★慟哭(どうこく)
滋賀県、医者になるよう9年もの間、医学部志望浪人を強要され、母親を殺害した娘。
そして殺した母の死体をバラバラに切断し、遺棄した長女の裁判。
2018年4月、桐生しのぶさん(58歳)の切断された遺体が滋賀県の河川敷で見つかった。滋賀県警は大学病院で看護師として働き始めていた31歳の長女・桐生のぞみを殺人で逮捕した。
桐生のぞみ、
一人娘
父は忙しい会社員で社員寮に別居。
それ以来、のぞみは母と2人暮らし。
そして結果的には病院勤務の看護師となった。
母は教育ママで娘が幼い頃から、学習教材を買い与え、将来は医者になることを切望した。しかし中高では成績が伸び悩んだが、母は願望を曲げず、国立大の医学部に進学するよう要求した。
ところが、のぞみは不合格だった。
だが母は、親族に対して「合格した」と嘘をつき、のぞみにも従うよう求めた。
束縛はエスカレートした。母は自由な時間を与えないように一緒に入浴するよう求めた。携帯電話は取り上げられた。「のぞみ」は3回にわたり家出をしたが、母が手配した探偵や警察に見つかり、家に連れ戻された。
そんな浪人生活が実に9年間に及んだという。
その後、「のぞみ」は看護大学に進学、大学2年の終わりごろ、助産師の試験に不合格になったのを機に、母の束縛は再燃した。「のぞみ」が母親の許可を得ずにスマホを隠し持っていたことが分かると、庭で土下座させ、その様子を撮影した。
スマホはブロックで叩き壊し、所持を認めていたもう一つの携帯電話に「ウザい、死んでくれ!」とショートメールを送って罵倒した。その後、母は夜通し怒鳴り続けた。「のぞみ」の我慢は限界に達していた。
2018年、ある夜のことだった。
その日深夜、就寝前の母の体をマッサージした際、うつぶせの母の首をもみ終えると、母は寝息を立てていた。
「のぞみ」は隠していた包丁をそっと取り出し、母の首を刺した。
「痛い!」という母の声を聞いて怖くなったが、もう1、2回刺した。そして静かになった。 「モンスターを倒した。これで安心だ」「のぞみ」は、自身のツイッターにそう呟いた。
口から血を流し動かなくなった母を横目に、ずっと見たかったキムタクのテレビドラマ「身辺警護人」を見た。
肩の荷が下りたような感覚になっていた。
死体に毛布を掛け、その日は寝た。
翌日、母の遺体をのこぎりなどで切断し、両手と両足を燃えるごみに出し、胴体はバケツに入れて運び、守山町の河川敷に捨てた。自宅から約250メートルしか離れていなかった。
法廷で「のぞみ」は、殺害を決意したきっかけは、スマホを叩き壊され、助産師試験に落ちた際に「裏切り者」「嘘つき」と徹夜で叱責されたこと、と述べた。
2021年1月、大阪高裁で言い渡された判決は、懲役10年。
滋賀地裁の一審判決15年から減刑された。
そして2週間後、刑が確定した。
お母さんはなぜ医者になることにこだわったのですか?
「母はいわゆる教育ママでした。公立高校が進学校とされて、そこから東大や国立医学部に行くのが滋賀県民のエリートコースだと言い聞かされていました。母はそのレールに私を乗せようとしました。母は高校卒業でした。最終学歴が高卒であることが悔しいと何百回も聞かされました。学歴コンプレックスがあったのだと思います」
なごり雪、風の冷たさ、芽の息吹、何が惜しくて生きるのか (じゅうめい)
(じゅうめい)