前回、トルコの食事の貧しいところばかりに触れたが、全てがそうであったわけではない。私の印象では日を追って内容が良くなったと思っている。イスタンブール最後の夜のベリーダンス晩餐会(老舗レストラン“キャラバンサライ”)は、私には量が多すぎて殆ど食べきれないほどであった。何ともトルコ料理というようなこってりした料理が出てきたが、ベリーダンスに気をとられて手をつけないまま引き下げられたものもあった。
量といえば三日目のコンヤの昼食。『ピザ料理』というので、イタリアを思い出し何となく量を気にしていたのであるが、前2日の例があるので「トマトのピザ添え」かな、などと言ってタカをくくっていた。案の定、スープと共にチーズ乗せピザが1枚出てきた。結構大きいので私は腹いっぱいになったが、これをもって終わりではいかにもさびしい。と言ってメインディッシュとしてパスタの大盛りが出てきては敵わないなどと言っていたら、本当に出てきた。十枚ぐらい重ねられた本格的ピザが皿一杯出てきてホトホト参った。勝手の分からない者には、どうもチグハグでいけない。
次のカッパドキア洞窟レストランでは、立派なマスが一匹丸焼き(ソテー?)で出てきた。白インゲンのトマトスープともどもこの料理は美味しくて、私はここで初めて、出てきたものを全て食べた。四日目ともなってトルコの味に慣れた、ということもあったのだろう。
そしてイスタンブールに移り、既に書いたトプカプ宮殿レストランでの待望の『羊のケバブ』から、前述のキャラバンサライの料理と続いたのだ。
もう一つ、最終日の昼食(グランドバザールの近くの店)で、「トルコで食べたい酒の肴」にメモして行った『Kalamar Tavaカラマル タヴァ』(イカのリング揚げ)が出てきたのは嬉しかった。もう諦めていたのであるが「アラーの神は見捨てなかった!」などと勝手に喜び、写真を撮るのも忘れて食べてしまった。
こう見てくると、私は飲んだ酒ともどもトルコの食事にそれほどの不満はなかった。「食事を除けば素晴らしいツアーだった」というのが一般的意見だったようだが、私は、まあこんなものではないか、と思っている。
むしろ一番残念だったのは、酒と食を求めて街中を自由に歩き回る時間が無かったことである。