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てらまち・ねっと



 昨日の最高裁判所大法廷の判決は興味深い。警察が個人の車などに勝手に発信器を取り付けて、行動を監視する手法の是非。
 「尾行」などはドラマでは日常的に流している。「盗聴」もおかしなこと。監視社会としてのシステムが強化されていく方向にあって、すくなくとも、当局の手法に抑制的に対処することは重要だと思う。

 どんな事件か。判決前の13日の中日の記事には、次のようにある。
 ★≪GPS捜査、令状必要性は プライバシー争点、最高裁初判断へ/プライバシーを無断でのぞかれていたと「気持ちが悪くなった」。逮捕後、共犯者以外の知人らの車にも発信器が付けられていたことも判明。事件とは無関係の女性の車にも付けられていた≫

 気持ち悪いこと極まりない。・・・昨日の最高裁大法廷の判決そのものにリンクし、記録しておく。

 判決文では、「GPS捜査」とは 【車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査】としている。

 具体的に、今回の対象事件について「本件GPS捜査」とは、【承諾なく,かつ,令状を取得することなく,GPS端末を取り付けた上,その所在を検索して移動状況を把握するという方法によりGPS捜査が実施された】と定義。

3 当裁判所の判断 (1) では次。
 【個人の行動を継続的,網羅的に把握する・・・そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に秘かに装着すること・・・公道上の所在を肉眼で把握したりカメラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴うものというべきである】としている。
 こちら的には、・・・監視カメラはいいけども・・といっているようで気持ちは良くない。

 同じく(2) では次。
 【憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれる】
【GPS捜査は,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たるとともに,令状がなければ行うことのできない処分と解すべきである】

 令状があればいいよ、といっているようだが、判断(3)では、どうしてもGPS捜査をしたいなら、法律の制定改正などして整備したら、ともいう。
 【令状を発付することには疑義がある。GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば,その特質に着目して憲法,刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい】

 そのあたりを抜粋しておいて、ブログ後半では、前記中日の記事と当該最高裁大法廷判決にリンクし記録しておく。
 なお今朝の気温は「0.3度」。昨日より1度以上低くなった。日中は、昨日より高くなるという。・・・と、ノルディックウォークへ。

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●GPS捜査、令状必要性は プライバシー争点、最高裁初判断へ
       中日 2017年3月13日 
 裁判所の令状がないまま捜査対象者の車に衛星利用測位システム(GPS)発信器を取り付けた捜査の違法性が争われた窃盗事件の上告審判決が、十五日に最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で言い渡される。令状の必要性を巡っては、各地の地裁、高裁で判断が割れている。重大なプライバシー侵害があったかどうかが争点で、最高裁の初判断に注目が集まる。

 警察庁は内規で令状は不要としているが、裁判所は、プライバシー侵害の程度に応じて令状の必要性を認める判断も示している。

 二〇一六年六月の名古屋高裁判決は「対象者に気付かれることなく容易に正確な位置情報を取得でき、交友関係や思想などの個人情報を明らかにできる」と指摘。プライバシー侵害の危険性が大きく、令状は必要と判断した。一方、一六年十二月の福井地裁は「GPSから得られる情報は車の公道上の位置などにすぎず、誤差もある」などと判断。危険性は低いとの見方を示した。侵害の程度に関しては、GPSで情報を得る期間や回数、精度を判断材料とする場合もあるが、その評価もさまざまだ。

 今回、最高裁で判決が言い渡される事件では、捜査を違法とした一審大阪地裁は捜査が六カ月以上にわたり、位置情報の誤差も数十メートル程度の場合が多いことなどを考慮。二審大阪高裁は令状が必要かどうかには言及せず、「捜査に重大な違法はなかった」とした。

