桜井和馬著『妻と最後の10日間』を読んだ、とても感銘深い好著だ
「世界各国の紛争地域を取材してきた著者が、最愛の妻をくも膜下出血で亡くすまでの看取りの10日間を記録したノンフィクション。(中略)回復の兆しはなく、意識も戻らぬまま、脳死に陥る妻。著者は、『その瞬間』までを詳細に記録することで、過酷な現実と向き合うことを選ぶ」。
表紙裏にそのように書かれている桜井和馬著『妻と最後の10日間』(集英社文庫)を読んだ。パートナー(=妻)がその朝出勤して、会社で倒れてそのまま意識不明から脳死へ。そんな過酷な事実を、著者は克明に書き綴っている。情報公開制度の中で開示請求して、妻のカルテ記録も取り寄せて、書き込んでいるだけに、いっそうの臨場感がある。とても感銘深い好著だ。
今、愛する人を失った方々への「グリーフケア」がとても重要となり、そのための診療科も新設されているとも聞く。
私のパートナーも、一度は心臓手術で、二度目は入院中に心筋梗塞で心停止を経験している。とりわけて二度目の心筋梗塞の際には、明け方頃病院から「至急に病院に来てください」との電話があり、病院へ急いだ経験がある。その際には担当医師から「心臓は動き出したが、意識が戻らない」と言われたことがある(幸い、その後意識は回復した)。
そんな経験があるだけに、妻の働く会社から連絡を受けた著者が、病院へ行く途中に「突発性の意識障害」になるなどの経験はとてもよく理解でき、読み進むのも辛かった。
愛する人を失う悲しみ、その喪失感がどうようなものか、私にはまだ経験がないが想像は出来る。それに絶えられるかは、別として。
ともあれ、長年連れ添ってきたパートナーを失う悲しみに、いつかは遭遇するかも知れない。逆にパートナーが私を失う悲しみに襲われるのかも知れない。『妻と最後の10日間』を読み、いろんなことを考えさせられた。