「規制改革・民間開放推進会議の最終答申」である。実体が「第三者のための契約」や「買主の地位の譲渡」であれば、登記が可能であるのはもちろんであり、実体が転売であるにもかかわらず、中間省略登記を行う目的でこれらの手法が脱法的に用いられるのが問題なのである。無理解も極まれりの感。
【以下、最終答申から】
(2)登記制度の運用改善
従来、不動産の売買において、「甲(売主)→乙(転売者)→丙(買主)」という取引の場合、登記官の形式的審査権の下で「甲→丙」という所謂「中間省略登記」が結果として少なからず行われていたとの指摘があるが、平成 16 年の不動産登記法の改正により、不動産の所有権の移転登記に際しては登記原因証明情報を提供することが必須のものとされたため、上記のような取引により登記の申請をする場合には、添付された登記原因証明情報の内容から「甲→乙」「乙→丙」の2つの権利変動が実体上あることが明らかとなることとなった。したがって、不動産登記の規定に従い、この実体上の権利変動を公示するため、「甲→乙」「乙→丙」と順次所有権の移転の登記をしなければならないことになり、前記のような登記が行われるということはなくなった。
所有権の登記の申請は民法上の義務とはなっておらず、また、甲乙丙三者の合意がある場合には、最高裁判例(昭和 40 年9月 21 日判決)においても「甲→丙」への移転の登記請求権が認められているため、登記行政の運用と判例との整合性について指摘もされている。多くの場合、乙は第三者への対抗要件を必要としておらず、また登記をする場合にはその費用を転売価格に上乗せしているため、丙の費用負担が増えることになる。
しかし、第三者のためにする契約等、一定の類型の契約により実体上も「甲→丙」と直接所有権が移転した場合には、現在の制度の下においても「甲→丙」と直接移転登記を申請することができる。もっとも、現状においては、甲乙丙三者が売買に介在する場合、乙が所有権を取得していないにもかかわらず、「中間省略登記的だ」との理由から、乙に所有権移転をしないといけないのではないかとの疑義が生じるなど、現場の混乱も少なからず見受けられる。
そこで、当会議は、不動産登記法改正前と実質的に同様の不動産登記の形態を実現し、現場の取引費用の低減ニーズに応えるとともに、不動産の流動化、土地の有効利用を促進する観点から、不動産登記制度を所管する法務省との間で、甲乙丙三者が売買等に関与する場合であっても、実体上、所有権が「甲→丙」と直接移転し、中間者乙を経由しないことになる類型の契約に該当する「第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転登記」又は「買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転登記」の各申請の可否につき、具体的な登記原因証明情報を明示した上で、いずれも可能である旨を確認した。
ついては、現場における取扱いについて、誤解や不一致が生ずることのないよう、各登記所や日本司法書士会連合会、不動産取引の関連団体を通じて、登記官、司法書士、不動産取引の当事者、関係者に対して上記の照会回答の内容を周知すべきある。【平成18年度措置】