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「集団自決訴訟」は、昨年の大阪地裁で被告側勝訴の判決が出て、現在原告が上告中であるが、今年に入ってから最高裁の動きは見られず、しばらくこう着状態が続くと思われていた。
ところが5月に入ってから沖縄を震源地にした激震が走り、その余波は一気に全国を駆け巡ることになる。
その激震の経緯を追うとこうなる。
①5月11日、『うらそえ文藝』で編集長の星雅彦氏とドキュメンタリー作家の上原正稔氏が、その集団自決特集の中で、「集団自決に隊長命令はなかった」「沖縄タイムスは謝罪せよ」と告発した。
②6月9日、沖縄マスコミの黙殺に対抗して、星、上原両氏は沖縄県庁で記者会見を開く。
③県内マスコミが黙殺を続けるも、産経新聞と世界日報が「うらそえ文藝」の告発を報道する。
④6月中旬から下旬にかけて琉球新報と沖縄タイムスが、夫々宮城晴美氏と平敷武蕉氏を使って「うらそえ文藝」に反論を試みるが、そのピントはずれの論旨に良識ある読者の失笑を買う。
当日記でも宮城氏、平敷氏の両論に反論しておいたので、御一読を乞う。
⇒続・世にも不思議な宮城晴美の論文 木に竹を接ぐ目くらまし論
⑤7月に入るや、本土マスコミの週刊新潮、SAPIOが続々とご両人の告発を記事を掲載し、そしてチャンネル桜の映像取材により、「うらそえ文藝」の告発はネットを通じて一気に全国的に知られるようになる。
⑥その間、沖縄二紙が沈黙を守れば守るほど、沖縄マスコミの異常さが印象付けられる結果になった。
沖縄二紙があれほど致命的ともいえる告発を受けながら、まともに反論できないのには理由がある。
その理由とはご両人の告発は真実であり、沖縄二紙が主張してきた一連の主張が間違いであるからである。
「うらそえ文藝」の真実に対して捏造記事で真正面から立ち向かったら、新聞社の巨大組織といえども木っ端微塵に粉砕され、新聞社としての経営基盤さえ揺るがしかねない。
だとしたら、沖縄二紙が取りうる最良の手段は、ただひたすら沈黙を守る以外にない。
このように当日記が断定的に、『うらそえ文藝』の論調を肯定すると、きっとこのような疑念を持つ人が出てくるだろう。
「集団自決訴訟では、一審、二審とも原告敗訴ではないか」
「上告中とは言え、断定し過ぎではないか」と。
■高裁判決が認定したこと■
ここらで大阪高裁判決の意味と『うらそえ文藝』の主張を比較検証するとこうなる。
①大阪高裁判決では「集団自決で両隊長が命令を下した」という被告側の主張は、事実上否認された。
より正確に記すと、両隊長が集団自決の命令を下したということは証明できなかった。 その意味では、両隊長の名誉は回復されたことになる。
②高裁で原告側が敗訴したのは、『沖縄ノート』などの出版停止と、大江健三郎、岩波書店の原告への謝罪等が棄却されたことである。
■教科書検定が認定したこと■
「集団自決訴訟」とほぼ平行して行われた「教科書検定意見撤回を求める」一連の運動が沖縄マスコミの扇動の下に全県的に行われ、
2007年9月29日に行われた「9.29教科書検定意見撤回を求める県民大会」は、実数は多く見積もっても2万前後であるのに、11万人という数字の底上げまでして政府に圧力を加えるという恥ずべき行為に及んだ。
11万人という捏造された数に政府首脳も一時は動揺したが、数で歴史の記述を決める愚かさを察した文部省は、結局「11万人集会」の不当な要求を拒否した。
そして教科書から「軍命令」は削除されるとiうことで決着した。
こうしてみると、司法である大阪高裁の「隊長命令」の判決と、行政サイドの「教科書検定意見」の「隊長命令」への判断は一致しており、両隊長の命令を事実上否定した結果になっている。
だとしたら、高裁では原告(両隊長)が敗訴したにも関わらず、『うらそえ文藝』で星、上原両氏が主張する「隊長命令はなかった」、「沖縄タイムスは謝罪せよ」という論旨は、司法によっても、文部省検定意見によっても正当であると認知されたことになる。
「うらそえ文藝」の主たる主張は大江・岩波に出版差し止めと謝罪を要求しているのではない。
『鉄の暴風』以来現在も続いている沖縄二紙の「隊長命令はあった」という論調に異議を唱えているわけであり、
県民を騙し続けたことも含めて沖縄紙に「謝罪せよ」というその主張は、大阪高裁も文部省検定も認めたことなのである。
では、ごく当然の主張をしているはずの『うらそえ文藝』が何ゆえ衝撃的なのか。
それは沖縄二紙を中心にしたマスコミが、『うらそえ文藝』の主張が、あたかも大阪高裁や教科書検定意見で否定されたような印象操作をして、県民は「隊長命令はなかった」という真実を知らされていないからである。
真実の前には沖縄二紙がいかに反論しようとも勝ち目はない。
しかもネットの普及により、賢明な読者は今までのように、沖縄二紙の歪曲報道に騙されることはない。
従って、沖縄二紙が現在取りうる最良の手段は、黙殺する以外にないのである。
