二宮敦『最後の秘境 東京芸大 天才たちのカオスな日常』があったので、手に取って読んでしまった。以前、読んだことのある感覚は残っていたのだが、それでもおもしろいので読んでしまった。物忘れが厳しくなっています。認知にきているのかな。目もかすむし、二度目のほうがある程度、昔読んだ感覚があるので、目がかすんでも読み飛ばしにストレスがないのがいいのかもしれない。いずれにしても、眼科に行かなければと思っている。
ブログを点検してみても、この本のことは書いていないので、紹介しておこう。ようすぐに、東京芸術大学の学生さんたちのインタビューでそ「芸才の大学の日常が綴られているということだ。執筆のきっかけとなったのが、作者の妻がこの大学の学生で時々素っ頓狂なことをすることだった。目次は次の通り
不思議の国に密入国/才能だけでは入れない/好きと嫌い/天才たちの頭の中/時間は平等に流れない/音楽で一番大事なこと/大仏、ピアス、自由の女神/楽器の一部になる/人生が作品になる/先端と本質/古典は生きている/「ダメ人間製造大学」?/「藝祭」は爆発だ!/美と音の化学反応
この見出しだけだとなにもわからない。想像できるのは「ダメ人間製造大学」くらいかな。大いなる無駄、というか度量の深い文化というか、自由というか・・・もともとは良妻賢母の伝統を受け継ぐ中堅の女子大学につとめるものとしては、このような世界があることを女子学生さんたちにも触れてほしい。とはいえ、この東京藝術大学も、美校と音校とはまったく別の日常生活原理が働いているという。美校の自由さに対して、音校は徒弟的な関係、教員と学生の人間関係の在り方がかなり違うし、学生の日常生活も異なっている。「音楽」は「楽」でもないような、東京芸術大学の音楽を出た人たちと接すことがあるが、ちょっとめんどくさい。
しかし、本書は、美術にせよ音楽にせよ、それぞれが突き詰められ、それらが統合され、新しい世界をつくっていくその種とその土壌、いってみればカオスなのだが、それがこの大学にあることの一端を示している。
2014年のインタビューだから、5年以上たっているが、この人たちはいまはどうなっているか?また、コロナ禍のなかで、いま、東京藝術大学に従前のカオスはあるのか? 国立大学法人化されて第3期も2021年度でおわろうとしている。教養や文化を軽視する政治家が、お友達優遇の政権を継承しようとしている今日、それに抗して、忖度なしに本音で人間性を研ぎ澄まそうという芸術のありようを見据えて、人間性の解放とそれをはぐくむ土壌が広がることを願ってやまない。