【撮影地】富山県中新川郡立山町立山峰1(室堂平)(2008.9月撮影)
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人を怖れない雷鳥といえども、人間の立てる物音はイヤのようだ。親子が小声で話す声や、雷鳥の存在に気が付いた若いカップルが急いで近寄る足音に、雷鳥は多少緊張した様子で私が立っている方へひょこひょこ移動してきた。その足には個体識別用の足輪がはめられていた。その歩く姿を見ていて、私はなんだか彼らの世界に侵入した人間の一人として、申し訳ないような気持になった。この先、立山の登山客が増せば増すほど、植物の外来種の持込など植生に大きな影響を与えるのは必至だ。植生の変化は雷鳥に住みにくさをもたらすことになるだろう。だが今は、ひたすら、雷鳥に対して生き残れと祈るしかなく、自分の無力を感じざるを得ない。
雷鳥が、首をかしげてこちらを見ていた。私は、できるだけ静かにその場を離れた。
雨にたたかれた室堂。思い出になると余計なものがはぎ取られていくようだ。蒸し暑かった事、登りが辛かった事などは全て忘れ去り、楽しかった事だけが思い出となって行く。そして全てが素晴らしい山行きとなって、心の中の宝箱に詰まって行く。
<雪のころ、立山にまた来たい>
人はリスクを冒してまで、何のために山に登るのだろうか。私には、自分の気持ちを伝えられるだけの言葉を、今は持ち合わせていない。ただ、白い雲のように思いが流れていく。 了
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