沖縄二紙は,自らは社説などで反論することなく、数多くいるはずの沖縄戦研究家や大学教授などを使っての正面からの反論を敢えて避けた。
そして「女性史研究家」とか「詩人」という、いささかピントの外れた論者に、幻惑的文章で反論させたことは、出来るだけ議論を避けたいその焦りが垣間見れる。
いくら修辞や幻想に満ちた文章も、その恣意的修辞部分を取り除けば何の論理も残らない。
そこにあるのは無残な強弁のみの抜け殻である。
■最後の手段は?■
佐藤優氏が小林よしのり氏と「戦争」を始めたとき、佐藤氏は小林氏と正面から戦うことを避け、出版社に圧力をかけるという卑劣な手段で小林氏の攻撃を避けた。 事実上の敵前逃亡である。
小林よしのり氏は佐藤氏の卑怯な行為を指して「言論封殺魔」と命名した。
沖縄二紙も「佐藤vs小林」論争に見倣って『うらそ文藝』との正面からの論争を避け、「沖縄版・言論封殺魔」に変身するつもりなのか。
いや、他に取る手段は目下のところ、見出し得ないのかも知れない。
【付記】
当日記が「うらそえ文藝」の「隊長命令はなかった」という主張を真実だと断定する根拠は、大阪高裁判決と検定意見だけではない。
非常に明快かつ単純な根拠による。
集団自決の証言者は多数いるが、「隊長命令があった」と客観的検証に耐える証言者は一人も存在せず、一つの証拠も出ていないというのがその根拠である。
◆
「11万人集会」のテーマである「教科書検定意見撤回」が否定された悔しさを琉球新報、沖縄タイムスを夫々次のように報道している。
結局「11万人集会」は空騒ぎに終わったことになる。
「集団自決」の記述後退 06年版中学教科書(2009.7.31)
【東京】中学校の歴史教科書の沖縄戦の記述に関し、1997年版では多くの教科書が掲載していた「集団自決(強制集団死)」に関する記述について、現行の2006年版の大半の教科書では出版社側によって検定前の申請時点で削除するなど、沖縄戦の記述や表現が後退していたことが30日分かった。中学校教科書の06年版の検定実施は04年度。06年度に高校教科書検定で「集団自決」の軍強制の記述が削除される前から、出版社が自主規制で軍の強制によって「集団自決」が行われた事実をあいまいにする動きがあったことが明らかになった。
「子どもと教科書全国ネット21」(俵義文事務局長)など5団体が30日、東京都の文京区民センターで行った会見で発表した。俵氏は「97年版の教科書は事実に基づいた記述が行われていた。『新しい歴史教科書をつくる会』が戦争を美化した教科書を執筆するなど沖縄戦の事実を改ざんしようという流れがある中で出版社の自主規制で記述が変えられた」と指摘した。
中学の歴史教科書は新しい学習指導要領のもとで来年4月から新たな教科書検定が始まるため、現在は原稿の執筆段階に入っている。このため5団体は7月上旬、中学、高校の教科書で「日本軍の強制」の記述復活など沖縄戦記述の改善、充実を各出版社と執筆者に文書で求めた。現時点で返答はないという。5団体は各社の対応を確認した上で今後の運動を検討するという。
教科書出版社5社6冊の中学教科書中、97年版にはすべて掲載されていた「集団自決」の記述が06年版では2冊で削除され、3冊は「集団自決」の記述自体は残ったものの、誰が「集団自決」を迫ったかという部分があいまいにされていた。1冊は97、06年版ともに「強制されて集団自決した」と同じ記述になっている。
日本出版労働組合連合会が24日、文部科学省に対し、高校日本史教科書の検定意見の撤回を求め要請した。連合会によると、文科省の担当者は「検定意見は学術、専門的な観点で適切に行われた」とする見解を繰り返し、検定意見の撤回は否定したという。(琉球新報)
◇
沖縄タイムス 2009年07月31日 社会
軍の強制記述求める 「集団自決」/東京で5団体 教科書会社に【社会】
《要請書を送付したのは「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」「大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会」「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」「子どもと教科書全国ネット21」と出版労連の5団体。》
◇
「軍の強制を記述する要請書を送付した団体がこのようなイデオロギー塗れの団体であるとは実に恐ろしいことではある。
歴史教科書の記述は、歴史専門家の検証・研究の結果に拠るべきであり、
左翼新聞に扇動された「世論」で決めるべきではないことは論を待たないと思うのだが、
このような見出しの記事を平気で書く新聞の厚顔無恥には今さらながらあきれ返る。
「世論で記述復活を」 歴史教科書めぐりシンポ(2009.3.16)
世論で歴史教科書を書くって?
恥ずかしい!
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