高橋克典の“法律 だいすきになーれ+ひとり言α”・・・・・ まずは“宅建資格”から

法律系資格を取得しようとする場合、まず民法の勉強はかかせませんね。さらに、好きになって得点源にぜひしたいものです。

すきま時間で・R2年行政書士民法”問32・同時履行の抗弁権・・・。

2021-05-15 05:57:02 | 司法試験・司法書士・行政書士問題
すき間時間でR2年行政書士試験の民法を丁寧に分析“よーくわかる”問32・同時履行の抗弁権・・・。

ここも法律的なセンスを磨く上で重要な項目です。細かい知識が無くてもできると素晴らしいです。

ここは公平の見地から、同時につまり引き換えに主張できるのか、そうではなく一方が先に履行するのがむしろ公平なのかです。

・・・・・・
問32 民法 債権
同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。
1.双務契約が一方当事者の詐欺を理由として取り消された場合においては、詐欺を行った当事者は、当事者双方の原状回復義務の履行につき、同時履行の抗弁権を行使することができない。

2.家屋の賃貸借が終了し、賃借人が造作買取請求権を有する場合においては、賃貸人が造作代金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができる。

3.家屋の賃貸借が終了し、賃借人が敷金返還請求権を有する場合においては、賃貸人が敷金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができる。

4.請負契約においては仕事完成義務と報酬支払義務とが同時履行の関係に立つため、物の引渡しを要する場合であっても、特約がない限り、仕事を完成させた請負人は、目的物の引渡しに先立って報酬の支払を求めることができ、注文者はこれを拒むことができない。

5.売買契約の買主は、売主から履行の提供があっても、その提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権を失わない。
・・・・・・

肢1ですが、「妥当でない」ですね。
なぜこれが問題となるのか、もともと、この抗弁は、「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる」というものです。

すなわち、(双務)契約があることですが、ここでは詐欺で取り消されて契約がなくなっているのです。
解除の場合も同じですが、解除の場合には同時履行を準用しますときちんと条文で手当がなされていますが、取消しの場合にはないのです。本音は、(国会早く直せ)改正しろよとは思います。

そこで判例は、「売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である」として、解除でもできるのなら、取消の場合でも同じでいいのではないかと妥当な判断をしています。

肢2ですが、これも「妥当でない」ですね。
まず、造作買取請求権を行使すると、あたかも売買契約が成立したと同じになります。ですから、造作の引渡しと代金の支払いは同時履行となります。

本肢は、さらに建物の賃貸借契約が終了していますので、賃借物である建物の明渡しも造作の引渡しとセットにしていいか、という問題なのです。問題点がわかりましたか。

判例は、「造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない」としていますが、これは建物から造作は容易に分離できますから、セットにするのはおかしいということです。

肢3も、「妥当でない」ですね。宅建試験では頻出事項の内容です。
敷金は、賃借物に発生した全ての債務を担保するわけですから、明け渡してチェックしないといくら敷金から引いていいかわかりません。
ですから、家屋明渡債務が先履行で、(その後家屋を調査して)、金額が決まったら敷金返還債務が発生します。

判例では、「賃貸人は、特別の約定のないかぎり、賃借人から家屋明渡を受けた後に前記の敷金残額を返還すれば足りるものと解すべく、したがって、家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではない」といっています。

肢4は、「妥当でない」です。
請負の場合には、請負人は、まず仕事を完成させて、さらにその完成物を引き渡します。
注文者は、報酬を支払うのですが、仕事の完成が先で、それに対して報酬を支払います。もちろん報酬支払義務と仕事の目的物の引渡しは「せいの」で同時に履行します。

仕事完成義務と仕事の目的物の引渡、それと報酬支払義務の関係が理解できてないといけません。しっかり読み取ればいいのか、と思いましたね。

肢5が、「妥当である」ということで正解となります。
ここでの問題意識は、同時履行の抗弁権にした方がいいのは、契約を全うしようとする場面だからです。一度、履行の提供をしたからそれ以降はしなくてもいいとなると一方しかおわらないことも生じ、それではなかなか終わらないので、それで一発で終了させた方がいいですね。
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるのです。やるなら、一回で終わらせたいのです。

一方、解除しようとするなら上記と異なり、自分が一度きちんと提供していれば、相手方の同時履行の抗弁権を防いでいるので、その提供が継続していなくてもいいのです。

解除するのではなく契約の目的を達成しようとするのなら、判例は「双務契約の当事者の一方は相手方の履行の提供があっても、その提供が継続されない限り同時履行の抗弁権を失うものでない」としているのです。

意外と正答率が悪いのが気になります。復習をしっかりやり、そのときには問題意識が何かをつかんでくださいね。

では、また。



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高橋克典
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