●『トガニ 幼き瞳の告発』原作者、「現実はもっと酷かった、加害者たちの態度には愕然」
news.livedoor 2012年07月31日10時15分 / 提供:Hot Trash.com
韓国の聴覚障害者学校で実際に起きた性的暴行・虐待事件を描く『トガニ 幼き瞳の告発』、その原作者・孔枝泳(コン・ジヨン)氏が来日。
韓国全土が震撼した事件を記す作業の苦悩を明かすとともに、取材過程で知った加害者たちの非人間的なおぞましい所業、そしてかりそめの反省さえなく被害者を否定する理解不能な態度に愕然としたことを打ち明けた。
昨年韓国で460万人以上の観客が戦慄した本作は、ある聴覚障害者学校で2000年から6年間、校長や教職員が複数の生徒に性的虐待を行なったという現実の犯罪を扱った衝撃作。
映画は事件を目撃した美術教師イノ(コン・ユ)の告発によって進行するが、続々と暴かわれる悲惨な事件の数々はショッキングで残酷だ。
ジヨン氏も「書いている間は爽やかな気持ちではなく、体調も優れなかった」と打ちのめされたそうで、「世間では性暴力、わいせつな行為と簡単な表現をしますが、その言葉の中にどれほどの重み、業、傷があるか。最大限に上手く読者に伝えたくて、表現に気を使いました」と執筆中の苦労を明かす。
それでも小説化はごく一部の例だそうで、「現実はもっと酷かった」という事実に言葉を失う。
執筆にあたっては被害者のみならず、加害者の取材も敢行した。
「ある事件が起これば“観る立場”によって見方が異なるで、ある意味“もっともな理由”を期待していました」。
すなわち互いの言い分を公平に聞いて、事件の本質に迫ろうとした。
ところが、応じた加害者たちは、およそ期待とはほど遠い、常識では計り知れない回答を繰り広げた。
「月並みの弁明さえなく、子どもたちは真相を話していない、性的に乱れていたというウソばかりを繰り返していました。愕然としました。巧妙な言い訳をするかと思えば、それさえなかった。あまりにもレベルが低くて、悲しくなりましたね」。
偽善と倒錯のるつぼ(トガニ)と化した学園では、2005年の事件発覚後も加害者は処罰を受けず、教壇に立ち続けていた。
本作の公開後、この信じがたい現実と加害者を罰せない司法制度に韓国全土が敏感に反応。“トガニ法”と呼ばれる改正法が施行され、映画にも登場する前・行政室長に対して懲役12年の判決が下るなど、国家・社会を動かす一大ムーブメントに発展した。ジヨン氏は自身のツイッターで、「犯した罪(の極悪さ)を考えると懲役12年では足りないくらいだが、求刑よりも重い刑になってありがたい」と想いを発したが、弱者への虐待は日本でも連日報道されている日常的な問題で、対岸の火事と他人事ですましてはいてはダメだ。映画が告発する事件を冷静に受け止め、同様の悲劇が繰り返されぬように努めねばなるまい。
映画『トガニ 幼き瞳の告発』は、2012年8月4日(土)より、シネマライズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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