みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

ひなたぼこ、おちばみち

2006年01月15日 | 俳句・短歌
ひよこ組渡り廊下にひなたぼこ
(静岡 伊東 弥生)

日向ぼこ父の座したるその場所に
(富山 鳥島 博森)

銀杏散る平家没する日のごとく
(千葉 松本 好勝)

風船の青き鯨が夜祭の藍深みゆく天にたゆたふ
(横浜 石塚 令子)

懐かしき煙草の香り落葉径
(東京 家泉 勝彦)

椿咲く銀河のなかに銀河あり

麦秋や星を見ながら星に寝る

崑崙(こんろん)の星の夜を知る海鼠(なまこ)かな
(以上3句、五島 高資 句集「蓬莱紀行」より。崑崙は昔、中国で西方のあると信じられた伝説の山)

星空のいつくしきかも
おのづから涙あふれつ国破れたり
(北杜夫)
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「ひよこ組」の句。幼稚園だろうか?微笑ましい光景。「ひよこ」と「ひなたぼこ」の「ひ」重なりも良い。
「日向ぼこ」の句。父を懐かしむ思い、父と同じ場所で日向ぼこをする齢に達した作者の歳月の流れが、うまく詠み込まれてる。
「銀杏」の句。一気に散ってゆく銀杏と平家、上手い組み合わせ。銀杏の葉の形は、歴史を感じさせる扇の形に通じている。格調も高い。
「風船」の歌。「藍」とか「たゆたふ」という言葉に弱いのだ。夜空に浮かぶ鯨は、少しユーモラスで、幻想的でもある。青家~藍~黒の配色もきれい。
「懐かしき煙草」の句。「おちばみち」と読むのだろうか?温かくて詩情を感じる良い言葉。煙草の香りには、良い煙草の香りと嫌な煙草の香りがあるように思う。ここではもちろん良い香りの方。
「椿」「星」「崑崙」の句。解説にもあったけど、まさに「気宇壮大」。たった17文字で宇宙に挑む心意気が愉快ではないか!
「星空」の歌。どくとるマンボウ航海記の北杜夫氏が若かりし頃、終戦の折に詠まれた歌。涙に込められた万感の思いが胸を打つ。
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日曜日の日経新聞はけっこう楽しみ。川上弘美さんの、あいかわらず「まごまご」したエッセイも楽しかったけど、俳句、短歌も良いと感じるものが多かった。今日はたいへん暖かく、手の調子もいいので、久しぶりにピアノも触る。でも無理は禁物なり。
コメント
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