友人T氏が、「美しい日本の歩きたくなる道500選」を完歩した。
この「500選」は、社団法人「日本ウォーキング協会」が、北海道から沖縄にいたる全国から“美しい道”500を選んだものらしく、それを多くの愛好者が歩き続けているらしい。その道は全国47都道府県に、ほぼ均等に選ばれており、北海道に15、沖縄に11などこれを完歩するにはそれこそ「全国を駆け巡る」必要がある。しかも、その地のウォーキング会が主催するものに参加し、それぞれを「完歩した証明」をもらわなければならない。いつでも行きたいときに歩けばいいというものでもない。
わが友T氏は、2006年1月16日からこれに挑み、5年近くをかけて去る9月16日、新潟寺泊の「良寛さまと歩くみち」をもって、見事500道を踏破した。
大変な快挙である。平均しても一年に100道、月に8から10の道を歩かなければならない。費用とてバカにならない。東京近郊なら電車代だけで済むが、遠くなるほど料金がかさむ上に宿泊代や食費を必要とする。北海道や九州、沖縄とかとなれば飛行機代が避けられない。氏は、新幹線と宿泊代を避けて夜行バスにするなど、またビジネスホテルを諦めてカプセルホテルにしたことなど、涙ぐましい経験を沢山話してくれた。
現在正確な決算をやっているようだが、5年間これに費やした費用は約400万円に上るという。1道平均8000円だ。それが贅沢なのか節約の極みなのか…、それを分析してみたいとも言っていた。因みにもっと早くから長年をかけて踏破した人で、総費用2千万円という人もいるそうだ。各地のウォーキング会も整備されておらず、効率的な歩き(当地に行ったら出来るだけ多くの道を回る)が出来なかったことによるのだろう。
こうなってくると、「ウォーキング」というのも高価な趣味である。私は年1回の海外旅行をやってきたが、5年間5回の費用は、T氏が費やした400万円の半額に満たない。もっとも、5回と500道では数に於いて比較にならないが。
氏も節約ばかりしていたわけではないらしい。五島列島の道を歩き終えて長崎に向かう船の中で良質の焼酎を買い込み、歩き終えた安堵感もあってその四号瓶を船の中で飲み干したらしい。さすがに酩酊し、前後不覚になってようやく宿にたどり着いたという。「船に酔ったのかと思ったら酒に酔っていたらしい」というのも楽しい話だ。
T 氏の快挙に改めて乾杯! あまり祝っているとこちらが酔いつぶれるが……
500道完歩を喜ぶT氏