夏休みのど真ん中・・・、やりたいこと、やらなければならないことは山ほどあるが、「何もしないのが本当の休み」と決め込んで、椅子に寝そべりとりとめなく読書しながら、いつの間にか居眠りをしていた。
ピン、ポーン、と来訪者を告げるチャイムが遠く聞こえる・・・、「うるさいなー」と無視しようとしたが他に出るものがいないようで已む無く立ち上がる。
運送屋が大きな荷物を抱えて立っているので、ハンコを押しながら荷物を受け取ろうとすると、宛名から差出人まで横文字だ。目をこすりながら受取人を読むと「SHUTOH 17-9-1 Kamitakaido Suginamiku・・・」とあるので自分に違いない。
読みづらい送り人の名前を何度も読んで判明したのが、昨年わが家に来たフランス人 ヤンニックYannick夫妻からだ。驚いて開けてみると
Dear TerukoSan and KazuhiroSan
We hope that you will enjoy those little things
typical hrom Provence
という手紙とともに、オリーブやヌガーなどのお菓子、ラベンダーの蜂蜜やさまざまな調味料の瓶詰がたくさん出てきた。その上、100頁に及ぶプロヴァンスの美しい写真集まで入っている。
昨年来、何度もフランスに誘われ、「フランスのどこに行きたいか」と問うて来るので、「もう一度リヨンに行きたい。その他、未だ行ってないパリと、プロヴァンス地方のブリュワリーを回りたい」と答えたので、彼らは早速『プロヴァンスの風物と食品』の数々を送ってきたのだろう。
この春、メールで「三週間の休みを取ってベトナム、カンボジアに行く。両国の情報を教えてくれ」などと言ってきたので、「私は未だ行ったこともない。情報など何も持って無い」と冷たい返事をしたままであったが、彼らは何か特別の親密感を持ってくれているようだ。
昨年、わが家に滞在していたセルジュ一家を浅草に案内した際、同じく来日していたヤンニック夫妻(セルジュ君と同じリヨンに住む友人)も行動をともにし、ついでだからその夜の晩餐に招待した。たったそれだけの間柄であるが、他国で一晩でも「普通の家庭に招かれ夕食をともにした」体験を、彼らは忘れていないのかもしれない。
世界はいよいよ狭くなってきている。このような友情はもっともっと大切にしなければならないのであろう。