 被告側は、GPS捜査は現行法の令状では対応できず、新たな立法が必要だとも訴えている。

◆捜査手法を被告疑問視
 「自分たちは悪いことをしたから、処罰されることに不満はない。ただ、警察がルールを犯しているのなら正してほしい」

 今回の裁判で窃盗罪などに問われた岩切勝志被告(45)が判決を前に、本紙の取材に応じ、裁判所の令状を取らない衛星利用測位システム(GPS)捜査への疑問をぶつけた。

 自分の車にGPS発信器が付けられていたことに気付いたのは、二〇一三年の十月ごろ。逮捕される約二カ月前だった。共犯者から、修理に出したバイクで発信器が見つかったと連絡を受け、車の下をのぞいてみた。

 「何やこれ?」。ひも状に垂れ下がるビニールテープが目に入った。発信器は強い磁石とともにテープで巻かれ、マフラーと車体の隙間に押し込まれていた。

 プライバシーを無断でのぞかれていたと「気持ちが悪くなった」。逮捕後、共犯者以外の知人らの車にも発信器が付けられていたことも判明。事件とは無関係の女性の車にも付けられていた。迷惑をかけたとの思いが募った。

 警察は当初、GPS捜査についてはかたくなに否定。検察も、当初は警察から知らされていなかった。取り調べの刑事は「本当は自分も使いたくなかったんだ」と調べの最後になって認めたという。

 <GPS捜査> 人工衛星を利用して正確な位置情報を特定できるGPSを利用し、捜査対象者の車に発信器を付けるなどして行う捜査。警察庁は2006年、GPS捜査の運用基準を内規で定め、尾行と同じく令状は不要とした。しかし令状が必要とする司法判断が出る中、16年に「令状の発付を受けるのも一つの適切な方法」と都道府県警に連絡。千葉県警は同年、全国で初めて令状を取った。
★最高裁判例
  ◎ 事件番号  平成28(あ)442  窃盗,建造物侵入,傷害被告事件
 平成29年3月15日 最高裁判所大法廷  判決/結果  棄却

原審 大阪高等裁判所   平成27(う)966 平成28年3月2日

裁判要旨  車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて
位置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査であるGPS捜査は
令状がなければ行うことができない強制の処分か(積極)

 ◎   全 文
平成28年(あ)第442号 窃盗,建造物侵入,傷害被告事件
平成29年3月15日 大法廷判決
主 文   本件上告を棄却する。
理 由
弁護人亀石倫子ほかの上告趣意のうち,憲法35条違反をいう点は,後記のとお
り,原判決の結論に影響を及ぼさないことが明らかであり,判例違反をいう点は,
事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,憲法
違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上
告理由に当たらない。
以下,所論に鑑み,車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付けて位
置情報を検索し把握する刑事手続上の捜査(以下「GPS捜査」という。)
の適法
性等に関する原判決の判断の当否について,判断を示す。

1 事案の概要
原判決及び第1審裁判所の平成27年6月5日付け決定によれば,本件において
は,被告人が複数の共犯者と共に犯したと疑われていた窃盗事件に関し,組織性の
有無,程度や組織内における被告人の役割を含む犯行の全容を解明するための捜査
の一環として,平成25年5月23日頃から同年12月4日頃までの約6か月半の
間,被告人,共犯者のほか,被告人の知人女性も使用する蓋然性があった自動車等
合計19台に,同人らの承諾なく,かつ,令状を取得することなく,GPS端末を
取り付けた上,その所在を検索して移動状況を把握するという方法によりGPS捜
査が実施された(以下,この捜査を「本件GPS捜査」という。)。


2 第1審及び原審の判断の要旨
(1) 第1審裁判所は,本件GPS捜査は検証の性質を有する強制の処分(刑訴
法197条1項ただし書)に当たり,検証許可状を取得することなく行われた本件
GPS捜査には重大な違法がある旨の判断を示した上,本件GPS捜査により直接
得られた証拠及びこれに密接に関連する証拠の証拠能力を否定したが,その余の証
拠に基づき被告人を有罪と認定した。

