおり、なんだか白いものがおじいさんの足元から飛び跳ねている。
おじいさんの足元は稲穂に隠れて見えないのです。
なんだろう。
最初は小さな犬かと思いました。
でも、小さな犬にしてはおじいさんの肩あたりまで跳ねているのです。


あぜ道が見渡せるところまで車が来ました。
おじいさんのほうを見ると、、、
なに? あれ。

小さな鶏のような鳥がおじいさんの杖にまつわるようにして一緒に散歩をしているのです。
よくよく見ると、鳩でした。


ピョンピョン(これは二足で跳んでいるころ)
ピョコピョコ(走っておじいさんについていこうとしているところ)
バサバサ(おじいさんに遅れそうになって、あわててバサバサとおじいさんの前まで飛んできたようす)

おじいさんは、歩調をえないで、ゆっくりゆっくり歩いてきます。
鳩は、そのおじいさんをしっかりと見ながら、前になり、後ろになりながら、ついてきます。
おじいちゃんになんかあったら、救急車を呼んでくるんだからねってでも、いいそうな様子でした。


見ていて頬がひとりでに緩んでしまいました。



「お散歩ですか、これ鳩ですよね」
「捨てられた伝書鳩を飼っているんだけど、散歩についてくるんだよね」

鳩は
「あんた誰?」って顔をしてこちらを見ながら、おじいさんとの会話を聞いていました。

犬と猫をたくさん連れて散歩
している人もいました。
山羊を散歩させている人もいました。
それは私もやった覚えがあります。
でも、鳩との散歩。
一度やってみたいですね。


おじいさん、鳩君、和やかな気持ちありがとうね。





そして、また、おじいさんは散歩を始めました。
鳩も、おじいさんについていきました。
ピョンピョン、 ピョコピョコ、 バサバサ