The Girl From Ipanema
スタン・ゲッツ&アストラッド・ジルベルトの『セッションズ・オン・ヴァーヴ(Sessions On Verve)』は、どこか物憂げでいて涼しげなアルバムだ。アストラッド・ジルベルトの魅惑的な声。清楚で透明感があるのにアンニュイな感じがいい。
この曲、オリジナルのポルトガル語の歌詞は、海岸を歩き去る少女への届かぬ想いを物悲しく訴えるものである。これを翻訳した英語の歌詞は、表現の深みが違うなどと指摘されているようだ。だが、tetujinはポルトガル語を理解できないのでNorman Gimbelによる英語詞の訳を。
Tall and tan and young and lovely
the girl from Ipanema goes walking and
when she passes each one she passes goes
"Ahhh!" When she walks she's like a samba
that swings so cool and sways so gently
that when she passes each one she passes goes
"Ahhh!" Oh, but he watches so sadly
How can he tell her he loves her?
Yes, he would give his heart gladly.
But each day when she walks to the sea
she looks straight ahead not at he.
Tall and tan and young and lovely
the girl from Ipanema goes walking and
when she passes he smiles
but she doesn't see.
She just doesn't see. No, she doesn't see....
背の高い日焼けした素敵なイパネマの彼女が歩いていく
彼女が歩くたびにサンバのリズムで体がゆれる
ああ。だけど彼は悲しげに見るだけ。
どうすればこの気持ちを伝えれるんだ
そうさ、少しづつ・・・・・・
だけど、彼女が毎日海に向かって歩く時は
彼女の視線は彼に注がれない
背の高い日焼けした素敵なイパネマの彼女が歩いていく
彼女が通り過ぎるたびに彼女に微笑むが
彼女は彼を見やしない
彼を見やしない
“イパネマの娘”が生まれた背景には、有名なエピソードがある。
1962年ごろ。リオデジャネイロ南部のイパネマビーチの近くにあるバー「ヴェローゾ」で、作曲者のアントニオ・カルロス・ジョビンや作詞者のヴィニシウス・ヂ・モライスらがよく酒を飲んでいたという。彼らは毎日、美少女が通り過ぎるのをバーから眺めていた。彼女の名前はエロイーザ・エネイダ・メネーゼス・パエズ・ピント。彼女は母親の使いで「ヴェローゾ」にしばしば立ち寄っていたそうだ。そんな彼女がジョビンとモライスを虜にしてしまうのに時間はかからなかった。彼らはイマジネーションを大いに掻き立てられ、“イパネマの娘”という名曲が誕生することになった。
バー「ヴェローゾ」は、現在、「ガロータ・ヂ・イパネマ(イパネマの娘)」と名前を変え観光スポットのひとつとなっている。
それにしても、アストラッドの“イパネマの娘”を聴いていると、リオの青い空と心地よい風はきっとこんなのに違いないと想像してしまう。焼けつく太陽の下、砂浜をひとり歩く美少女。リオに行ったことはないが、もし行く機会があればイパネマビーチには必ず立ち寄りたい。エロイーザの幻影をもとめて・・・・・・。