昨日の福岡国際マラソンには興奮した。すべては、来年の世界選手権代表をかける川内選手に期待してのことであるが、内心はほとんど期待をしていなかった。直前のけが(右ふくらはぎと左足首ねんざ)が報じられていたことと、ここ1、2年不調が続いていることから、多くを期待することはできないと思っていたからだ。
周囲には無理な出場を危ぶむ声も多かったと聞くが、彼は、「代表に選ばれることよりも、闘うことが目的」と、出場を選んだ。マラソン選手として、全く走れない状況でない限り、全力を挙げて挑み、闘うことが義務付けれている、というのが彼のスポーツマン精神であるようだ。もちろん、ファンの期待に応えることを含めて。
結果は、ペースメーカーが離れた22キロ以降、積極的にアフリカ勢につき、し烈な駆け引きを交わしながら、優勝した昨年世界選手権の銀メダリストツェガエ(エチオピア)に22秒差、本大会三連覇を狙うマカウ(ケニア)に13秒差で3位に入った。2時間9分11秒、残念ながら9分を切れなかったが立派な記録である。
レース後、嗚咽を繰り返していたが、かなり時間をおいて、両足をひきずりながらインタビューに応えた。そこでも、「周囲の応援に励まされ、がんばれれてよかった」と、涙を抑えきれなかった。悪条件を自覚しながらも、スポーツマンとして「戦い抜いた」姿がそこにあった。
あといくつかの選考レースがあるので、その行方は分からないが、今季のマラソンはこれですべて終わった、という感さえあった。川内選手、感動をありがとう。
12月5日付毎日新聞より