今月22日は、24節気の小雪であった。いよいよ雪が降り始める季節となったのである。12月7日が大雪で、22日の冬至を迎えて今年も終わる。
そういえば下旬に入るや寒い日が続き、あちこちに雪のニュースが飛び交った。自然は先人たちの言葉どおりに動いているのだ。もっとも今日の関東地方は最高気温17、18度で暖かい予報であるが。
寒くなるにつれ日本酒の強みが出てくると思っている。飲み屋に行っても「とりあえずのビール」など省略して、最初から「熱燗で頼む」などとなる。屋台などでゲソか何かを肴に飲む酒は当然「熱燗!」となる。鈴木真砂女の『熱燗や食いちぎりたるたこの足』という句を思い起こす時節なのだ。
もちろん、最近は純米酒を中心に味のある酒がたくさん出てきたので、きんきんの熱燗ではなく「あまり熱くしないでくれ」などと言いながら、いわゆる「ぬる燗」を所望することになるのであるが。
その要望に応えうる酒は、米の酒らしい“強い酒”だ。もっと言えば“ごつい酒”と言ってもよい。造りからすれば山廃純米酒で、この時期になると思い起こすのが『菊姫』だ。菊姫は、能登杜氏で山廃造りの第一人者、能登四天王の一人とうたわれる農口尚彦杜氏が長く勤めた蔵。新潟酒などが端麗辛口に走る中でも、一貫して日本酒らしい、つまり米の味を前面に出した強い酒を造りつづけた蔵だ。農口尚彦杜氏は菊姫を定年退職した後、同じく石川県の鹿野酒造に請われて、今なお『常きげん』という銘酒を造りつづけている。
一昨日、酒好きの友人と新宿のY店で『菊姫“鶴乃里”』を飲んだ。これはもはや農口氏の酒ではないが、また菊姫にしてはきれいな酒であるが、しかし元来の力強さを十分に感じる酒であった。同席した娘に味見させると、「むっ! これは“お酒”だねえ」と言ったが、そんな表現が当てはまる酒だ。
小雪から大雪にかけての酒、としておこう。