日本取引所グループ金融商品取引法研究会
https://www.jpx.co.jp/corporate/research-study/research-group/index.html
「令和元年会社法改正(7)—株式交付—」(髙橋陽一京都大学准教授)の報告が掲載されている。
https://www.jpx.co.jp/corporate/research-study/research-group/00-archives-01.html
「株式交付子会社の譲渡制限株式について,譲渡承認が得られなかった場合の法律関係」に関する質疑で,高橋准教授は,
「譲渡制限株式の譲渡は、承認がなくても譲渡の当事者間では有効だけれども、会社との関係では無効になると解されています。ただ、当事者間においては有効とは言いつつも、株式交付の場合には給付を受けないと譲渡の効力が生じないと774条の11第1項で定められていて、給付として、名義書換まで必要か、名義書換請求で足りるかは問題がありますが、少なくとも名義書換請求はしなくてはいけません。そして、134条で名義書換請求を適法に行うには、譲渡制限株式の場合には譲渡承認の手続を経る必要があると定められているので、譲渡承認が得られないと名義書換請求を適法にできなくて、給付ができない(その結果、株式交付による譲渡の効力が譲渡の当事者間においても生じない)ということになるのではないかと思われます。
譲渡の当事者間では譲渡に係る契約は有効だけれども、譲渡の効力は生じない(あくまで株式交付として譲渡するという契約なので、株式交付による譲渡の効力が生じない以上、譲渡の効力は発生しない)ということになるだと思われます。」
と述べている。
株式交付子会社の株式の譲渡人から株式交付親会社への株式の「給付」(会社法第774条の7第2項)の前提として,譲渡承認を受けていることが必須であり,譲渡承認がされなければ,「給付」がないことになり,株式交付の効力が生じない,という整理であるようである。
なるほどね。
cf.
令和2年12月17日付け「株式交付と譲渡承認手続」
この理を徹底すると,効力発生日よりも前に譲渡承認がされないと株式交付の効力が生じないことになりそうであるが,果たしてそうであろうか?
効力発生日後にされる譲渡承認請求が否定されるものではなく,株式交付子会社が承認をすることで,株式交付が有効であると捉えてもよいように思われる。
とすると,株式譲渡が承認されるか否かが確定するまでの間,株式交付の効力発生についても未確定の状態がつづくことになり,法的に不安定であるといえよう。
一定の場合に,株式会社が承認をしたとみなされる場合(会社法第145条)もある。
よって,効力発生日よりも前に譲渡承認がされていない場合であっても,株式交付は有効に成立すると解して,これを前提として,その後に譲渡承認がされなかったときは,株式交付親会社は,株式交付子会社又は指定買取人による買取り(会社法第140条)に対応していく,という整理が望ましいと思われる。
というわけで,株式交付の効力発生日前に,譲渡人から株式交付子会社に対して株式の譲渡に係る承認の請求(会社法第136条)をして,承認を得ておく,あるいは,株式交付計画において株式交付子会社による譲渡承認を効力発生の条件としておくのが望ましいと考えられる。