今年前半の世界政治の注目点は、フランスと韓国の大統領選挙であったであろう。結果的には、どちらも平穏な選択がなされたといえるのであろうが、争われた問題の根深さは深刻だ。
まずお隣の韓国であるが……。
韓国は、東洋にあって日本に次ぐ経済成長国とみられてきたが、その内実は想像以上にいびつなものであったことが、このところ明らかになっていた。企業構造自体がピラミット型でなくいびつなようだ。一部大企業がトップに聳えるが、次を支える中企業がなく一挙に零細企業となり、それらは雇用力を持たない。若者たちの夢はトップ企業に集まるが、その狭き門はその夢を受け付けない。にもかかわらずそれを目指す厳しい受験競争、教育競争が続く……。
この格差社会とそれが生み出す貧困が、おおい難き閉塞感を生み、今回選挙で9年ぶりの革新政党を選んだ。選ばれた文在寅(ムン・ジェイン)氏は、朝鮮戦争時代に北朝鮮から逃れた難民で、極貧の中から立ち上がった政治家として、格差や貧困は知り尽くしているだろう。従って、「戦争や核競争をしている暇などない」と、内外に融和を呼びかけているが、議会に確固とした基盤を有しているわけではなく、果たしてその思いを実現していくことができるだろうか? 大いなる期待を抱くが。
フランスはどうか? 大先進国、爛熟期にあるフランスは、もはや飛躍的な成長力を発揮するバイタリティはなく、韓国と同じく青年層の高い失業率に悩まされ、折しも発生した難民問題を機に、移民拒否を旗印にする排外的極右「国民戦線」が台頭、党首ルペン氏の支持率は一時トップを伺うほどであった。
さすがにフラン人の良識は、ルペン氏に大差をつけてマクロン氏を選んだが、マクロン氏はまた、確固とした基盤を持たない中道派で、その主張に新自由主義的思想がみられることから、貧困と格差の解消を求める労組などから早くも反対の声が挙げられている。決選投票で11.5%の白票・無効票が投じられたことも、フランス国民の閉塞感が現れているといえよう。
洋の東西における大統領選挙で、図らずも貧困と格差の問題が改めて問われている。この問題は、単に南北問題や低開発国の問題ではなくなり、日本を含めた先進国の問題になってきた。経済発展、裕福な生活の実現を旗印にしてきた資本主義のあり方が、今ほど問われているときはあるまい。