マンションの管理の適正化を推進するためには、必要な情報提供、技術的支援等が不可欠であるこ
とから、国及び地方公共団体は、マンションの実態の調査及び把握に努め、必要な情報提供等につい
て、その充実を図ることが重要である。
国においては、法及びマンション管理適正化指針の内容の周知を行うほか、「マンション標準管理
規約」や各種ガイドライン・マニュアルの策定や適時適切な見直しとその周知を行っていく必要があ
る。
また、国、地方公共団体、マンション管理適正化推進センター、マンション管理士、NPO法人等
の関係者が相互に連携をとり、管理組合等の相談に応じられるネットワークを整備することが重要で
ある。
地方公共団体においては、必要に応じてマンション管理士等専門的知識を有する者や経験豊かで地
元の実情に精通したマンションの区分所有者等から信頼される者、NPO法人等の協力を得て、セミ
ナーの開催やマンションに係る相談体制の充実を図るよう努める必要がある。
マンション管理適正化推進センターにおいては、関係機関及び関係団体との連携を密にし、管理組
合等に対する積極的な情報提供を行う等、管理適正化業務を適正かつ確実に実施する必要がある。
これらのほか、国、地方公共団体、関係機関等は、管理計画認定制度の周知等を通じて、これから
管理組合の一員たる区分所有者等としてマンションの管理に携わることとなるマンションを購入しよ
うとする者に対しても、マンションの管理の重要性を認識させるように取り組むことも重要である。
六マンション管理適正化推進計画の策定に関する基本的な事項
マンションは全国的に広く分布しており、各地域に一定のストックが存在するが、中でも大都市圏
への集中が見られ、建設後相当の期間が経過し、管理上の課題が顕在化しているものも多い。また、
大都市以外でも、都市近郊の観光地等で主に別荘として利用される、いわゆるリゾートマンションを
多く有する地域もある。
地方公共団体は、このように各地域で異なるマンションの状況等を踏まえつつ、法及び本基本方針
に基づき、住生活基本計画(都道府県計画)(市町村にあっては住生活基本計画(全国計画)(令和
三年三月十九日閣議決定)第4(4)に基づく市町村計画を含む。以下同じ。)と調和を図るほか、
マンションの管理の適正化の推進に関する施策の担当部局と福祉関連部局、防災関連部局、まちづく
り関連部局、空き家対策関連部局、地方住宅供給公社等と連携し、マンション管理適正化推進計画を
策定することが望ましい。
1マンションの管理の適正化に関する目標
区域内のマンションの状況に応じ、二十五年以上の長期修繕計画に基づく修繕積立金額を設定し
ている管理組合の割合等、明確な目標を設定し、その進捗を踏まえ、施策に反映させていくことが
望ましい。
2マンションの管理の状況を把握するために講じる措置に関する事項
マンションの管理の適正化の推進を図るためには、大規模団地や長屋型のマンション等も含めた
区域内のマンションストックの状況を把握した上で、マンションの管理の実態について把握するこ
とが重要であり、登記情報等に基づくマンションの所在地の把握、管理組合へのアンケート調査等
の実態調査、条例による届出制度の実施等、地域の状況に応じた措置を位置づけることが考えられ
る。
なお、マンションの管理の実態の把握については、規模や築年数等に応じ、対象を絞って行うこ
とも考えられる。
3マンションの管理の適正化の推進を図るための施策に関する事項
地域の実情に応じてニーズを踏まえつつ、適切な施策を行っていくことが重要であり、管理組合
向けのセミナーの開催、相談窓口の設置、マンション管理士等の専門家の派遣、長期修繕計画の作
成等に必要な取組に対する財政支援等を位置づけることが考えられる。
また、きめ細やかな施策を推進するため、地方公共団体、地域の実情に精通したマンション管理
士等の専門家、マンション管理業者等の事業者、管理組合の代表者、NPO法人等で協議会を設置
することも考えられる。
このほか、必要に応じ、地方住宅供給公社によるマンションの修繕その他の管理に関する事業を
定めることが考えられる。この場合において、地方住宅供給公社は、当該都道府県等の区域内にお
いて、地方住宅供給公社法(昭和四十年法律第百二十四号)第二十一条に規定する業務のほか、管
理組合の委託により、当該事業を行うことができる。
4管理組合によるマンションの管理の適正化に関する指針(都道府県等マンション管理適正化指針
)に関する事項
法第五条第一項に基づき、管理組合は、マンション管理適正化指針のほか、都道府県等マンショ
ン管理適正化指針にも留意してマンションを適正に管理するよう努めることとなるほか、都道府県
等マンション管理適正化指針は、法第五条の二に基づく助言、指導等の基準や、法第五条の四に基
