仲代達也著『老いも進化』を読んだ、「炎の人」を見逃したことを悔やんだ
今日駅地下一番街を歩いていると、「チューリップをプレゼントします」とのアナウンスが聞こえてきた。そこはミーハーの私であり、飛んでいって並んだ。ずいぶんと長い列が出来ていたが、1500鉢が用意されており、私もゲットできた。5本の黄色いチューリップは美しかった。
ところで、昨日読んだ本について書く。仲代達也著『老いも進化』(2009年刊、講談社+α新書)だ。岡山市民劇場の昨年の12月例会は、その仲代達也主演の「炎の人 ・ゴッホ小伝」(無名塾)だった。この時の座席は結構いいお席だったが、悩んだ末に行かなかった。定年後ともあれは病気でもない限りは、欠かさず観に行っていたのだが。
その舞台「炎の人」を観た友人が、感動して私に感想を話してくれた。そして、「77歳にもなるのに、とても元気で素晴らしかった」とも、付け加えた。見逃したことを悔やんだ。
そして今、仲代達也の著書を読んで、その悔しさは増している。この『老いも進化』は、
妻・宮崎恭子(ペンネーム・隆巴)に先立たれた悲しみが書いてあることもあり、いつものように公民館経由で市立図書館から借りた。
内容的には、妻・宮崎恭子との死別も書いてはあるが、仲代達也の過ぎてきた「役者人生」が書かれていて、とても興味深かった。それだけに、やはり「炎の人」は観ておくべきだったと今悔恨の情に苛まれている。
この本には、とてもたくさんの素敵な言葉が書かれている。一つだけ書く。私もよく引用してきたが、中国には、「季節の移ろいに人生を重ね合わせた言葉」がある。それは「青春、朱夏、白秋、そして玄冬」だ。
それについて、仲代達也は次のように書いている。「朱夏はいい仕事に恵まれ、体力も気力も溢れ、忙しさに追われながらも充実の明け暮れでした。そして、穏やかで、透徹した秋を迎えたのですが、私は自分で“赤秋”と言っています。真っ赤に燃える秋(中略)-私にとって今は“赤秋”の時です」と。
「真っ赤に燃えた葉もいずれは落ち、朽ち果て、冬が訪れます。だからせめて、冬の来る前は真っ赤に燃える秋を真っ赤に生きたい……」「老いることは、ワインが琥珀色に熟成するようなもので、到達してはじめてわかる深い味わいいや素敵なこともある」とも書いている。
1932年生まれの仲代達也が、「“赤秋”を生きる」のならば、それよりもずいぶんと若い私であり、「白秋を生きる」のではなく、やはり「“赤秋”を生きたい」と願う。元気をもらった本、それが『老いも進化』だ。