tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

夜のピクニック

2007-12-19 19:59:33 | cinema

<ついに来たか、この日が。
 貴子は坂を降りながら考えた。
 高校最後の行事。
 彼女は眩しそうに空を見上げる。
 そして、あたしの小さな秘密の賭けを実行する日が。
 坂のガードレールの下を、ゴトゴトと貨物列車が走っていく。
 もう走り出してしまったんだから、後には引き返せない。
 貴子は、遠ざかる貨物列車を横目で見送った。>

恩田陸著「夜のピクニック」の中の一節だ。夜を徹して80キロを歩き通す高校生活最後の一大イベント「歩行祭」。朝の8時から翌朝の8時まで歩くというこの行事は、夜中に数時間の仮眠を挟んで前半が団体歩行、後半が自由歩行と決められている。前半は文字通り、クラス毎に2列縦隊で歩くのだが、自由歩行は全校生徒が一斉にスタートし母校のゴールを目指す。そして、ゴール到着が全校生徒中何番目かという順位がつく。
全校生徒がぞろぞろとスタートしていく中、貴子は西脇融の、すっかり慣れっこになった一瞬の刺すような視線を思い出しながら歩いていく。

なかなか話しかけることのできない貴子の動向を追いつつ、気まずそうな2人の雰囲気を勘違いし、貴子と西脇をくっつけようとする友人たち、西脇を誘惑する典型的ブリッコ系女子高生、すぐに歩き疲れて音を上げる男子ら、高校生たちの姿を生き生きと活写していく。みんなで、夜歩く。たったそれだけのことだ。生徒たちは、親しい友人と恋の話をしたり、将来への気持ちを打ち明け合ったりして思い思いに一夜を過ごす。
・・・・・・なんか懐かしい気分にさせてくれる。特に盛り上がりも無く、淡々と歩くなかでの高校生同士の会話、行動など、自分の高校生時代と重ね合わせてしまう。昔も今も高校生と言う存在は兎角過激に扱われがちだが、自分たちの過ごしていた高校生活って少なくともこんな感じだった。些細なことで悩んではしゃいで堂々巡り。
一つだけ違う点。それはここに描かれている、誰にも知られずにおきたい関係である主人公2人の心の中の頑なさだ。それでも、2人は動き出し感動へと導いていく。穏やかで癒される青春映画だった。