新潟での研修会の際に,質問があった件。
「代表理事の交代的変更の登記申請において添付する理事会議事録の押印及び印鑑証明書について,地元の登記所では,法第95条第3項の定款の定めがある場合においても,出席理事及び監事全員の押印及び印鑑証明書が要求されている。レジュメには,出席代表理事及び監事の実印押印及び印鑑証明書の添付で足りるとあるが・・・」
この件については,以前にも取り上げたところである。
cf. 平成25年2月8日付け「代表理事の変更の登記申請において添付する理事会議事録の押印及び印鑑証明書について」
【再掲はじめ】
理事会設置一般社団法人又は一般財団法人において,代表理事の就任による変更の登記の申請書には,理事会に出席した理事及び監事が理事会議事録に押印した印鑑についての市区町村長発行の印鑑証明書を添付しなければならないのが原則である(法人登記規則第3条,商業登記規則第61条第4項)。
ところで,理事会設置一般社団法人等は,定款において理事会議事録に署名又は記名押印をすべき理事を出席した代表理事とする旨を定めることができる(一般社団・財団法人法第95条第3項)。
この場合には,上記代表理事の選定を証する書面としての理事会議事録には,出席した代表理事及び監事のみが記名押印をすれば足り,それらの印鑑証明書を添付すれば足りる(変更前の代表理事が登記所に提出した印鑑を押印した場合は,不要。)。
cf. 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律等の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて」(平成20年9月1日付け民商第2351号民事局長通達)
杉浦直紀・希代浩正「一般社団・財団法人の登記実務(第2版)」(公益法人協会)47頁
コメント欄にあるとおり,若干混乱があるようである。理事全員の押印及び印鑑証明書の添付を要すると解する向きは,おそらく,代表取締役を書面決議で選定した場合の取扱いと混同しているのであろう。
しかし,理事会設置一般社団法人等においては,一般社団・財団法人法が署名等の義務者の簡略な扱いを定めているのであり,省令がこれを覆して「理事全員」を要求するように解するのは,失当であろう。
また,法第95条第3項のような規定が置かれたのは,従来からの民法法人においては理事が多数であり,全員の署名又は記名押印を要求することが適当でない場合があるとの判断であったからと推察されるところであり,そのような立法趣旨(?)からも,法第95条第3項の定款の定めがあるときは,代表理事が交替する場合の理事会議事録であるからといって,理事全員の押印及び印鑑証明書を要求するのは,妥当ではないであろう。
なお,新たに代表理事に選定された者も,理事会の最中に即時就任することを承諾した以上,その時点から代表理事に就任するのであるから,「出席した代表理事」に該当するのはもちろんである。
上記通達の取扱いが変更されたという話は,聞き及んでおらず,これと異なる取扱いをしている登記所があるとすれば,誤解に基づくものであろう。
【再掲おわり】
新保さんの「司法書士のおしごと」にも同旨の記事があった。
https://blog.goo.ne.jp/chararineko/e/c8bf78a0e3e2729253120f26f1b11aab
登記関係の通達やその解説には,「当然のことはわざわざ書かない」という不文律があり,上記のとおり,
「理事会設置一般社団法人等は,定款において理事会議事録に署名又は記名押印をすべき理事を出席した代表理事とする旨を定めることができる(一般社団・財団法人法第95条第3項)。
この場合には,上記代表理事の選定を証する書面としての理事会議事録には,出席した代表理事及び監事のみが記名押印をすれば足り,それらの印鑑証明書を添付すれば足りる(変更前の代表理事が登記所に提出した印鑑を押印した場合は,不要。)。」
の部分に,交代的変更の場合も内包されているという理解でよいはずである。
私は,新代表理事及び監事の実印押印と印鑑証明書の添付(定款も添付)で,これまで補正になったことはないのであるが・・・。
「代表理事の交代的変更の登記申請において添付する理事会議事録の押印及び印鑑証明書について,地元の登記所では,法第95条第3項の定款の定めがある場合においても,出席理事及び監事全員の押印及び印鑑証明書が要求されている。レジュメには,出席代表理事及び監事の実印押印及び印鑑証明書の添付で足りるとあるが・・・」
この件については,以前にも取り上げたところである。
cf. 平成25年2月8日付け「代表理事の変更の登記申請において添付する理事会議事録の押印及び印鑑証明書について」
【再掲はじめ】
