第一泊は北三陸海岸では有名な羅賀荘。後で述べるが料理も美味しく、リアス海岸に位置する佇まいも麗しく期待に違わぬものがあったが、何よりも期待したのは太平洋から上る日の出であった。
朝に弱い私は、日の出の美しさをあまり見ていない。若い時は正月に高尾山に登り初日を拝んだが、それとて「典型的な日の出」…つまり水平線に上る太陽などは見た経験はない。
夜に強いためか、夕日はいくつか見ている。(夕暮れと「夜に強い」とはあまり関係ないと思うが) 一番美しかったのは、秋田県男鹿半島の西端「入道崎」の日没だ。これは地元の人も珍しいと言うぐらい、全く雲の無い水平線に“どろどろと溶けるような大きな太陽”が沈んでいった。
私はひそかに、そのような太陽が昇っていく様を期待した。しかしそう甘くは無かった。「あなた、そろそろ日の出よ」というワイフの言葉に眠い目をこすりながら起き出す。カメラを手に窓に向かうと、残念ながら水平線は雲がたなびいていた。中天は晴れ渡っているが、必ず水平線には雲があるのだ。日中になると水平線に雲のあることは少ないが、日が昇り、日が沈む時間はほとんど雲が覆うのは、単なる自然現象か、それともアポロの恥じらいを示しているのか?
しかし、恥じらいを隠す雲の存在が、その日の“羅賀荘の日の出”を美しく装ってくれた。私たち2人は、日の出時刻5時7分を挟む4時45分から5時15分までの30分を、たっぷり楽しんだ。2,30枚は撮った写真の中から、典型的な写真だけを掲げておく。