夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

ラナンキュラスとヨーロッパ史

2010年02月25日 07時58分47秒 |  あなたの鼓動、華


チューリップはもともとパミール高原やヒンドークシュ山脈あたりを原産とする花だったそうです。
オスマン帝国がイスタンブールを攻略し、そこでチューリップのバリエーションがたくさん作られるようになります。

それがヨーロッパにも紹介されて広まっていきます。チューリップの専門家であったクルシウスは1593年にオランダのライデン大学に招聘され、彼が集めたチューリップとともにオランダに移り住みます。

そのチューリップがオランダの裕福な商人達によって投機の対象としてさらに多くのバリエーションが作出されるようになります。

このときの投機、、、裕福な家族の成功例に刺激されて、それほど資金を持たない階層の人々までが参加するようになりました。彼らには新しい品種を作出し、売りに出すまでの資金の余裕がない。なので持っている資金を、球根ではなく、先物取引として投資したのです。現在の先物取引の原型ですね。
そして、あるとき、一大下落が起こります。
このあと、チューリップバブルは突然、消滅してしまうのですけど、品を替えて、ちょっと前の日本でも、そして最近のどこかの国でも似たようなことが起こっておりましたね。


ところでまだ、バブルが続いているころ、フランスやオランダ南部(今のベルギーなど)にはローマ教会の教えに反するキリスト教の一派があり、主に毛織物産業に従事しておりましたが、彼らは宗教的は迫害から逃れ、イギリスに渡ります。

その時に、繊維の技術だけでなく、この花への投機を持ち込むのです。
デュマの「黒いチューリップ」はまさにこの背景をもとに書かれたものです。

ところで、チューリップの話を延々としていますけど、この日記のタイトルはラナンキュラスではないかと思われている方もあると思います。
実は、日本ではチューリップへの投資熱に関してはよく知られているのですけど、その時の投資の対象となった花はもっとたくさんあるのです。
その一つがラナンキュラス。ちなみに他にはカーネーションやヒヤシンスなどもその対象でした。これらはフローリスツ・フラワーと呼ばれています。


砂糖の歴史の講演を聞いたことがあります。南米、中南米や、ヨーロッパ、アジア諸国の世界の各地の政治、経済の影響と、造船や航海の技術の進歩、、、それらが複雑に絡み合ったとても面白い講演でした。

一つだけのトピックに焦点を当てても、その背景となる社会や経済、政治などとの相互的な影響を見ていくと、裾野が思いもかけないほうへどんどんと広がって、面白いものですね。