づく管理計画の認定の基準ともなり得るものである。
マンション管理適正化指針と同様のものとすることも差し支えないが、必要に応じ、例えば、浸
水が想定される区域においては適切な防災対策を講じていることなど地域の実情を踏まえたマンシ
ョンの管理に求められる観点や水準を定めることが望ましい。
5マンションの管理の適正化に関する啓発及び知識の普及に関する事項
マンションの管理の適正化の推進を図るためには、必要な情報提供、技術的支援等が不可欠であ
ることから、マンション管理適正化推進センターやマンション管理士会、NPO法人等と連携した
セミナーの開催、相談窓口の設置、専門家の派遣や、これらの取組を広く周知することを位置づけ
ることなどが考えられる。
6計画期間
地域のマンションの築年数の推移や、人口動態等の将来予測を踏まえて、適切な計画期間を設定
することが望ましいが、例えば、住生活基本計画(都道府県計画)が、計画期間を十年とし、五年
毎に見直しを行っている場合にはこれと整合を図ることなどが考えられる。
7その他マンションの管理の適正化の推進に関し必要な事項
管理計画認定制度の運用にあたって、例えば、法第五条の十三に基づく指定認定事務支援法人を
活用する場合にはその旨等を定めることが考えられる。
このほか、地域の実情に応じて取り組む独自の施策を積極的に位置づけることが望ましい。
七その他マンションの管理の適正化の推進に関する重要事項
1マンション管理士制度の一層の普及促進
マンションの管理には専門的な知識を要する事項が多いため、国、地方公共団体及びマンション
管理適正化推進センターは、マンション管理士制度がより一層広く利用されることとなるよう、そ
の普及のために必要な啓発を行い、マンション管理士に関する情報提供に努める必要がある。
なお、管理組合は、マンションの管理の適正化を図るため、必要に応じ、マンション管理士等専
門的知識を有する者の知見の活用を考慮することが重要である。
2管理計画認定制度の適切な運用
管理計画認定制度の活用によって、マンションの管理水準の維持向上と管理状況が市場において
評価される環境整備が図られることが期待されることから、同制度を運用する地方公共団体におい
ては、その積極的な周知を図るなど適切に運用していくことが重要である。
また、国においては、既存マンションが対象となる管理計画認定制度に加え、マンションの適切
な管理を担保するためには分譲時点から適切な管理を確保することが重要であることから、新築分
譲マンションを対象とした管理計画を予備的に認定する仕組みについても、マンション管理適正化
推進センターと連携しながら、必要な施策を講じていく必要がある。
なお、地方公共団体は、指定認定事務支援法人に、認定に係る調査に関する事務を委託すること
も可能であり、必要に応じてこれを活用するとともに、指定認定事務支援法人は個人情報等も扱う
可能性があることや利益相反も想定されることに鑑み、委託する際は適切に監督を行う必要がある。
3都道府県と市町村との連携
法において、都道府県は町村の区域内に係るマンション管理適正化推進行政事務を行うこととさ
れているが、市区町村と連携を図り、必要に応じて市区の区域内を含めて施策を講じていくことが
重要である。
また、町村が地域のマンションの詳細な実情を把握していることも想定されることから、都道府
県と町村においては、連絡体制を確立し、密に連携をとる必要がある。
なお、法第百四条の二に基づき、町村がマンション管理適正化推進行政事務を行う場合には、都
道府県と適切に協議を行い、必要な引継ぎを確実に受けるほか、その旨を公示等で周知するなど同
事務の実施に遺漏のないようにする必要がある。
4修繕等が適切に行われていないマンションに対する措置
法第五条の二において、都道府県等は管理組合の管理者等に対してマンションの管理の適正化を
図るために必要な助言、指導及び勧告を行うことができることとされているが、助言等を繰り返し
行っても、なおマンションの管理の適正化が図られないことも考えられる。修繕等が適切に行われ
なかった結果、老朽化したマンションがそのまま放置すれば著しく保安上危険となり、又は著しく
衛生上有害な状態となる恐れがあると認められるに至ったなどの場合には、建築基準法(昭和二十
五年法律第二百一号)に基づき、特定行政庁である地方公共団体が改善の命令等の強制力を伴う措
置を講じることも考えられる。
5修繕工事及び設計コンサルタントの業務の適正化
マンションの修繕工事や長期修繕計画の見直しにあたっては、管理組合の専門的知識が不足し、
修繕工事業者や設計コンサルタント等との間に情報の非対称性が存在する場合が多いことから、国
は、管理組合に対する様々な工事発注の方法の周知や修繕工事の実態に関する情報発信、関係機関
