マンションにお住みの方も 知っていて好い言葉です
[さきどりとっけん]という権利のこと
名のとおり 他者よりも先に取ることができる権利 のことです
[先取特権]の姿を ボヤーンとしか掴めないでいる
という受験者さんが ケッコウおられます
債権は 物権と異なっていて 排他性も優先的効力も無く 成立の時の順序
によって効力に差異が生じることもありません
〔債権者平等に原則〕によることとし なんらの手当てが無いとすると
例えば500万円の資産だけの債務者についての配当においての3000万円
と
未払い給料10万円の各債権者の手にする配当の結果は
説明の要がないものになること 明白です 後者への配当は ほぼゼロ?みたいな
とりあえずの生活の糧にはほど遠い ? そのようなものになってしまう
概してのことですが 債務を負っていた者について その債務の整理をしな
ければならない場合 差押え・競売・配当 という一連の流れがあり その
配当には サマザマな債権者が参加することになるのが一般的でしょう
国や地方の税債権者を筆頭に 雇用されていた者 日用品の供給をしていた
者 などなど サマザマな債権を持つ者が関係することになります
「債権者平等の原則」で 一律 債権額に比例しての配当で事を済ます とい
うと 圧倒的な債権額保持者に ホボ配当がいってしまって 一件終了となり
モロモロの債権者の事情などへの配慮など 吹き飛んでしまうでしょう
一定の債権者については 法律で(法定担保物権) 債務者の一定の財産から他
に優先して自己の債権の回収ができるとする権利が与えられています〔先取特権
民303条 ・ 特別法での先取特権もあり〕
雇用されている者の生活などを思うと 未払いの給料が優先的に保護されるとの
法意が理解できると思います(優先される根拠は公平の確保・弱者の保護・業を為
す者の保護 等)
区分所有法にも 先取特権が登場します
例えば債務者の専有部分に関わる電気料金の債権者よりも上位の しかもトップ
クラス(順位と効力は共益費用の先取特権とみなされる)の優遇をされて
(先取特権)
第七条
区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他
の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者
に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利
用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。
管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債
権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法(明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条の規定は、第一項の先取特権に
準用する。
担保される債権(どのような内容の債権であっても保護されるということではなく要件がある)
・共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対
して有する債権
※ 管理経費の立替の債権・共用部分等への他の区分所有者の不法行為に対する損害賠償債権等
(個々の特定の区分所有者の立替は その者のその債権の担保のための先取特権が生じる
管理者が他の区分所有者のために管理経費などを立替払いのときも 同様)
(区分所有者でない者 例えば専有部分賃借人の管理費立替え債権は担保されない)
・規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権
※ 管理費修繕積立金債権 等
(管理組合法人でない場合は 区分所有者全員に総有的に帰属する債権として担保される)
・管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権
※ 管理費用前払い・償還請求権(民649 650など)
管理者の報酬請求権は 先取特権で保護される【その職務又は業務を行うにつき区分所有
者に対して有する債権】とはいえないとされています
先取特権の客体(要するに差押えされるもの・競売にかけられるもの)は
債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)
及び
建物に備え付けた動産
不動産先取特権の実行の場合は 区分所有権・共用部分に関する権利・敷地利用権の三者の
一括競売となる(敷地利用権は 分離処分を認める別段の定めがあれば 競売の対象から
除かれることになる 22条1項ただし書)
動産先取特権の客体は債務者の所有物とするのが原則 だけれども 3項があるので 他人
の物についても権利を取得するという《即時取得》による例外もある
建物に備え付けた動産 ということについては タマタマ 部屋にあった宝石・有価証券など
を差し押さえられるのか ということが問題だが 備え付けた という表現があるので
畳・建具・機械器具などという理解をする学者さんもおられる(もっとも 共用部分に備え
付けられたものでもよい とされる)
順位は 既に記しましたが 税債権とか抵当権は別格として トップクラスであるところの
一般の先取特権(つまり 不動産・動産・債権・その他財産権等債務者の総財産について
差押え可能)の第一順位である共益費用の先取特権(306 ナント 雇用関係よりも強い
一号・307)とみなされる
<区分所有建物における債権債務関係ということで つまるところ あくまで私的財産のこと
であるのに・・・
率直に言って 現時点ではそうでもないが 往時においては それなりの資産を持つ者の集団 ?
のこと なので ナゼにそれほどまでの優遇が必要なのか 以前から疑問でしたが・・・
集中して調べることをしないままいて(スミマセン) あくまで私論(そもそも私論と呼ぶ価値が
あるものかどうか自体問題になりそうですが)・・・・
マンション制度(区分所有建物制度)という社会的な資産への保護(裏返せば 管理運営を間違うと
維持がタイヘンな仕組みであり 公的な干渉などは控えるべきだが いざとなると 管理不全の影響は
そうとうなものとなって周辺の安全確保さえ心配になるかもしれない ので できるだけの回収の
保護を付しておこう という
ある種の惧れへの対応なのかな ?
それと 配当時の優先をしないままでは
競売参加者という特定承継人候補者としても多大な管理費等を負う場合があることになるとすると
区分所有建物競売への関心に支障がでてしまうことになるのでは との 惧れ?あたりが 二号の被雇
用者保護をさしおいての位置と見做されることになったのか ?
アクマデ 私見 です イロイロ 調べたりしたこともあるにはあったのですが 本来は
立法趣旨とか 法律案作成担当者の書物などが手がかりとなるのでしょうが・・・ >
ここで 繰り返しにもなるようですが
区分所有法7条の〔先取特権〕は 民法の特別法である区分所有法の 先取特権 である
ということに 注意です
あくまで 優先権の順位及び効力については 共益費用の先取特権とみなされる ということ
ですので
債務者の全ての財産に対し差押えができるわけではなく 担保される債権も区分所有関係の
一定のものです
さて
順位と効力のことですが
順位のこと
(一般の先取特権)
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(共益費用の先取特権)
第三百七条
共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は
配当に関する費用について存在する。
第三百二十九条
一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序
に従う。
2 一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特
権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優
先する効力を有する。
(動産の先取特権)
第三百十一条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
一 不動産の賃貸借
二 旅館の宿泊
三 旅客又は荷物の運輸
四 動産の保存
五 動産の売買
六 種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
七 農業の労務
八 工業の労務
(不動産の先取特権)
第三百二十五条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
一 不動産の保存
二 不動産の工事
三 不動産の売買
効力のこと
(一般の先取特権)
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(一般の先取特権の効力)
第三百三十五条
一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるので
なければ、不動産から弁済を受けることができない。
※ まず建物に備え付けた債務者の動産について弁済を受け それだけでは債権の満足
を得られないならば債務者の不動産〔(債務者の区分所有権(共用部分に関する権
利及び敷地利用権を含む。)〕からも弁済を受ける
(一般の先取特権の対抗力)
第三百三十六条 一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない
債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。
民法 (先取特権と第三取得者)
第三百三十三条
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産につい
て行使することができない。
民法先取特権の条文改正は ホンノ一部
ですが
しばしば 問われています
細かいところの知識も 問われたりします
民法の先取特権と 区分所有法の先取特権とにおける相異というようなこと にも注意して
条文にあたっておくことは 当然必要となる と 考えられます が・・・
学習の方法までの干渉は モチロン 自身にはありませんが 考えを述べさせていただくこ
ともあります ご容赦を
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