『改正から それなりの時が経過しているのに ナントナク 本質を把握できていない
ような心持なので 学習にも 実務にも 不安感が拭えません・・・
知識の整理整頓が進まなくて・・・
特に 〈売買の効力〉あたり が 苦手です』
というような 受験生さんの相談があったので その苦手部分とその周辺の学びをしました。
「自身の場合は、そのような状況の場合は、マズ、ポイントとなる知識のみを鉾と盾にし
て 事例 にあたるようにしています。ハッキリと武器として持っている知識がないと、
必要以上にアーダコーダと半端な理論だけがつみかさなってしまうようなことになりか
ねないし、事例想定だと、条文知識の粘着力が増して、すこしばかりでも学びの効率が
改善できそうに思えるものですので。」
ということで
アットランダムに、ポイントになるであろう事項(多くの受験者さんにおいて、曖昧にしているだろう
と思われる部分)
を
並べてみました。
※条文に省力部もアリ
・ 改正後民法では、物の種類・品質に関する契約不適合に関してのみ権利行使期間(消滅時効期間
ではない)を定めている。
(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第五百六十六条
売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物
を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内
にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行
の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすること
ができない。
※ 売主を保護すべき場合としては、物の種類、品質に関する契約不適合のみを想定
すればよいのでは(権利内容に関しての契約不適合 / 物の不適合だが数量不足
の場合 は 一般的な消滅時効に服するだけでよい)、と、改正において判断
された。
・ 改正前は、一般的な債務不履行責任と売主の担保責任との関係のことが複雑すぎ、理解の
仕方も混在していたけれど、改正後は、より明快な規律を示している、といえる。
いわゆる物の瑕疵について、契約に不適合な場合における責任であるとし、契約責任説による
ことを示して、追完請求権・代金減額請求権の条文を設け、損害賠償と解除は契約法の一般規
定に基づくことを明らかにした(いわゆる権利の瑕疵については、物の瑕疵に関する条項を
準用するという手法で処理されている…準用されるので、同様な扱いだ、ということになる)。
一般規定
(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務
の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請
求することができる。
(催告による解除)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手
方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないとき
は、相手方は、契約の解除をすることができる。
(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、
直ちに契約の解除をすることができる。
(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
第五百六十五条
前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである
場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを
含む。)について準用する。
(買主の追完請求権)
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容
に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の
引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、
売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と
異なる方法による履行の追完をすることができる。
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を
定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、
その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並
びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
※ Mが売主Nが買主である場合の建物売買で、その建物が他人の物であったり
Mの建物であるが借地権付きとの契約であったのが借地権は消滅してしまっ
ていたりの場合に、NはMに対し、前者の場合で当該他人において手離す意
思がないなら564条準用での解除(541・542)と損害賠償(415)、
借地権無しになってしまっている場合なら追完請求(562)代金減額請求
(563)そして解除・損害賠償を状況により要件に従って行使し得る、とい
うこと。
・ 競売の条項もタイセツです
(競売における担保責任等)
第五百六十八条
民事執行法その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という。)
における買受人は、第五百四十一条及び第五百四十二条の規定並びに第五百六十三条(第五
百六十五条において準用する場合を含む。)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、
又は代金の減額を請求することができる。
※ 競売というものは、債務者の意思とは無関係に行われるので、契約
不適合としての債務者の履行の追完ということが無いので、追完に
ついての規律は競売において無い。
4 前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。
・ 《XY夫婦は、C所有であった土地とその土地上にあるDがCから注文を受けて建てた中古の木造建物
を購入し、住んでいる。》
これに関する以下の記述の正誤を答えなさい。
〔イ〕 引渡しから11年目に建物が傾き始めたのは、基礎工事に重大な瑕疵があったためと判明した。
この場合、契約内容不適合責任としての損害賠償請求権の消滅時効の起算点については、権利
行使可能時から10年、権利行使可能であることを知った時から5年である(166条)。
〔ロ〕 〔イ〕において、権利行使可能時である引渡し時から10年以上を経て契約不適合状態になった
場合や、566条の通知をしなかったために契約責任を追及できない場合は、事案によっては
不法行為責任に基づいた損害賠償請求の可能性もあり得る。その場合、改正前と同様、時効起算
点と時効期間は、損害及び加害者を知った時から3年間という規定がある。
〔ハ〕 仮に、説例の中古建物が地震により倒壊し、その際、建物内に居たYが死亡したとする。倒壊に至
った原因の調査において、建築施工者による基礎工事の瑕疵が原因と判明したとする。建築施工者
は、倒壊は地震のせいであるとして責任否定に終始するうちに、Y死亡から4年半が過ぎた、とす
る。その場合、Ⅹが相続人とすると、Ⅹは当該建築施工者に不法行為責任を追及できる。
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〔イ〕 正しい
第三節 消滅時効
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
〔ロ〕 正しい
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
※ 時の経過によって権利を消滅させる除斥期間ではなく〈時効〉と明
言し、判例は変更されている。
〔判例〕 設計者・施行者・管理者等の義務
契約関係にない居住者等に対する関係でも、当該建物に建物としての
基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負う。
(最判平成19・7・6)
不法行為責任の前提となる注意義務に関しての判例
〔ハ〕 正しい
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条
第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
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本日の最後に
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
という、消滅時効についての大事な条文が改正により登場しています
安全配慮義務違反に基づく人身損害の場合などに、問題となります。
第三節 消滅時効
(債権等の消滅時効)
第百六十六条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使
しないときは、時効によって消滅する。
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第百六十七条
人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の
規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
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はたけやまとくお法務・マンション管理事務所