(2) これに対し,原判決は,本件GPS捜査により取得可能な情報はGPS端
末を取り付けた車両の所在位置に限られるなどプライバシーの侵害の程度は必ずし
も大きいものではなかったというべき事情があること,被告人らの行動確認を行っ
ていく上で,尾行や張り込みと併せて本件GPS捜査を実施する必要性が認められ
る状況にあったこと,本件GPS捜査が強制の処分に当たり,無令状でこれを行っ
た点において違法と解する余地がないわけではないとしても,令状発付の実体的要
件は満たしていたと考え得ること,本件GPS捜査が行われていた頃までに,これ
を強制の処分と解する司法判断が示されたり,定着したりしていたわけではなく,
その実施に当たり,警察官らにおいて令状主義に関する諸規定を潜脱する意図があ
ったとまでは認め難いこと,また,GPS捜査が強制処分法定主義に反し令状の有
無を問わず適法に実施し得ないものと解することも到底できないことなどを理由
に,本件GPS捜査に重大な違法があったとはいえないと説示して,第1審判決が
証拠能力を否定しなかったその余の証拠についてその証拠能力を否定せず,被告人
の控訴を棄却した。

3 当裁判所の判断
そこで検討すると,原判決の前記2(2)の説示に係る判断は是認できない。その
理由は,次のとおりである。

(1) GPS捜査は,対象車両の時々刻々の位置情報を検索し,把握すべく行わ
れるものであるが,その性質上,公道上のもののみならず,個人のプライバシーが
強く保護されるべき場所や空間に関わるものも含めて,対象車両及びその使用者の
所在と移動状況を逐一把握することを可能にする。このような捜査手法は,個人の
行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うから,個人のプライバシーを
侵害し得るものであり,また,そのような侵害を可能とする機器を個人の所持品に
秘かに装着することによって行う点において,公道上の所在を肉眼で把握したりカ
メラで撮影したりするような手法とは異なり,公権力による私的領域への侵入を伴
うものというべきである。

(2) 憲法35条は,「住居,書類及び所持品について,侵入,捜索及び押収を
受けることのない権利」を規定しているところ,この規定の保障対象には,「住
居,書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのな
い権利が含まれるものと解するのが相当である。

そうすると,前記のとおり,個人
のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによっ
て,合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であ
るGPS捜査は,個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害する
ものとして,刑訴法上,特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当た
る(最高裁昭和50年(あ)第146号同51年3月16日第三小法廷決定・刑集
30巻2号187頁参照)とともに,一般的には,現行犯人逮捕等の令状を要しな
いものとされている処分と同視すべき事情があると認めるのも困難であるから,令
状がなければ行うことのできない処分と解すべきである。


(3) 原判決は,GPS捜査について,令状発付の可能性に触れつつ,強制処分
法定主義に反し令状の有無を問わず適法に実施し得ないものと解することも到底で
きないと説示しているところ,捜査及び令状発付の実務への影響に鑑み,この点に
ついても検討する。

GPS捜査は,情報機器の画面表示を読み取って対象車両の所在と移動状況を把
握する点では刑訴法上の「検証」と同様の性質を有するものの,対象車両にGPS
端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行う点におい
て,「検証」では捉えきれない性質を有することも否定し難い。

仮に,検証許可状
の発付を受け,あるいはそれと併せて捜索許可状の発付を受けて行うとしても,G
PS捜査は,GPS端末を取り付けた対象車両の所在の検索を通じて対象車両の使
用者の行動を継続的,網羅的に把握することを必然的に伴うものであって,GPS
端末を取り付けるべき車両及び罪名を特定しただけでは被疑事実と関係のない使用
者の行動の過剰な把握を抑制することができず,裁判官による令状請求の審査を要
することとされている趣旨を満たすことができないおそれがある。