理事会設置一般社団法人又は一般財団法人において,代表理事の就任による変更の登記の申請書には,理事会に出席した理事及び監事が理事会議事録に押印した印鑑についての市区町村長発行の印鑑証明書を添付しなければならないのが原則である(法人登記規則第3条,商業登記規則第61条第4項)。
ところで,理事会設置一般社団法人等は,定款において理事会議事録に署名又は記名押印をすべき理事を出席した代表理事とする旨を定めることができる(一般社団・財団法人法第95条第3項)。
この場合には,上記代表理事の選定を証する書面としての理事会議事録には,出席した代表理事及び監事のみが記名押印をすれば足り,それらの印鑑証明書を添付すれば足りる(変更前の代表理事が登記所に提出した印鑑を押印した場合は,不要。)。
cf. 「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律等の施行に伴う法人登記事務の取扱いについて」(平成20年9月1日付け民商第2351号民事局長通達)
杉浦直紀・希代浩正「一般社団・財団法人の登記実務(第2版)」(公益法人協会)47頁
コメント欄にあるとおり,若干混乱があるようである。理事全員の押印及び印鑑証明書の添付を要すると解する向きは,おそらく,代表取締役を書面決議で選定した場合の取扱いと混同しているのであろう。
しかし,理事会設置一般社団法人等においては,一般社団・財団法人法が署名等の義務者の簡略な扱いを定めているのであり,省令がこれを覆して「理事全員」を要求するように解するのは,失当であろう。
また,法第95条第3項のような規定が置かれたのは,従来からの民法法人においては理事が多数であり,全員の署名又は記名押印を要求することが適当でない場合があるとの判断であったからと推察されるところであり,そのような立法趣旨(?)からも,法第95条第3項の定款の定めがあるときは,代表理事が交替する場合の理事会議事録であるからといって,理事全員の押印及び印鑑証明書を要求するのは,妥当ではないであろう。
なお,新たに代表理事に選定された者も,理事会の最中に即時就任することを承諾した以上,その時点から代表理事に就任するのであるから,「出席した代表理事」に該当するのはもちろんである。
上記通達の取扱いが変更されたという話は,聞き及んでおらず,これと異なる取扱いをしている登記所があるとすれば,誤解に基づくものであろう。
【再掲おわり】
新保さんの「司法書士のおしごと」にも同旨の記事があった。
https://blog.goo.ne.jp/chararineko/e/c8bf78a0e3e2729253120f26f1b11aab
登記関係の通達やその解説には,「当然のことはわざわざ書かない」という不文律があり,上記のとおり,
「理事会設置一般社団法人等は,定款において理事会議事録に署名又は記名押印をすべき理事を出席した代表理事とする旨を定めることができる(一般社団・財団法人法第95条第3項)。
この場合には,上記代表理事の選定を証する書面としての理事会議事録には,出席した代表理事及び監事のみが記名押印をすれば足り,それらの印鑑証明書を添付すれば足りる(変更前の代表理事が登記所に提出した印鑑を押印した場合は,不要。)。」
の部分に,交代的変更の場合も内包されているという理解でよいはずである。
私は,新代表理事及び監事の実印押印と印鑑証明書の添付(定款も添付)で,これまで補正になったことはないのであるが・・・。
さて、今回の記事の法95条3項の「定款による別段の定め」を理事会の書面決議(無開催)の場合にも適用されると解することは難しいでしょうか。
たしかに95条3項の文言をみると「出席した」代表理事及び監事とあるため、理事会が開催されてない以上、「出席した」には該当しないようにも思えます。
しかし、規則61条6項も「出席した」とあり、これを書面決議の場面に適用していることから、この「出席」には限定の意味はないものと考えることも可能であると思います。重要なのは、法95条3項の趣旨であり、その趣旨が多数の理事が存在することが多い一般社団法人の理事会の手続きの簡略化にあるとすれば、その趣旨は書面決議にも当てはまり、法95条3項の「出席した」も限定の意味はないと考えるべきあり、法95条3項の「定款による別段の定め」は理事会の書面決議にも適用されると思うですが、いかがでしょうか?
法務局の見解は把握できていません。
1.従前の代表理事が重任する場合等,当該者が議事録作成者として押印する場合は,当該者のみが法人実印を押印すれば足りる。他の理事の記名押印は要しない。
2.交代的に変更する場合等,1以外の場合(従前の代表理事が議事録作成者として法人実印を押印しない場合)は,理事全員が個人実印を押印して印鑑証明書を添付する必要がある。