1997年に発表されたアルバムオノ・ヨーコの「シーズン・オブグラス」のCDジャケット(レコードの発売は1981年)には、左のレンズに飛び散った血の跡が残るセルフレームのボストンタイプめがねが写っている。キハクのような黄色セルロイド製のフレームに、薄いブルーのレンズ。持ち主は1980年12月8日に凶弾倒れたジョン・レノンだ。
ビートルズの音楽は、幼かったぼくに、ただやかましいとしか印象を残さなかった。少しませた同級生が、熱狂的にビートルズを語る傍で、トレードマークの丸いめがねをかけたジョン・レノンのレコードジャケットを覗きこみながら流れるイマジンを聞いていた。ぼんやりと世界が平和になればと思いつつも、それがどんなに難しいことなのか想像もつかなかった。
1960年代。団塊の世代の中核をなすビートルズに熱狂した人たち。1955年に、ビル・ヘイリーと彼のバンド“コメッツ”が歌った映画『暴力教室』の主題歌『ロック・アラウンド・ザ・クロック』は、魂を揺さぶるロックンロール"rock'n roll"の潮流となり、体制に反目することがファッションとなった。これがイギリスに渡り、洗練された上で、反目する対象が暴力、つまり行き詰ったベトナム戦争にまで高められることとなった。その先頭を走っていたのがジョン・レノンだった。
John Lennon - "Happy Xmas"