さらに,GPS
捜査は,被疑者らに知られず秘かに行うのでなければ意味がなく,事前の令状呈示
を行うことは想定できない。刑訴法上の各種強制の処分については,手続の公正の
担保の趣旨から原則として事前の令状呈示が求められており(同法222条1項,
110条),他の手段で同趣旨が図られ得るのであれば事前の令状呈示が絶対的な
要請であるとは解されないとしても,これに代わる公正の担保の手段が仕組みとし
て確保されていないのでは,適正手続の保障という観点から問題が残る。

これらの問題を解消するための手段として,一般的には,実施可能期間の限定,
第三者の立会い,事後の通知等様々なものが考えられるところ,捜査の実効性にも
配慮しつつどのような手段を選択するかは,刑訴法197条1項ただし書の趣旨に
照らし,第一次的には立法府に委ねられていると解される。仮に法解釈により刑訴
法上の強制の処分として許容するのであれば,以上のような問題を解消するため,
裁判官が発する令状に様々な条件を付す必要が生じるが,事案ごとに,令状請求の
審査を担当する裁判官の判断により,多様な選択肢の中から的確な条件の選択が行
われない限り是認できないような強制の処分を認めることは,「強制の処分は,こ
の法律に特別の定のある場合でなければ,これをすることができない」と規定する
同項ただし書の趣旨に沿うものとはいえない。

以上のとおり,GPS捜査について,刑訴法197条1項ただし書の「この法律
に特別の定のある場合」に当たるとして同法が規定する令状を発付することには疑
義がある。GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるとすれば,
その特質に着目して憲法,刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられるこ
とが望ましい。


(4) 以上と異なる前記2(2)の説示に係る原判断は,憲法及び刑訴法の解釈適用
を誤っており,是認できない。

4 しかしながら,本件GPS捜査によって直接得られた証拠及びこれと密接な
関連性を有する証拠の証拠能力を否定する一方で,その余の証拠につき,同捜査に
密接に関連するとまでは認められないとして証拠能力を肯定し,これに基づき被告
人を有罪と認定した第1審判決は正当であり,第1審判決を維持した原判決の結論
に誤りはないから,原判決の前記法令の解釈適用の誤りは判決に影響を及ぼすもの
ではないことが明らかである。

よって,刑訴法410条1項ただし書,414条,396条により,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官岡部喜代子,同大谷剛彦,同
池上政幸の補足意見がある。

裁判官岡部喜代子,同大谷剛彦,同池上政幸の補足意見は,次のとおりである。
私たちは,GPS捜査の特質に着目した立法的な措置が講じられることがあるべ
き姿であるとの法廷意見に示された立場に賛同するものであるが,今後立法が具体
的に検討されることになったとしても,法制化されるまでには一定の時間を要する
こともあると推察されるところ,それまでの間,裁判官の審査を受けてGPS捜査
を実施することが全く否定されるべきものではないと考える。

もとより,これを認めるとしても,本来的に求められるべきところとは異なった
令状によるものとなる以上,刑訴法1条の精神を踏まえたすぐれて高度の司法判断
として是認できるような場合に限定されよう。したがって,ごく限られた極めて重
大な犯罪の捜査のため,対象車両の使用者の行動の継続的,網羅的な把握が不可欠
であるとの意味で,高度の必要性が要求される。さらに,この場合においても,令
状の請求及び発付は,法廷意見に判示された各点について十分配慮した上で行われ
なければならないことはいうまでもない。このように,上記のような令状の発付が
認められる余地があるとしても,そのためには,ごく限られた特別の事情の下での
極めて慎重な判断が求められるといえよう。

検察官榊󠄀原一夫,同宇川春彦 公判出席
(裁判長裁判官 寺田逸郎 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官
大橋正春 裁判官 小貫芳信 裁判官 鬼丸かおる 裁判官 木内道祥 裁判官
山本庸幸 裁判官 山崎敏充 裁判官 池上政幸 裁判官 大谷直人 裁判官
小池 裕 裁判官 木澤克之 裁判官 菅野博之 裁判官 山口 厚)



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