判決の一部
・・原告らに対する厳重注意の理由とされた授業がされた当時、それらの授業が学校指導要領等に反するものであり、本件養護学校の児童生徒の発達段階を踏まえないものであることがあったとはいえず、むしろ、被告都教委が作成した「性教育の手引き」の記載には、それらが学習指導要領に反するものではないとの誤解を生じさせる部分もあった。
被告都教委は、平成14年11月ころ以降に被告都議らから指摘を受けるまでは、本件養護学校等における性教育を学習指導要領等に違反するとして問題視した形跡がなく、本件養護学校の養護教諭らを講師に招いて開かれた校長会及び教頭会の研修会を共催するなど、評価をしていた。
本件厳重注意は、本件性教育という授業内容そのものが不適切であることを理由とするものであるところ、性教育は、教授法に関する研究の歴史も浅く、創意工夫を重ねながら、実践実例が蓄積されて教授法が発展していくという面があり、教育内容の適否を短期間のうちに判定するのは、容易ではない。しかも、いったん、性教育の内容が不適切であるとして教員に対する制裁的扱いがされれば、それらの教員を萎縮させ、創意工夫による教育実践の開発がされなくなり、性教育の発展が阻害されることにもなりかねない。
性教育の内容の不適切を理由に制裁的取り扱いをする場合にはこのような点についての配慮が求められる。
(略)
被告都議らによる指摘を受ける前には、抽象的に学習指導要領及び児童・生徒の発達段階に即した指導を行うべきことなどを通知するにとどまり、「性教育の手引き」を改訂するなどして上記機会を与えることをしないまま、原告教員らに対して
厳重注意をするに至ったものであり、そのような被告都教委の行為は、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権を濫用したものとして、国家賠償法上違法であり、被告東京都には、それによって名誉感情を侵害された上記原告らに生じた損害を賠償する責任がある。 |