とも連携した相談体制の強化等を通じて、マンションの修繕工事や設計コンサルタントの業務の適
正化が図られるよう、必要な取組を行う必要がある。
6ICT化の推進
国は、WEB会議システム等を活用した合意形成の効率化や、ドローンを活用した外壁の現況調
査等、モデル的な取組に対して支援することにより、ICTを活用したマンションの管理の適正化
を推進していく必要がある。
また、法第七十二条第六項及び第七十三条第三項では、管理組合の負担軽減及びマンション管理
業者の生産性向上の観点から、重要事項説明時や契約成立時の書面交付について、ITを活用した
電磁的記録による交付が可能である旨定められている。併せて、通常、対面で行われる重要事項の
説明等についても、ITを活用した説明が可能であり、これらについてマンション管理業者の団体
等を通じて広く周知していくことが重要である。
別紙一法第五条の二に基づく助言、指導及び勧告を行う際の判断の基準の目安
法第五条の二に基づき管理組合の管理者等に対して助言、指導及び勧告を行う際の判断の基準の目安
は、以下の事項が遵守されていない場合とする。
なお、個別の事案に応じて以下の事項以外の事項についても、基本方針三のマンション管理適正化指
針や基本方針六4の都道府県等マンション管理適正化指針に即し、必要な助言及び指導を行うことは
差し支えない。
1管理組合の運営
⑴管理組合の運営を円滑に行うため管理者等を定めること
⑵集会を年に一回以上開催すること
2管理規約
管理規約を作成し、必要に応じ、その改正を行うこと
3管理組合の経理
管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理を行い、適正に管理すること
4長期修繕計画の作成及び見直し等
適時適切な維持修繕を行うため、修繕積立金を積み立てておくこと
別紙二法第五条の四に基づく管理計画の認定の基準
法第五条の四に基づく管理計画の認定の基準は、以下の基準のいずれにも適合することとする。
1管理組合の運営
⑴管理者等が定められていること
⑵監事が選任されていること
⑶集会が年一回以上開催されていること
2管理規約
⑴管理規約が作成されていること
⑵マンションの適切な管理のため、管理規約において災害等の緊急時や管理上必要なときの専有部
の立ち入り、修繕等の履歴情報の管理等について定められていること
⑶マンションの管理状況に係る情報取得の円滑化のため、管理規約において、管理組合の財務・管
理に関する情報の書面の交付(または電磁的方法による提供)について定められていること
3管理組合の経理
⑴管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理が行われていること
⑵修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないこと
⑶直前の事業年度の終了の日時点における修繕積立金の三ヶ月以上の滞納額が全体の一割以内であ
ること
4長期修繕計画の作成及び見直し等
⑴長期修繕計画が「長期修繕計画標準様式」に準拠し作成され、長期修繕計画の内容及びこれに基
づき算定された修繕積立金額について集会にて決議されていること
⑵長期修繕計画の作成または見直しが七年以内に行われていること
⑶長期修繕計画の実効性を確保するため、計画期間が三十年以上で、かつ、残存期間内に大規模修
繕工事が二回以上含まれるように設定されていること
⑷長期修繕計画において将来の一時的な修繕積立金の徴収を予定していないこと
⑸長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく
低額でないこと
⑹長期修繕計画の計画期間の最終年度において、借入金の残高のない長期修繕計画となっているこ
と
5その他
⑴管理組合がマンションの区分所有者等への平常時における連絡に加え、災害等の緊急時に迅速な
対応を行うため、組合員名簿、居住者名簿を備えているとともに、一年に一回以上は内容の確認を
行っていること
⑵都道府県等マンション管理適正化指針に照らして適切なものであること
今までよりは 実務に 少しでも沿おうとする(実利的に行える施策を目指したというような?)感も
何度も 眺め返して あらためて実務に活かすことができるように捉えなければ と 考えております
さほどのことはないような変化 ? 改革と表されるようなものであるのかどうか ?
というような表現のほうが より妥当なのでは ?)
その制度改革が図られていたことに関連しての思いを述べさせていただいた ということで 他意はござい
(ただし 内容に 4月1日において既に施行のことも含まれていることは 別論 ですが)