吸収合併等の登記において,資本金の額が増加するときは,登録免許税の計算に関する証明書を添付しなければならない(登録免許税法施行規則第12条)ものとされている。
これは,いわゆる「合併対価の柔軟化」に係る改正により,必要とされるようになったものである。
吸収合併の登記における登録免許税は,増加した資本金の額に1000分の1.5の税率を乗じて計算した額であり,財務省令で定めるものを超える資本金の額に対応する部分については,1000分の7を乗じて計算した額であるとされている(登録免許税法別表第1第24号(一)へ,登録免許税法施行規則第12条第2項)。
すなわち,合併対価に存続会社の「新株以外の財産(自己株式を含む。)」が存するときは,登録免許税法施行規則第12条第2項で定める「消滅会社の純資産の額」及び「新株以外の財産の額」を証明する必要があり,上記の証明書が必要となるわけである。
しかし,合併対価に「新株以外の財産」が存しないときは,登録免許税額の算定において,「消滅会社の純資産の額」さえも意味を持たない。
したがって,このような場合には,「登録免許税の計算に関する証明書」は,添付することを要しないのである。
ところが,合併対価の柔軟化に伴う「登録免許税法施行規則及び租税特別措置阻止法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)」(平成19年4月25日付法務省民商第971号)において,その辺りが明確でないため,吸収合併において資本金の額が増加する場合には,一律,上記証明書を添付しなければならないとの取扱いがされてきた嫌いがある。
「登録免許税の計算に関する証明書」は何を証するために必要であるのか,を今一度考えてみれば,資本金の額が増加する場合であっても,合併対価に「新株以外の財産」が存しないときは不要である,との結論を導くことは容易であるはずである。
「通達が例外を認めていないから」では,添付を強制する理由にならない。「当たり前のことを,通達に書くわけがない」からである。